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大阪市のふり見てわが浜松ふり直せ 

(2015.05.28)  3年前にできた大都市地域特別区設置法に基づいて、大阪市をなくし、東京都のように特別区を設置する住民投票が僅差で否決されてから10日がたった。

 Image2181 大阪市南部の区に暮らす高齢者の「既得権がなくなる」という危機感が、若者やビジネスマンの多い北部区の人々に勝った結果だろう。都市やそこでの産業の発展には効率的な広域行政が不可欠なのは誰でもわかる。が、特別区になるとかえって住民福祉やサービスが低下する。これはこまるという高齢者などの社会的弱者の本音、はっきり言えばエゴが

 大阪都構想

をつぶしたという見方もできるだろう。大阪市の将来にはおおむね関係がないのに、高齢者が大阪市の将来の発展について拒否反応を示し、重大な判断を下した格好になった。明日の100万円よりも、今日の10万円のほうが大事だと思ったのだろう。いかにも、大阪人らしい。

 これが大阪で3年仕事をしてきたブログ子の正直な感想だ。

 ● 政令市にも勝ち組と負け組

 こうした背景を受けて、次に有力な政令市、横浜市などは特別区設置に向けては慎重になるだろう。

 むしろ、政令市の枠組みを残したまま広域行政を強力に行うため、府県並みに財源なども含めて権限強化を図る

 特別自治市

に向かうような気がする。なぜなら、法律はまだできていないが、政令市長会が5年前から盛んに提案しているからだ。

 それに、市を廃止するという選択には、大阪市民に限らず、多くの市民にとってはやはり抵抗感がある。それよりむしろ残し、権限の強化を図ったほうが受け入れやすい。その場合、摩擦が生じるのは、広域化に伴う隣接市町の間であり、その利害関係をどう調整するのかがむずかしい課題だろう。

 総務省あたりから声高に、そしてせき立てるような「地方消滅」の声が聞こえてくる。そんな中、こういう自治体側の動きをみていると、政令市が20あるといっても、大阪、横浜といった比較的に人口の多い上位グループと、過疎法適用の過疎地を抱える浜松市、静岡市など下位グループに政令市は2極化するような気がする。

 露骨な言い方をすれば、政令市でも勝ち組と負け組に分かれる。そんなシナリオが現実味をおびだしている。

 ● 浜松の30年後、人口15万人減

 人のふり見てわがふり直せというわけでもないが、わが浜松市も、大阪市同様、莫大な借金(市債残高約5000億円、年間利払い80億円強)をかかえ、10年越しの区再編問題に取り組んでいる。7区を合区、5つか、できれば3つにして行政コストを減らそうとしている。

 政令市になる前の旧浜松市域を合区し、一つの区にまとめることを視野に入れているものの、市としての明確な判断は先延ばしにされている。

 浜松市の人口は10年前の政令市発足時には約79万人。一時80万人を超えたが、その後減り始め、いまや80万人弱。最近では毎年5000人の人口減。このままでは30年後には政令市にふさわしい70万人以上というのを下回り、66万人にまで減ると見込まれている。

 人口減の中身は少子化と高齢化のバランスで決まる自然減のほか、社会減という市外への人口流出(転入から転出を差し引いた差)のほうが深刻。消費は減少し、税収も落ちこむ。これでは市の発展は覚束ないだろうということは容易に想像できる。

 4次、10年にわたる市行革審議会の論議を受け、今、その後継の浜松市行政経営諮問会議が具体的な答申を、この2月にまとめ、市長に提出している( 写真 = 答申内容について緊急座談会を掲載した「浜松情報」2015年3月号外)。地元経済人だけの座談会ということもあり、以上の問題点のほか、公共施設やインフラの老朽化問題にも切り込んでいる。

 緊急座談会には浜松商工会議所のメンバーがほとんど。が、有権者である市民の議論が活発にならない限り、行政や議会は動かず、本腰の改革にはつながらないだろう。

 ここにも、今回の大阪同様の構図があることを忘れてはなるまい。

 議論だけの段階はとっくに過ぎ去った。答申内容を実行しながら、市民に負担を求めるだけでいいのかなど、論議のすそ野をもっと広げたい。

 7年にもわたる都構想論議のあった大阪。同様に、浜松市も政令市として勝ち組に残るための決断のときが迫っている。

  ● 注記 静岡県知事は

 気になるのは、今回の投票結果を受けた静岡県知事、川勝平太さんの意見。静岡県でも、二重行政は是正していく必要があるとした上で、

 「浜松市は特別自治市を目指して県から自立すればいい。(もう一つの政令市で、今にも人口70万人を切りそうな)静岡市は広域行政を担える状況ではなく、県と一体化することで行政の一元化を目指していくべきだ」

との見解を示した(2015年5月19日付中日新聞朝刊)。静岡市の今後についてさらに突っ込んで

 「特別自治市を声高に求めるよりも、政令市として実力をつけていくことが先決。(実力をつける)その中で県との連携(一体化も含めて)を模索することが必要

とも冷静に分析している。連携の具体策として「知事が静岡市長を兼務する」という大胆なものだ。これには地方自治法などの法律改正が必要だが、静岡市が政令市のなかの負け組にならない方策を、知事自ら具体的に示したと受け止めたい。

 浜松市の場合も、二重行政の是正や行政のスリム化を図ることは、政令市として負け組にならないためには、当然だろう。加えて特別自治市を目指すとするならば、区再編問題の3区案導入などの思い切った、それも早期の断行は不可欠だろう。今のような7区もかかえていては、特別自治市にかせられる広域行政の中核を担うことは困難だ。

 2018年度中に再編するかどうか決めるという工程スケジュールは、論議スタートから13年もかけており、いかにも悠長にすぎないか。負け組に甘んじるという行政の消極的な姿勢が垣間見える。

 ● 付記 心配な日本海側

 このブログを書いていて気づいたのは、日本海側にある政令市は新潟市だけである点だった。

 つまり、政令市にも勝ち組と負け組が今後出てくるような情勢では、日本海側の自治体の〝消滅〟に対する危機感は強まるばかりだろう。

 総務省あたりが言っている

 地方創生

というのは、撤退戦であり、それも日本海側からの撤退という意味に聞こえてしょうがない。ブログ子のふるさとは福井県であり、定年までの20年間暮らした金沢市の奮闘を願わざるを得ない。国頼みの北陸新幹線も大事ではある。が、撤退戦に巻き込まれないためには国の施策を待っていては、追い立てられるだけだろう。

 新幹線の開通にわく金沢を遠くの浜松から覚めた目で見ていると、そんな気がしてくる。

 浜松についても、金沢についても地方創生政策の成否は東京五輪後の5、6年後にははっきりわかるだろう。

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