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人はなぜ地図をつくるのか 映画「点の記」

Imgp9716_3 (2016.05.09)  大型連休明けの雨の午後、BSプレミアムで

 映画「剣岳 点の記」(木村大作監督、2009年)

を見た。簡単に言えば、明治国家が近代国家としてその威信をかけて取り組んだ国内地図づくり物語である。具体的には陸軍が主導する陸地測量部が周辺の地形が空白となっている剣岳の山頂に正確に3等三角点を設置しようとするまでの苦労とその意外な顛末を描いている。

 公開時には劇場で拝見した。本物の美しい山岳映像と、俳優の香川照之が実在した山の案内人、宇治長次郎役を好演しているのは、ともに同じ印象だった。が、この映画が何をテーマにしているのかという主題について、劇場では思い至らなかった点を、今回発見した。

 なぜ人は地図をつくるのか

というのがテーマだったと気づいた。さきほど、近代国家としての威信をかけてと書いたが、

監督が言いたかったのは、「あなたはなぜ山に登るのか」とある高名な登山家に新聞記者が尋ねたようなもっと哲学的なことだったと気づいた。

 それは、この映画のラスト10分くらいのところで描かれていた。

 人はなぜ、そんなに苦労してまで地図をつくるのか。その答えを要約すれば、こうだ。

 自分の位置を客観的に知って、

 人間とは一体何者なのか

ということを思い知るために、人は地図をつくる。それは国家の威信のためでも、戦争に必要だからでもない。

 この原作にはないシーンを拝見して、最初は冗長だと思ったが、監督のこの映画づくりの動機ではなかったかと、ブログ子は思う。

 ● 人間とは一体何者なのか

 地理上の「地球の発見」とも言われる16世紀のヨーロッパ人の大航海時代はもとより、近代天文学者たちによる20世紀の太陽系地図づくり、さらには21世紀の宇宙望遠鏡による宇宙地図づくりはまさに、

 人間とは、人類とはいったい何者なのだ

Imgp9717kiso という問いかけに対する答え探しだった。そして、それは私たちが思っているほど私たち自身は偉大でも、優れてもいない、ほんのちっぽけな存在に過ぎないということを思い知らされた営みと驚きの連続だった。

 その意味で、この映画は美しい映像があふれる 山岳映画ではない。それではあの美しい山岳映像はなんなのか。それは、いかに人間の存在が小さなものなのか、それを見る人に言葉ではなく、視覚で伝えるためではなかったか。このことを、今回発見した。

 いい映画は2度鑑賞する。いや、3度観れば、原作では味わえない発見がある。映画「点の記」はそんなことを思わせた映画だった。

 (以下の写真は、ブログ子の仕事部屋の様子)

 私たちの住んでいる銀河系の地図やその銀河系の周りの様子を観測データから再現した宇宙図がふすまに貼り付けてある。ビッグバンから現在までの宇宙進化の時間地図まである。

 Imgp9714

 

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