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不沈戦艦大和の泣きどころ 設計者の証言

(2016.01.04)  またまたひまなので、ついついBS放送を見てしまった。途中からだが、THE歴史列伝の

 戦艦大和2時間スペシャル(BS-TBS)

である。まあ、勇ましい、この種のもので見たからといって得ることはまず何もない。ごくごくレベルの低い特集であろうと思ったが、反面教師という面で

 Image2255 何か得ることはあるはず

という気持ちで見ていた。

 六平直政さんが毎回最後に出てきて、まとめ話の最後に

 そして傑作が生まれた 「グッドJOB !」

と決め台詞を言うのだが、今回ばかりは

 そして悲劇が生まれた 「バッドJOB !」

というところだろう。戦艦大和がいかに素晴らしい技術でつくられたかということを、大和ミュージアム(広島県呉市)の館長を交えて、とくとくとおしゃべりする。しかし、当の戦艦大和の設計主任で、現場で建造の指揮もとった造船技師(大佐)だった牧野茂さんによると、真珠湾攻撃直後に就役した

 大和は不沈戦艦どころか、多くの欠陥を抱えた艦船

だったことがわかる(『牧野茂艦船ノート』(出版協同社、1987)の「不沈戦艦大和を考える」「大和で泣かされた機密」「大和の泣きどころ」章参照)。

 今から20年前になくなった牧野さんだが、この本の「あとがき」で

 「戦後私が最も関心を持ったのは、先輩や私どもが、自信を持って計画し、建造したはずの多数の軍艦が、実戦に臨んで予想外の脆さで失われていった事実に対して、その原因を究明することであった。率直にいえば、わが軍艦のどこが拙かったかという点について、調査することである。」

と書いている。しかも、「この調査は止めることなく続けたいと思っている。」とも強調している。失敗について、技術者として責任をほかに転嫁することなく、真摯に学ぼうという姿勢は共感できる。「脚色も自己弁護もせず、時には自省もこめ、客観的・直線的に話す人」との人物評価があるが、うなずける。

 ● 機密指定は慎重を期すべし

 その牧野さんが、「大和で泣かされた機密」の章で次のように述べているのは、現代でも十分通用する教訓と受け止めたい。機密保持に苦労した当時の毎日を振り返り、戦後に

 「機密の扱いによって得る利益より、それによって失う損益のほうがはるかに大きい」

と喝破している。具体的にはたとえば「高度の機密艦ゆえに各部局で設計時に十分に検討されなかったため、引渡し間近に設計変更を必要としたなどは、これも機密による大きな損害である」と指摘している。「さらに機密が人心の不安をもたらすことまで考えると、損害は計り知れないものがある。」とまで言い切っている。

 機密指定は慎重を期すべし

との指摘は、苦い体験をしたものらしい現代にも通用する名言であろう。

 こう考えると、この特集、まったくくだらないとも言えない気がしてきた。くだらなさを穴埋めするために、視聴者自らが考えるように仕向けるからだ。案外、この番組の本当の狙いはこのへんにあるのかもしれない。

 だとしたら、この番組は大変に優れたき企画であるといえそうだ。

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