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宇宙に終わりはあるか ダークマターの「家康、秀吉、信長」論

Imgp6120 (2014.11.08)  毎年、文化の日に開かれる

 浜松コンファレンス「新しい文化論」

というのを楽しみにしている(主催は浜松市の光科学技術研究振興財団)。今年も案内が届いたので、出かけた( 写真右)

 文化論はもう30年以上続いているらしい。この企画は科学や技術にかかわる講演会とピアノなどによる音楽コンサートの2部構成というユニークなもの。人間の教養というのは理系と文系の融合によって初めて成り立ち、いずれが欠けても本当の教養とはいえないという考え方なのだろう。

 その通りだと思う。

 ● 見えている物質は宇宙のたった4%

 今年の演奏はイングリッシュホルン×ピアノデュオ。ピアノは浜松市出身の今仁喜美子さんだった(今仁= いまに)。後の講演会のほうは

 11_05_02014 宇宙に終わりはあるか

という壮大なテーマ。講師は、理論的宇宙論研究者の村山斉さん(斉= ひとし。東京大学国際高等研究所)。最近の理論研究と観測によって発見された謎の物質(ダークマター)と謎のエネルギー(ダークエネルギー)についての最新の話は、いかにも文化の日にふさわしく、とてもエキサイティングだった。

 この問いかけに対する結論を言ってしまえば、

 おおいにある

というものだった。最新の宇宙論の成果によると、

 宇宙の最後は、観測的に確かめられている空間の加速膨張により、空間内にある物質も光も急速に薄まって、ついには宇宙空間は〝引き裂かれ〟てしまうという結末を迎えるのではないか

というものだった。

 宇宙のこの不思議な急速な加速膨張が何によって引き起こされているのかという原因については、今のところ謎。そういう意味で、その原因をつくりだしているものを仮に

 ダークエネルギー

と名づけられているらしい。

 Imgp6113 もう一つ、この講演会では

 ダークマター

という言葉も登場していた。

 こちらのほうの謎は何かというと、私たちが現在知りえているすべての宇宙のなかにある物質を考えに入れても、現在の宇宙をつくりだすには、あまりにその量が少なすぎるという謎があるというのだ。

 さまざまな理論研究や観測事実(WMAP、2003年)を総合すると、こんな少ない物質では、銀河団などのような宇宙大規模構造などできるはずがない。つまり、宇宙は生まれたときと同じような一様な顔の「のっぺらぼう」のままのはずなのに、銀河や銀河団が互いにネットワークをつくりだしているのは何故なのか。

 これがダークマターが登場してきた理由だという。

 ではどれくらい少ないのか。

 現在のような宇宙の構造をつくるのに必要な物質の量に対し、これまでに見つかっている宇宙にある重力物質の量は

 たったの15%

だという。こんなに少ないというのは、人工衛星など最近の宇宙観測技術のおそるべき精密さを考えると、単なる観測的な誤差とは、いくらなんでも考えにくい。何かここにはきちんとした原因があるはずである。

 ダークエネルギーは物質ではないが、エネルギーと物質とは等価であり、その交換比率はわかっている。そのことを利用すると、

 ダークエネルギー73%、ダークマター23%、普通の物質4%

だという。

 夜、われわれが美しい星空を見上げて目に見えているのは、全宇宙の物質+エネルギーのうち、たった4%の姿でしかない

というのは、驚くべき事実である。

 ● 地下1000メートルで 

  村山さんによると、宇宙の加速膨張を生み出しているダークエネルギーの発見者に対し3年前にノーベル物理学賞が与えられた。しかし、その正体は何かということになると、現在もまったく見当もついていないという。

 それでは、もう一つの謎のダークマターはどうか。

 これを講演で展開して見せたのが、村山流

 Imgp6145_2 「家康、秀吉、信長」論

である。

 手元に置いたウグイスがなかなか鳴かない。この春告鳥の美しい声を早く聞きたい。その時、辛抱強い家康は

 「鳴くまで待とう」

と言ったという。これにちなんで、

 辛抱強く、ダークマターというウグイスを、2010年以来観測し続けているのが、

 XMASS-I ( 東大の神岡宇宙素粒子研究施設、IPMUの鈴木洋一郎教授らの実験グループ )

だという。地下1000メートルに設置した特殊な観測機器でダークマターの探索を続けている。正体候補についてある程度の絞込みはすすんではいる。ものの、まだ正体をつかんではいない。まだウグイスは鳴いてくれてはいないわけだ。

 そこで、ヨーロッパ共同の素粒子実験研究施設では、

 「鳴かぬなら鳴かしてみよう」

とばかり、待つのではなく、実験でダークマターの存在をもっと積極的に証明してみようという挑戦が始まっているという。ヒッグス粒子の存在を昨年夏に実験的に証明してみせたCERNだが、そこでのアトラス計画である。

 この壮大なプロジェクトもようやく動き出したばかりで、今後数年が正念場だという。

 互いの成果が一致をみたときが、ダークマター正体のばれる日だろう。

 ● 既存の理論の見直しも

  しかし、一致を見なかったときは、どうなるか。

 最後に、鳴かぬなら殺してしまえといった信長流の研究手法。

 これについては、詳しい言及は村山さんからはなかった。

 しかし、こういうことだろう。

 観測では鳴かなかったのだから、その観測の基礎になっている理論を殺してしまえ、というわけだ。理論の再構築である。

 こうした信長的な、はっきり言えば革命的な理論が登場する日が来るかもしれないという予感を感じさせる

 宇宙に終わりはあるか

だったように思う。

 宇宙に終わりは、あるいはあるかもしれない。しかし、そのなかで生きる人間の知的な好奇心は永遠になくならない。そんな強い信念をいだかせてくれた「新しい文化論」講演だったと思う。

 以下の写真は、2011年11月の「新しい文化論」での鈴木洋一郎教授の講演録パンフと、ダークエネルギーの謎に迫った世界的な宇宙論学者、佐藤勝彦氏の著書。

Image20294_2   

 ( 写真下=  上はブログ子がかつて読んだブルーバックス。その下は、宇宙好きのブログ子の仕事場。右手のふすまにビッグバン宇宙の進化の様子を示した模式図がはってある。いずれもダブルクリックで拡大可能 )

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 Imgp6130

 ● 最近の研究成果について 2014年11月9日記

 2014年9月18日発行の米物理学会誌(PRL)に、ダークマターの有力候補の一つだった

 Super-WIMPは候補から外せる

との実験結果を、以下の論文にまとめている。電子の質量くらいの軽いWIMPは候補から排除できるとしている。

 やはり、プロトンの100倍程度の重い素粒子がいまのところ最有力候補なのだろう。

 この成果の話は、村山講演ではまったく言及がなかった。これは同じ研究仲間の業績であるだけに、意外である。

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