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すてる神あれば助ける神あり

Imgp665420141222_2 (2014.12.20) 悪名高きノーベル賞科学者、という言い方をしたら、たいていの人は

 そんなバカな

と思うだろう。言語矛盾というべきか、それが常識というものだ。ブログ子も、これまでそう思ってきた。

 ところが、「アエラ」2014年12月22日号の冒頭コラム、eyes = 写真右 というのを読んでいたら、そうでもないことに、ふと気づいた。

 ● 30代でワトソン博士、ノーベル賞

 生物学者の福岡伸一さんが、100年にわたって謎のままだった生命の設計図、DNAの構造をものの見事に解明したJ.ワトソン博士( 現在、86歳 )について書いている。もちろん、この発見(1953年)で、1962年、博士は30代の若さでノーベル賞を受賞している。

 つまり20代で、はや栄光の人生が始まった。のだが、しかし、どういうわけか、せっかくもらったノーベル賞メダルを競売品として最近売りに出した。よほどお金に困っていたのだろうが、それはなぜなのだろうとたいていの人は思う。

 その結果、なんとそのメダル、予想をはるかにこえて5億円超で落札された。コラムではその落札者の名前は、競売の慣例としてどこのだれかということについては主催者側からは公表されないことになっている。だから、コラムではワトソン博士についてだけ、生物学者らしくいろいろと書いている( 写真下は最近のワトソン博士 = 出典不明 )。

 ところが、つい最近、落札者自ら、名乗り出たというニュースが報道された。ロシアの大手通信会社のオーナー、アリシェル・ウスマノフ氏という大富豪だった。

 _j79280294_50814900 ウスマノフ氏は、これまたなんと、せっかく落札したメダルをもとの持ち主、ワトソン博士にプレゼントとして無償で返還すると公言した。ノーベル賞のメダルはその受賞者にこそふさわしいというのが理由。

 もちろん、ワトソン氏は大喜びというか、恐縮しながらも、ありがたく申し出を受けるらしい。

 このうるわしい〝美談〟を聞いて、ブログ子は単純だから、コラムを書いた福岡氏と同様、ついつい、素直に

 ロシア人にも人間的にすごい人がいる、とりわけ、この大富豪の度量の広さは、すばらしい

と感心した。

 ● 美談話にはウラがある

 しかし、しばらくして、この話には裏があることに気づいた。

 コラムによると、ワトソン博士は、なにかと傲慢な人物、さらには人種差別的な発言などで研究社会、とくにアメリカでは危険人物として距離を置かれている。業界では

 悪名高きノーベル賞科学者

なのだ。が、それを払拭、あるいは名誉を挽回するために、大学などに研究資金として寄付をしようとしていたらしい。そのためにメダルを売りに出した。

 そこに登場したのが、ウスマノフ氏( だろう )。ワトソン博士にとっては、すてる神あれば助ける神あり、の大富豪。ただし、それはただの手助けではなかった。

 この大富豪、カネカネといわれて今ひとつ人物評価が思わしくない。ので、このうるわしい返還話で、これまた、

 自らの社会的な地位、それも世界的なステータス

を上手に、しかも一気に高めようとした。金の次には名声もほしくなったのだろう。大富豪にとって、5億、10億というのは、はした金。効果絶大な広告費と思えば、むしろ安すぎるとふんだのだ。

 ありあまる金はあっても、およそノーベル賞に縁などない大富豪。だが、千載一遇の売りに出されたノーベル賞メダルに目をつけた。宣伝効果抜群の、アッとおどろく無償返還というアイデアを思いついたのだ。さすがは目から鼻に抜ける世界的な大手通信会社のオーナーらしい計算である。

 もっとはっきり言えば、この大富豪、ありあまる金の使い方を知っているのだ。

 ● 上には上がある

 件のコラムは最後を

 早熟の天才にとって長い人生はつらい

と珍しく、辛らつなオチをつけていて、感心した。

 しかし、ノーベル賞の栄誉を手玉にとって、それとは無縁の自らの人生や名声をちゃっかり高める抜け目のない御仁もいる。という後日談を知ったら、コラムの作者は、はたしてどんなオチをつけただろう。

 ブログ子なら、

 世界は広い。というか、上には上がある。そういうことだろう。

とする。

 世の中、助ける神の側にも、それなりに事情がある。

 久しぶりにそんなことを知った科学美談だった。

 ● 補遺 もし受け取り断られたら

 このブログを公開したら、なんと、あるビジネスマンから

 もし、ワトソン博士が、一度売りに出したものを、受け取るわけにはいかないと大富豪の〝善意〟を拒否したら、どうなったかと詰め寄られた。

 ブログ子は意表を突かれたが、そんな場合を想定して、ただ返すというのではなく

 返す理由として、ノーベル賞のメダルは受賞者が持っていることこそがふさわしい

と、大富豪はあらかじめワトソン博士を「よいしょ」しているのだ。これでは、いくら博士でも断りにくいだろう。

 またたとえ万一、断ったとしても、それはそれで手元にあるメダルをダシに、さまざまなビジネスチャンスとして十分に生かせたであろう。なにしろ、ノーベル賞のなかでも飛び切り上等な、「モナリザ」ばりの一点もののメダルなのだ。

 このことを件の問い合わせの読者に伝えたら、十分に納得をしていただけたことをここに記しておきたい。

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