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突破口は1500回の実験から開かれた

Image2062_2 (2015.01.10)  ボランティアをしている浜松科学館(浜松市)で、ノーベル物理学賞を受賞した天野浩さんたちの記念展示、

 青色LED研究の足跡をたどる

が開かれるというので、正月明けの先日出かけた。目標を持ち、やりぬく力を身につけようと呼びかけていた。みずからも、この展示コーナーの入り口に金額縁に入れた色紙に、

 憂きことの なおこの上に積もれかし

    限りある身の力試さん

としたためている( 右写真 = 浜松科学館展示ホール、1月7日 )。いかにも、誠実でまじめな天野さんらしい謙虚さがにじみ出ている。

 会場を見て回って、青色LEDの開発の意義がよくわかった。明かりを得るために投入された電気エネルギーのどのくらいが明かりとして使われるかという発光効率がいいのだ。

 どのくらいよいのか、具体的には、

 現在、蛍光灯の発光効率20-30%の2倍、50%前後。

 発熱電灯の5%前後に比べると、10倍近く効率がいい。

 だから、光の三原色の一つである青色の光を明かりとして効率よく出す半導体(LED)を組み込んだ

 青色LEDチップ(素子)

づくりは、省エネルギー求められるこれからの時代とても重要というわけだ。現在の効率50%前後というのを60%、さらに70%と向上させることが当面の課題ということも、これでわかる。

 研究の足跡というのは、この青色LEDの発光効率を向上させるための苦闘の歴史なのだが、天野さんたちがたどり着いたのは、半導体として

 窒化ガリウム(GaN)の完全な結晶化

によって、それは達成されると目標を定めた( 写真左 = 展示会場で)。ここには、まだ誰も成功していない青という光の三原色(赤、青、緑)のひとつの開発は、恩師の赤碕勇さんによれば、

 無限の可能性がある

との読みがあった。赤はすでに当時かなり開発が進んでいて、実用化の目処も立っていた。しかし、青は誰も手をつけていない。青ができれば緑にも王手がかかる。

 難関だが、ターゲットは青色

という明確な目標の設定と、そのさきの見通しこそ、天野さんたちの研究を支え続けていた。

 展示会場の赤崎さん出演のビデオによると、赤崎さんは京大での学生時代はあまり勉強熱心ではなかった。そのかわり、信州などで山登り、登山に打ち込んでらしい。このことが登るべき明確な目標、山頂に至るまでのルートや見通しをつけるという行動習慣を身につけていったらしい。

 これが後の研究と開発にずいぶんと役立ったらしい。

 Image2053 蛍光灯よりも格段に効率よく発光する半導体を探すという発光効率性と、その発光の色も、無限の可能性を秘めた青色性

とが両立する技術の開発。これが挑戦だった。

 そのブレイクスルーとなったのが、天野さんたちの研究

 低温バッファー層技術

だったという。サファイア基盤の上に直接、青色半導体を結晶化させるのではなく、低温層という緩衝ゾーンを設け、その上に半導体を載せる。その解説が展示コーナーにあった( 写真左上 )。

 今回の展示コーナーにはなかったが、静岡市で開かれた先日の新年会で、天野さんは

 この技術開発では、若き日(20代の大学院時代を含めた1980年代)には、仲間とともに

 1500回の実験に明け暮れた

との趣旨の苦闘を語っていた。

 この話を聞いて、ブログ子は、

 そんなことをしても「どうせ」というナマケ心からはブレイクスルー(突破口)は開かれない

という感想をもった。

 つまり、天野さんの言う

 最後まで、やりぬく力

というのは、具体的にはこの「1500回の実験」のことをさしてのことであろう。それには、明確な目標と、登頂に成功した暁には、周りの山々の頂を一望に見渡せる無限の可能性があるという明確な信念と見通しが必要だろう。

 こう考えると、天野さんの受賞が、赤崎さんという恩師に恵まれたことは別として、幸運とばかりはいえないだろう。

 その意味も込めて、以下に、天野さんが記念展示に寄せた色紙をあらためてかかげておきたいImage2060_2

  

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