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ズルした者が得をする仕組み、がまんは損  - マグロ規制の場合

(2015.04.17) 世界的に見ても消費はますます増えているのだが、今年から、水産庁は減り続ける一方の日本のマグロ漁獲について乱獲しないように

 本格的なマグロ規制

に乗り出す。秋には福岡県で国際的な規制にかかわる資源管理の国際会議が開かれるからだが、

 紳士協定の総量規制では、いわゆる実効性のないザル法に終わる

だろう。中途半端な規制は漁業関係者をより苦しめる。規制でマグロの価格が上がることから、規制を無視しズルをすればするほど儲かる仕組み、規制を誠実に守ればまもるほど打撃が大きく損をする仕組み。これでは、資源管理の基本である経済合理性を無視したものであり、問題解決にはつながらない。

 ではどうするか。

 各国ごとの総量規制枠設定とともに、大西洋で行なわれているようなより厳しい

 船ごとに漁獲量を規制する厳格な規制

が、まず求められる。日本への輸出が大半を占める大西洋ではこれにより、この数年、ようやく減少に歯止めがかかり、資源回復の兆候が確実になった。

 一例だが、2008年の規制強化で、クロマグロ漁獲量8割削減かつ幼魚漁獲禁止という措置が実施された。その後のあるクロマグロ調査では、規制強化5、6年で規制前の3倍に資源量が急増したらしい(NHK「クローズアップ現代」2015年4月15日放送)。

 この船ごとの規制という仕組みにより、目先の利益に走ってズルするものは結局は長い目で見れば損、船枠を将来に持ち越し成魚になるまで出漁をじっとがまんした事業者は、その分、得をするという経済合理性のある納得できる規制となることがわかる。

 ● 最盛期の90年代の3分の1に激減

 日本の市場に出回っているのはたいていは大西洋などからの輸入マグロだが、それでも、日本は太平洋海域において未成魚を中心に年間約3万トンを漁獲している。これは1990年代のピーク時の約3分の一。しかも、年々減少の一途をたどってきているのだ。

 漁獲量だけでなしに、さらに問題なのは、産卵できる成魚が獲れなくなったことから、最近では成熟前のいわゆる未成魚(幼魚)を乱獲していることだ。根こそぎ取りつくす。これでは資源が枯渇しないほうがおかしい。

 だから、水産庁でも、今年から始まった本格的な3年未満の未成魚(養殖用)規制で、

 10数年前の平均漁獲量の半分(年約5000トン)

という総量規制をまとめている。せいぜい、沿岸での規制について、船ごとではなく、地域枠の上限規制を設定しているにすぎない。たとえば、ブログ子の暮らす東海沿岸では、過去の実績からはじき出して、年間の未成魚は約250トン。5000匹程度である。

 ● 遅きに逸した分、船ごとの規制が必要

 規制という日本の資源保護対策は、ヨーロッパに比べて、10年、すくなくとも5、6年は遅れている。漁業関係者の間でも遅きに逸したという声が聞かれる。この遅れを取り戻すには

 総量規制から船ごとの割り当て規制がポイントだろう。

 社団法人シーフードスマート代表で、築地業者であり釣りにも詳しい生田與克さんは、暖流と寒流のぶつかる栄養塩の豊富な日本近海の豊かさを論じている。同時に先日4月9日の「視点・論点 日本の海ってすごい」で、激減した太平洋クロマグロの現状を憂いて

 「海の豊かさにあぐらをかくな」

とも訴えていた。船ごとの規制については、論じていなかったが、豊かな海を育てるための各国ごとに認められている排他的経済水域(EEZ)の管理責任を自覚すべきであるとしていたのは、正論だろう。

 排他的であるだけに、200海里内の資源管理には乱獲をさせない実効ある仕組みづくりの責任がある。

 これはマグロだけに限らない。 

 ● 追記 2015年5月15日記録

 上記の「船ごとの規制が必要」と書いたら、先日、そもそもそれと合わせて、日本の排他的経済水域内におけるクロマグロの産卵海域での操業自体を政府は禁止すべきであると指摘する漁業関係者(らしい)人からコメントをいただいた。正論だと思う。

 同氏の指摘によると、日本の場合、具体的には沖縄などの南西諸島や日本海の山陰地方や北陸地方の沖合いらしい。

 何のための排他的な管理水域なのか、きちんと日本は資源管理の責任を自覚し、早く実行に移すべきであるというわけだ。このままではクロマグロは絶滅危惧種になるとの指摘だった。もっともであり、真摯に受け止めるべきだろう。

 ブログ子はまだまだ現状認識が甘いと実感した。

 ● 補遺

 ブログ子自身、偶然だが、マグロをめぐる問題について、朝日新聞別刷「グローブ」(2015年5月3日号)が

 マグロは滅びるのか

というテーマでショッキングな特集をしているのをみつけた。熟読をすすめたい。

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