« 福島も「石棺」 ? チェルノブイリから29年 | トップページ | Eテレ小科学実験にびっくり、わからん ! »

「過剰な演出」とやらせのはざまで

Image2126 (2015.05.01)  NHK番組「クローズアップ現代」(2014年5月14日放送)のやらせ問題について、同局副会長を委員長とするNHK調査委員会は記者会見し、

 「事実の捏造につながるやらせはなかった」

との調査結果を公表した( 写真上 =2015年4月29日付毎日新聞朝刊。写真下= 記者会見の様子。同番組テレビ画面より)。

 ● 「クローズアップ現代」調査報告

  NHKは、事実の捏造につながるやらせの禁止など取材・制作について一定のガイドラインを設けている。

 出家詐欺の実態は存在するとして番組の虚報性、いわゆるでっち上げは否定した。ただし、多重債務者をターゲットにした「出家詐欺」の放送には

 事後の編集段階で「過剰な演出」や、その結果として「視聴者に誤解を与える編集」

があったことは認めた。その上で、現場任せで、組織としてチェック機能が働かなかったことをそれらの原因として挙げた。事実の確認と共有が組織内部で不十分だったというわけだ。

 ● 限りなく「やらせ」に近いのでは

 以上だが、ブログ子は放送予定を変更して当の同番組で放送された調査報告を視聴した(4月28日放送)。が、すっきりはしなかった。内部調査の限界であり、事実上のやらせではないかとの印象を強く持った。

 過剰な演出が生みだした誤報かとも思ったが、NHKによると訂正放送はないということだから、誤報でもないらしい。事実誤認のない範囲での過剰な演出ということなのだろうか。そのかぎりで誠に遺憾であるとして「おわび」や、キャスターの陳謝はあった。公共放送として世間の期待に反し、お騒がせしたということだろう。

 Imgp7509 当事者の一方が、BPO(放送倫理・番組向上機構)に、放送されたことによる人権侵害があったとして訂正放送や是正勧告を申し立てている。ので、第三者機関での判定を待ちたい。当事者がNHKに対し、やらせであると訴えているということは、まんまと陥れられたという意味にもとれ、この点は見逃すべきではない。

 ただ、一般には、やらせとは、取材側で事前に示し合わせている、かつ取材先と馴れ合いがある-ことの2つが成立条件。

 調査報告はいずれも認めなかったが、取材記者が現場に同席していたこと、しかも記者は会話をしている2人と以前から面識があったこと、しかも取材中の会話の途中に誘導と思える介入を行なっていたこと-などを考えると、限りなくやらせに近い。問題は事後の編集段階だけにとどまらない。取材中と事後の編集とが巧妙に連動している可能性がある。

 というか、当事者同士を取材中にたくみに踊らせたのではないかという意味で、かなり悪質なヤラセの可能性もある。もっとはっきりいえば、忙しさと慣れで、ついついという出来心ではない確信犯の可能性がある。

 この背景には、今回のような匿名報道のこわさがある。少し古いが、かつて米ワシントン・ポスト紙上で起きた匿名報道による大虚報「ジミーの世界」事件(1980年)を思い出すべきだろう。せっかくのピュリッアー賞も返上する事態にまで発展した( 補遺2 )。今回の事態も実名報道なら起りえなかったと考えられる。

 まとめると、当事者を巧妙にあやつり、それと気づかれずに取材中に演技をさせたことになったという疑いがぬぐえないのだから、この点をBPOでの聞き取り調査で明らかにするべきだろう。

 ● BPOの調査と勧告を注視

 こうしたことをいうのも、ブログ子自身も、状況が状況ならやりかねないという恐ろしさがそこにあるからだ。

 だれも知らない特ダネをとりたい、アッと世間を驚かすニュースを誰よりも早くスクープしたい、決定的な瞬間をおさえたい- いずれも優秀なジャーナリストとしては当然のことであり、いやしむことではない。

 ただ、それが正確な、あるいは正確と信じるに足る根拠に基づいてなされているのかという点だけが、メディア関係者に問われているのだ。いわんやその結果に人権侵害がからむようでは論外なのだ。

 自戒するとともに、BPOの調査結果と勧告内容を注視したい。

 同時に、BPOも新しい理事長、浜田純一(元東大学長、社会情報学、65歳)氏を迎えたのだから、影の薄い隠居仕事ではなく、積極的にその役割を果たすなど意味のある活動、あるいは存在感のある活動をしてもらいたい。

 ● 総務相「隅から隅まで読んだ」

 免許更新など放送行政を所管する高市早苗総務大臣がこの報告書について、

 ここぞとばかり、

 「隅から隅まで読んだ」

と、恫喝ともいえる意味深長な発言をしている。再発防止策についてさらに具体的な踏み込みが必要だとも注文をつけたらしい。こちらも注視したい。

 ● 調査報告書の全文

 http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/cyousaiinkai/pdf/150428_houkokusyo.pdf

  ● 補遺 謝罪と陳謝 その言葉の意味の違い

 こうした問題で、ときどき問題になるややこしい話として、言葉の問題がある。

 陳謝というのは、罪やあやまちはないが、事情を説明してあやまること。

 心残りであるという意味の「遺憾」という表現とほぼ同じ。ここには、罪の意識はない。したがって、あやまれば、それで問題は解決したことになる。

 これに対し、

 謝罪というのは、罪やあやまちを認め、あやまること。 「おわび」と同義語。こちらには罪の意識がある。したがって、謝罪広告あるいは記事訂正、訂正放送が謝罪する側には同時に求められる。

  ● 補遺2 最近の日本でも大虚報報道

  最近の日本での大虚報、それも実名報道のものの嚆矢は

 読売新聞1面トップ「iPS心筋移植」虚報事件

だろう。2012年10月13日付1面で虚偽報道と認め、読売新聞社は中面で虚偽となった原因について

 徹底的に検証を続けます

との東京本社編集局長のおわび記事を掲載している(同社はそもそもの虚報ではなく、一部事実誤認の虚偽だったとして「誤報」と判断している)。また、同日付中面で検証結果について大きく報道している。深刻なのは、この虚報をあわてふためいて後追いして、ありもしないことをあったとして、ご丁寧にというべきか、後追い虚報を出すという前代未聞の報道を共同通信社がやらかしたことである。

|

« 福島も「石棺」 ? チェルノブイリから29年 | トップページ | Eテレ小科学実験にびっくり、わからん ! »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533942/61517584

この記事へのトラックバック一覧です: 「過剰な演出」とやらせのはざまで:

« 福島も「石棺」 ? チェルノブイリから29年 | トップページ | Eテレ小科学実験にびっくり、わからん ! »