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2015年5月27日 (水)

そもそもお金とは何か 遠州通貨「UNA」    - 取材ノート

Imgp7680 (2015.05.27)  日本にいると、アメリカにばかり目が向いてしまうせいか、アメリカの経済、金融の考え方がそのまま世界のどこでも通用する、あるいは唯一の考え方だと思いがちになる。

 そんななか、先日、

 イスラム経済人会議

というのが東京で開かれているというニュースが流れていた。イスラム経済人とわざわざ呼ばなくてもいいのではないか。そういぶかしく思ったのだが、いろいろ話を聞いてみて、びっくりした。

 ● イスラム圏では「利子は禁止」

 イスラム金融では

 利子は禁止

なのだそうだ。コーランなどイスラム法では、貸し手が働いていなくても、時間さえたてばお金がお金を生むという仕組みは教えに反する反社会的な「悪」とみなされるというのだ。ものやサービスの売り買いのない不労による所得はダメだというわけだが、その極端な例として、わかりやすい言い方をすれば、賭博はもちろん、投機、ピンハネもダメということになる。

 もっとわかりやすい言い方をすれば、イスラム圏の銀行にいくらお金を預金しても、利子はつかない。

 ただ、金融とは違って、ものやサービスを提供して対価を受け取るのは正当な経済行為。つまり実体経済は当然ながらOKなのだ。だから、銀行が利子や利息をとるのはダメだが、投資は大いに結構であり、そのリターン(見返り)として配当金を受け取ることは、イスラム圏でも正当な経済行為となる。

 これまたわかりやすい言い方をすれば、イスラム圏の銀行の投資ファンドを購入し、投資が成功した場合、配当金としてもうけが顧客に配分される。

 今の資本主義の核心はものやサービスの売り買いのない金融資本主義である。のだが、その金融のない、つまりものの売り買いだけの実体経済しかないはずのイスラム経済でも、カタールのドーハ、アラブ首長国連邦のドバイ、アブダビの超高層近代的都市にみられるように、繁栄が可能だというのには、ちょっと驚かされる。原油が豊富だからこそできる芸当と突き放してばかりはいられないのではないか。

 ● ワンデイカフェの後日談

 Imgp7684 そんななか、5月1日付さなるこ新聞(第10号)に掲載した

 しじみづかの家 ワンデイカフェ

が、予告どおり5月24日日曜日に開かれた( 写真左)。記事を書いた記者として、ブログ子も出かけてみて、これまたびっくりした。

 地域の居場所づくりをしている「しじみづかの家」では、遠州一円をエリアとする遠州地域通貨

 UNA(うな)の通帳

を発行していることを知った。ウナギから名づけた地域通貨「うな」の単位は、「円」ではなく、UNA( = その通帳は写真上)。ものやサービスの売り買いは、日本銀行発行の「円」で決済することはしない。相手にサインをもらって通帳に記入する。

 ものやサービスを提供すればUNAは貯まり、提供を受ければ減る。

 わかりやすく言えば、UNA通帳は、スーパーなどのポイントカードに相当する。ただ、普通のポイントカードでは1ポイント=1円だが、1UNAは、あえて1円とは決めていない。通貨とのリンクはない。したがって、通貨にはあるデフレもインフレもない。その代わり何UNAで交換するかは、少し面倒な手間があるが、売り手と買い手の合意にまかされている(合意したことを示すサインを通帳に記入)。

  この地域通貨は、

 利子ともインフレとも、またデフレとも無縁

なのだ。言い換えると、普通のお金は商品としての使用価値とともに交換価値を持つ。のに対し、交換価値しか持たない。売った、買ったはない。普通のお金は商品としても売り買いされるのに対し、地域通貨はツールであり、商品なんかではない。ここが通貨とは違う。

 また、利子とは無縁のイスラム経済圏のお金とも違う。イスラム経済圏といえども、インフレやデフレがあるからだ。イスラム経済圏の通貨は、利子はつかないが、売り買いによって値動きのある商品なのだ。

 さて、このサービスも含めた物々交換であるこの地域通貨方式を徹底すれば、通貨「円」は不要になる。

 だから、通帳の収支がマイナスになっても、それは通貨とのリンクがないので借金とはならない。したがって、借金が借金を生む、あるいは負債が負債を生む多重債務の問題ももちろんない。

 また、収支がプラスになっても利子をつけないシステムである。ここには金利という考え方はない。

 利子を否定したイスラム圏の実体経済に、一見、似ているように思うかもしれない。

 その代わり、問題なのは通貨とのリンクがない分、そのUNAの信用をどう確保するかという問題が発生する。ものやサービスを提供したのはいいが、その後、その見返りが一向に保障されないというのでは話にならない。これでは利子をつける、つけないどころの話ではなくなる。

 これをどうするか。

 ● ギブ・アンド・テイクの社会

 このことは、つまり通帳収支のプラスまたはマイナスは、何を意味するか、という問題をも生む。

 通帳の記入記録をつらつら眺めていて気づいたのだが、

 UNA通帳とは、通帳所有者と、通帳に合意のサインをした人との間の信用という「つながり」の記録

なのだ。収支がプラスなら、そのつながりをトータルとしてより積極的に通帳所有者が提供した証。マイナスなら、トータルとしてより積極的につながりを求められたことになる。つながりという関係性にデフレもインフレも無縁なのは当たり前だろう。また、だから、逆にプラスでも利子はつかない、マイナスでも借金ではない-のも当然ということになる。

 お金とはもともと、ものやサービスというほしい生活物資をほしい時に入手できる保障のツールとして発明されたのだろう。

 この考え方はイスラム圏であろうが、キリスト教圏であろうが、仏教圏であろうが、かつてはみな同じように社会に受け入れられていたように思う。借金とか利子とか、デフレとかインフレとは無縁のものだった。

 言い換えれば、そもそもお金とはほしいものが、いつでもその表示数字の価値分だけ確実に手に入りますという信用状にすぎない。

 逆に言えば、戦争に負けるなどその国の信用が崩壊すれば、その国の発行通貨が大暴落する、つまり紙くずになるのも、この理由による。こうなると、ものやサービスを直接提供できる能力を持っている人の役割がその社会では断然重要になる。 

 お金のこの役割がわかると、自給自足の農村で現金収入がなくても立ち行くように、都会においても、

 お金を持たずに豊かに生きる方法

も可能なはずだという気がしてくる。都会のあちこちに信用のある安定した物々交換所/サービス交換所をつくれば、国が発行するお金を媒介せずにすむ。そうなればお金こそがすべてという考え方も自然となくなる。

 簡単に言えば、地域の人と人の結びつき、つながりから生まれる信用に基づいた

 ギブ・アンド・テイク社会づくり

である。UNA通帳は、大雑把に言えばそのミニ版ではないか。

 さらに言えば、

 通帳の記録とその履歴は、ものやサービスが確実に得られるという通貨的な信用を具体的に裏付けるもの

ということになる。円やドルなどの通貨にはこれは必要ない。のに対し、通貨と連動しない地域通貨には、この履歴が、最近世界的に通用するようになった仮想通貨「ビットコイン」の場合と同様、重要になる。

 地域通貨通帳は、

 やらずぶったくりの強欲経済に代わる高信頼性の経済

の実践の場だともいえまいか。

 ● 取材を終えて エンデの遺言 

 Dsc_6670_2 「しじみづかの家」の代表、増田力也さんからは、訪ねたこの日、ドイツの高名なファンタジー作家、ミヒャエル・エンデの考え方について解説した

 『エンデの遺言』(NHK出版、2000年)

を紹介された。

 「根源からお金を問うこと」

とサブタイトルのついたこの本を、一度じっくり読んでみたいという気持ちになった。

 本には、UNA通貨と同様な通帳(口座)の仕組みが紹介されており、ヨーロッパに広がりつつあるという。

 この本に出てくるエンデという人は、イスラム圏の人ではない。ドイツ人というキリスト教圏の人であるというところに注目したい。

 次回の「ワンデイカフェ」は6月14日日曜日。

 ( い )

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コメント

旧約聖書にも金利は禁止であることが書かれており,ユダヤ教でもユダヤ教徒同士での利子のやり取りは禁止されていました.このことは古来より高利貸しによって社会が崩壊する様が見られた証左であります.

ただし,金利という誘因によって経済発展が遂げられてきたのもまた事実.ですが,格差社会やモラルの崩壊の根源も金利にあるとエンデは主張しています.交換手段としてのお金がそれ以上の力を持ちすぎ,お金そのものが需要の対象となってしまったことがその原因のひとつかもしれません.

地域通貨だけで生活を賄うこと自体はまだ難しいところもありますが,来るべき時代に備えて法定通貨だけではない代替手段を持ちあわせていくことは今後の社会における多様性を確保するためにも必要なことだと思っています.

海外での取り組みは「LETS」や「交換リング」で検索すると過去の事例がいろいろと見つかるかと思います.横からあれこれと失礼いたしました.

投稿: SK | 2015年7月14日 (火) 15時00分

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