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日本人のバイカル湖起源説は今  

(2015.03.18)  月刊雑誌「文藝春秋」の最新号(4月号)が、

 DNAで日本文化の起源がわかった

という記事を掲載している。文系研究者が、最新のDNA分析技術を駆使している篠田謙一国立科学博物館人類研究部長にインタビューしている。

 ● 北陸新幹線工事で大量の縄文前期人骨

 北陸新幹線建設工事中に、富山市の小竹貝塚が発見されたのだが、そこからこれまで発掘された縄文時代前期(約6000年前)の人骨全部よりも多い91体もの同時期の人骨が見つかった。そのDNA分析を担当したのが、国立博物館だった。

 その成果の一部が、月刊誌で紹介されているというわけだ。

 ● 列島でブレンド、誕生したのが縄文人

 記事によると、小竹貝塚の分析からは

 「弥生人がやってくる前に住んでいた(日本列島の)日本人は(遺伝子レベルで)「均一な縄文人」とするには無理がある」

ということがわかった。縄文人は遺伝子レベルでは均一ではない。しかも、

 「縄文人は世界中のどの時代の、どこの誰とも似ていない」

 各地の特徴を少しずつ持っているという。このことが意味するのは

 「縄文人はおそらく日本列島の中で誕生したということです。つまり、日本列島には縄文時代に至るまで非常に長い旧石器時代(4万年前-1万5000年前)の歴史があるわけですけれど、その間、大まかに言えば、北と南から様々な人々の渡来があった。そこで集団間でブレンドが進み、できたのが縄文人」

ということ。北と南からということは、千島ルート、樺太ルート、朝鮮半島ルート、沖縄ルートの4ルート全部という意味。

 ● 日本人の祖先は弥生時代に列島へ

 さらに縄文前期の人骨が大量に出た小竹貝塚の分析から

 「現時点で言えるのは、2万年か3万年前に大陸で生まれ、その後、いろいろなタイプを生みながら、縄文時代に日本へ入ってくるものもいたが、(現代の日本人につながる)メインは(食料が豊富で繁殖力の大きい)弥生時代に稲作農耕と一緒に入ってきた(たぶん南方ルートの)グループ」

ということがわかったという。

 ● 松本秀雄教授との出会い

 ブログ子は大坂で3年ほど夕刊紙の記者修業をしていたが、大阪医科大学法医学教室にたびたび出入りしていた。そんな関係で長期連載したり、それを本にまとめたりした(写真=『松本秀雄教授の先生、事件ですよ!!』恒友出版、1985年)。

 そのなかには、写真にもあるように、

 Image2095 検証 日本人のルーツ

     日本人の起源はシベリアだ

というのもある(写真はダブルクリックで拡大)。日本人のバイカル湖起源説であり、学説としては相当に早い時期のものである。松本教授のバイカル起源説は

 『日本人は何処から来たか』(松本秀雄、NHKブックス、1992)

でも、詳しく解説されている。その方法論を一言でいうと、

 民族を区別する遺伝子レベルのマーカーとして血液(血清)型の判定に用いるGm遺伝子を採用するというもの。

 現代人のその血清中の遺伝子構成がアジアの130地域にわたってどのように分布しているかを図示した。

 その結果、松本教授は、バイカル湖周辺、たとえばウラン・ウデのブリヤート人などが日本人(つまり縄文人)の起源ではないかという結論に達した。

 ● 考古学からもバイカル湖説支持

 松本教授はその後も、南方起源説(尾本恵市、斎藤成也氏など)を自ら再検証した。その結果、2009年のレビュー論文で「日本人集団は基本的に北方モンゴロイドに属する」と強調している。

 また、この血液型研究の結果について、考古学者、加藤晋平氏は、東日本細石刃文化研究(1万2000年前から2万3000年前)とも

 「恐ろしいほどの一致といわざるを得ない」

と述べ、考古学からもバイカル湖起源説を支持している(『日本人はどこから来たか』岩波新書、1988)。

 この線に沿った大型番組

 大シベリア 日本人のルーツを探す旅(BS-TBS、2015年3月8日放送)

も最近、放送された。

 この番組をみても、ウラン・ウデのブリヤート人は確かに、日本人そっくり。朝鮮人や中国人よりもはるかに人種的に近いように見える。たんなる空似ではない。これにはなにか原因があるはずだ。

 このように縄文時代の日本人はどこから来たか。南方からか北方からかという点では、いまだに明確には決着がついていない。

 決着には、松本学説の仮定、つまり 

 民族を区別するマーカーとしてそもそもGm遺伝子だけでいいか

という問題があるように思う。南方説派がいうように、

 血液型遺伝子だけでなく、多くの遺伝子座を指標にする必要はないか。また人類学、考古学の知見

を総合する必要もあるだろう。

 松本教授が亡くなって3年、論争は今もって決着がついていない。

 松本教授と出会ってから30年、このことを、春分の日=春のお彼岸を前に、墓前ならぬこのブログで報告しておきたい。

  ● 補遺 日本人のルーツ

 日本人の起源については、新書などの一般解説書に限っても10冊以上もある。

 たとえば、日本人のルーツでは

 http://shinshomap.info/theme/roots_of_japanese.html 

などが参考になる。

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