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それでも地球は動かない 常識の魔力

(2015.01.05)  このブログは、常識を一度は疑ってみようというテーマでつづられているのだが、しかし、その反対に、というべきか、

 常識の魔力

というもののすごさも認めないわけにはいかない。それは、単に常識に従っていれば、人間、楽だ、安心だという以上に、合理的な理由がある。それは宗教的な理由というよりも科学的な理由といってもいいかもしれない。

 Image204420147_2 そんな事例が、お正月の暇つぶしに図書館から借り出して読んだ「日経サイエンス」(2014年7月号)の

 地動説への反論

   科学者が革新的アイデアに慎重な理由

という記事だ( 写真右 )。

 コペルニクスが死の直前に一大決心で革新的アイデアとして天動説に代わって地動説を書き残した。『天球の回転について』(1543年)である。それから150年近くたっても、つまり「それでも地球は動く」といったらしいガリレオの時代が過ぎ去っても、この地動説に否定的見解が、合理的な根拠の下に有力だったというもの。

 その内容を短く、一言で言えば、ニュートンの時代になっても、少なからぬ一流科学者が

 それでも地球は動かない

と確信していたというもの。

 なぜであろうか。

 ● 地動説の確立に300年

 それは、常識化した学説、ましてやそれまで1000年も信じられた定説にとって代わる革新的アイデアとして受け入れられるには、これまでの定説では説明できない確実な証拠やデータが具体的に提示されなければならないからだ。しかも、その証拠は、とって代わる革新的理論なら無理なく、自然に現象を説明できる。これが新学説が受け入れられる最低限の、つまり必要条件。

 ところが、太陽は動かず地球が動くのだという地動説はこの最低限の条件を当時満たしていなかった。たしかに、当時、格段に向上した惑星の天球上の公転の動きを示す観測データに、天動説はあわなくなっていた。

 しかし、当時これをうまく修正した大観測家、チコ・ブラーヘ(デンマークの天文学者)の

 修正天動説

で、十分補えた。この修正説は、太陽系の惑星は、地球を除いて、すべて太陽の周りを回っている。その太陽が、地球の周りを回っているというもの。これは、動力学的なことを別にすれば、つまり幾何学的には、

 地動説と同値

なのだ。だから、わざわざ常識に反する〝珍奇〟な地動説を持ち出さずとも、当時の精密な観測データを十分説明できた。

 これに対し、地球が動くと仮定する地動説には、致命的な欠陥があった。

 それは、地球が動くとすると、つまり、地球の自転によって見かけ上、天球が地球中心に回転しているようにみえるとすると、

 地球が自転している証拠としての、いわゆるコリオリの力

がなければならない。このことを実際に確かめる「フーコーの実験」が成功するのは、ずっとあとの1851年。この実験の根拠については、その前の1835年、フランスのコリオリが、コリオリの力が存在することを理論的に導き出していた。

 コペルニクスの時代はもちろん、ニュートンの時代になっても、この証拠を観測データによって提示することは、精密な実験が必要なことからできなかった。このことが科学的な根拠を示しての地動説を否定することになった。こうなると、地動説の否定はとても合理的なことといえるだろう。

 Image204820140107 左の写真は、浜松科学館にある常設の「フーコーの振り子実験」の様子。地球が自転しているために、吊るした振り子のおもりの先は、自転していないときのような垂直な真下にはとどまらず、その周りをわずかに円運動している。 

 さらにもうひとつ、地動説には致命的な欠陥がある。

 もし仮にコペルニクスがいうように、太陽の周りを地球が公転しているとすると、夜の星々の天体にはその公転に伴って星の見える方向に違いがあるはずであり、しかもそれはすべての星に共通して観測されるはずだ。

 しかし、そんな年周視差など当時は、あまりにその違いが小さくて見つけられなかった。この角度で秒以下のわずかな角度が見つけられたのは、ずっとあとのドイツの天文学者、ベッセルの時代だった(1838年、白鳥座61番星で発見)。

 ● 結論として

 以上から、

 地動説は提唱から約150年間は科学者の間で、科学的根拠がないことから、科学的な説としては認められていなかった。それが観測データをもとに科学者に受け入れられたのは、コペルニクスの死から約300年後の1850年前後。

 ただし、幾何学的にはそうなのだが、動力学的には、ニュートンの『プリンキピア』(1688年)の公刊によって、

 地動説が理論的に正しい

ということがほぼ決着、あるいは確定していた。観測的なデータにより、裏付けられるには、さらに150年もかかった。

 常識をくつがえすような革新的アイデアだからといって、すぐには、裏付ける証拠が入手できない場合、受け入れられない。革新的なアイデアは、まず定説を信じる科学者にとっては時として珍奇と映る。それが常識の魔力なのだ。

 ● 減速から加速膨張宇宙への転換

 このような出来事は、単に中世時代にかぎらない。

 現代にも起こっている。

 たとえば、宇宙は刻々と膨張している。しかし、それは、アインシュタインの理論によると、膨張しながら次第にその速度はゆるめながら拡大している。それはアインシュタインの理論の結果であり、宇宙論科学者のほとんどは、正しいとして受け入れている。

 ところが、この10数年、観測的宇宙論科学のおどろくほどの精密化で、

 宇宙はますます加速度的に膨張している

という観測事実が明らかになっている。これは現代宇宙論ではとても不思議な現象であり、これを説明する理論は、現在存在していない。

 コペルニクスが『天球の回転について』という革新的なアイデアを出したのに、なぞらえれば、いわば、現在は

 「宇宙の加速膨張について」という革新的なアイデア

を提唱する時期に来ているといえるだろう。つまり、

 ここには、宇宙論的な地動説ともいうべき

 現代のコペルニクス的回転

が求められている。もう少し立ち入って言えば、

 現代宇宙論には、

 宇宙というのは、わが宇宙だけしかないという常識的な思い込み

があるのかもしれない。このことを宇宙の加速膨張という観測結果は示しているのかもしれない。

 地動説が、予測性をもった正しい科学理論としてすべての科学者に受け入れられるのに300年かかった。

 現代宇宙論のコペルニクス的回転には、10倍のスピードで謎が理論的にも、観測的にも解明されたとしても、確実な証拠を示してとなると、あと数十年は新現代宇宙理論の確立にはかかることになる。

 すると2030年代ということになるが、さて、この予測は、当たるであろうか。

 宇宙のすべての現象を説明する大統一理論は、人類は永遠に手に入れることはできないだろう。しかし、この加速膨張宇宙の謎については、ブログ子が生きている間に決着がつくという可能性、あるいは幸運はギリギリあるような気がする。

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