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乗鞍の雲 わが青春の自転車行

(2014.11.22)  作家、井上靖さんのエッセイに

 穂高の月

というのがある。

 ずいぶん以前に書かれた随筆だが、

 「親しい友人数人とどこかで月を観ながら酒を飲もうということになって、その観月の酒宴を開く場所を考えた」

という一文で始まる。穂高を舞台にした名作『氷壁』を書くのに大いに役立った。のだが、この観月の酒宴は、その後の井上さんにとって山好きになるきっかけにもなった。

 井上さんの場合は、山というのは穂高岳のことであり、それ以外の山はほとんど登ったとがないと後に何度か語っている。

 ブログ子の場合、山といえば、乗鞍岳のこと。この山以外には、北陸生まれということもあり、そして仕事が金沢で長かったこともあり、立山と白山ぐらいしか知らない。今は静岡県に暮らしいてるのに富士山も登っていない。

 なぜ乗鞍岳か。

 それは今から45年近くも前にサイクリング用の自転車で山頂近くまで〝登った〟からである。平湯峠(1700m)からの急な上り坂を自転車を降り、乗っては押して、ようやく2900mまで登った。

 当時はまだ今のように舗装されておらず、砂利道。だから、バスの砂ぼこりを浴びながらの、半日がかりの自転車行だった。

 それが、右の写真(1969年か1970年の8月下旬撮影)。確か、日本人として初めて登山家の植村直巳さんがエベレスト登頂に成功する直前か、直後だったような気がする。

  11_19_02900m_2 乗鞍岳の最高峰(剣ヶ峰 = 3026m)近くで撮ったものだが、この日は天気がよく、はるか下に雲海がみえる。山頂近くの肩の小屋からつづら折のがれき道を少し登った平坦地。おそらく2900m前後の高さの様子だろう。山頂まであと100mの標高差。

 この撮影の後、すぐにガスがかかってしまった。それでも、ここで自転車から離れて、ひとり山頂の小さな祠にたどり着いたことを思いだす。

 山頂に近い肩の小屋では、近くの雪渓の雪をとかして飲み水として売っていた。

 一杯50円の水。

 これがとてもうまかったのを今も覚えている。その日は若夫婦が経営しているこの小屋でとまったのだが、満天の星が一時ではあったが、見ることができた。

 青春というか、若さというかそのときの勢いで、何気なく登った山ではあった。が、この小屋から星空を眺めたことが、ブログ子がその後の生涯にわたって天文学に強く心ひかれるきっかけになった。

 井上さん流に言えば、

 乗鞍の星

ということだろう。

 下山の途中、縁あって、小屋近くにあった乗鞍コロナ観測所を見学させてもらったのがなつかしい。

 ● マウンテンサイクリング in 乗鞍

 そんな思い出のあるブログ子だが、先日、NHK総合の番組「金とく」で

 2014年の全日本マウンテンサイクリング

という乗鞍岳を舞台にした自転車の競技大会を密着取材していた( 写真左 = NHK総合テレビ画面より )。

 毎年1回開かれるこの過酷な自転車レース、30年近い歴史があり、全国の自転車好きが数千人も参加するというから驚きである。

 Imgp6393in20141121 番組によると、標高差約1200メートル、20キロの通称、エコーラインを、なんと1時間弱で走破してしまうというのだから、びっくり。ゴールは山頂近くの鶴ヶ池(2700m)。大雪渓の近くだ。

 ブログ子のときもそうだったが、今でもこのエコーラインは、マイカー規制があり、バス、タクシー以外の一般車は通行禁止。自転車はOKで、乗鞍岳山頂近くの鶴ヶ池は、自転車で通行できる国内最高の標高らしい。

 優勝したのは、森本誠さんという自転車部品も開発している会社(近藤機械製作所)の30代社員だった。

 この人もまた、ブログ子と同様、自転車を通じて乗鞍岳に魅せられた。このことに、ある種の親しみを覚えた。

 ● 乗鞍の下の雲

 青雲の志という言い方がある。身を立て世に出ようと心に決め、故郷を離れることをさす言葉である。

 私の青春にとって、青雲の志を決めさせ、故郷を出るきっかけになったのは

  乗鞍の下の雲

だったといえる。それは忘れがたい思い出であり、シニアとなった今もブログ子の記憶のなかに静かに浮かんでいる。 

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