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魚の気持ちになる ウナギ博士の3つの推理

Imgp64652009 (2014.11.30)  ブログ子は自宅近くの佐鳴湖(浜松市)で、かつてたくさんとれたシジミの復活に仲間たちと取り組んでいる。縄文人もたべたのだが、今ではなかなかそううまく復活できない日々が続いている。のだが、そんな中で気づいたのは、復活には

 シジミの気持ちになる

ということがとても大切だということだった。

 今夏、琵琶湖の近くの川にサマースクールに出かけたときも、魚を捕まえるには、

 やはり魚の気持ちになる

Imgp6472 と次第にとれだしたという貴重な体験をした。人間の都合ではなく、魚の都合を考える、というわけだ。

 そんな体験をまとめたものを、先日、知人にメールに添付して届けたら、おどろくべき情報を届けてくれた。

 大回遊するウナギの気持ちになる

ことで、(ニホン)ウナギの産卵場所をピンポイントで特定したという講義が今、

 BSの放送大学「特別講義 ウナギ大回遊の謎を追う」

で発見者自身によって行なわれているというのだ。写真上がそれなのだが、元東大大気海洋研究所教授の塚本勝巳さんである(現在は日大教授)。

 ● 大回遊の謎を追う

 Imgp64501991 繰り返し放送されているというので、早速、聞いてみた。見おわって、まさに塚本さんは、定年直前までの20年、

 ウナギの気持ちになる

ということをモットーに3つの仮説を立て、次第に産卵場所の探索範囲を絞り込み、ついに大発見につなげた(2005、2009、2011年)。

 そのことをはっきりと示すのが、絞込みのための3つの仮説。特に、そのうち最初に立てたひとつで、下の写真。海山仮説を説明するパネルである。

 なぜウナギは日本からまっすぐに南下するのかということを魚の気持ちになって分析している。

 パネルにあるように、

 配偶者との出会いの場までの道しるべ

として海山のつらなりを利用しているに違いないと考えたわけだ。

  ● 産卵場を絞り込んだ仮説

 Imgp6451 この仮説には、ウナギは深海魚の仲間であるというDNAからの新知見も活用されたであろう。また、おそろしく広い海原では精子と卵子のコンタクトはきわめて稀にしか起こらない。だから海山の火口の奥が好都合ということもウナギは知っていたに違いない。

 確実にピンポイントで出会える場所

というのがウナギの気持ちなのだ。

 Imgp6455 それでは受精しやすい出会いの場所をウナギは決めていたとしても、出会う時刻はどうして決めているのだろう。塚本さんは、

 それは新月の夜に、海山の奥深くの狭い場所で出会う約束になっているに違いない

と推理し、仮説化した。第二の新月仮説である(下の「注記」追加パネルの2番目参照)。

 そして最後の仮説、第3象限仮説が登場する( 写真にその説明パネル )。オス、メスの親ウナギが確実に受精卵を海流に乗ってもとの成育場所にたどりつけさせようとするなら、

 潮目の境の海流

Imgp64633 に着目し、受精卵を放流するはずだ、と考えた。とするならば、図にも示したように、潮目の境にある海山の位置から西、つまり、海山からみて第3象限あたりに受精卵は一定の濃度で採取されるはずだと、塚本さんは、魚の気持ちになって〝合理的に〟推理した。

 これらの3つの推理からの仮説で

 滄海の一粟(いちぞく)

と思われたウナギの受精卵探しは、ピンポイントで何回やっても確実に成功したという。2009年のことで、その成果は世界的な科学雑誌「ネイチャー」の表紙を飾った。

 3つの仮説で、どのように壁を乗越えてきたのかということを時系列にまとめたパネルを右下にまとめておく。

 ● 何が成功に導いたか、3つの要因

 塚本さんの成功の要因とはなんだろう、とテレビを見ながら考えた。結論は、それは3つの要因があったからだろうということに落ち着いた。

 1つ目は、ウナギという日本人にとってはなじみの魚が研究対象だったこと。執着力があった。

 2つ目は、ウナギは南海のどこで生まれるのかという、とてもわかりやすい謎に単純で明解な目標を設定したこと。10数年の鳴かず飛ばずの時代にあっても、これがネバーギブアップを支えた。

 第3は、なんと言っても心身のタフさとすぐれたマネジメント力を塚本さんが養っていたことではないか。一言で言えば、有能な人材を集め、それを束ねる魅力のある人間力を磨いていたからだろう。

 ● 擬人化は間違ったことか

 科学の世界では、魚の気持ちになるというような擬人化は慎まなければならないと西欧式には考えられている。人間以外の個体には「意志」などはないと信じられているからだ。

 Imgp6473 魚の気持ちになることは、科学者としては合理的、論理的な科学精神から逸脱した研究方法だと考えるのは、本当に正しいことなのか。

 世界で初めてウナギの産卵場所を突き止めたのが、欧米科学者ではなく、日本人だった。人間は特別な存在などではない。人間とほかの生物との間には画然たる差はないとする自然観を日本人は素直に受け入れている。そう考えると、今回の発見が日本人によって成し遂げられたことは、けっして偶然ではないように思う。

 あまりに面白く、明解な講義だったので、以下に放送で示されたパネルの一部を読者のためにここに紹介しておきたい。

 ● 名講義から学ぶこと。新しい科学観

 20年以上もウナギの気持ちになり続けて、ついに世界的な成果をつかんだ。さすがのウナギもこの塚本さんの執念には根負けし、降参したのだろう。

 もう一度見たい、聞きたい名講義とは、こういう示唆に富む、また読者を興奮させる番組のことだ思う。

 事実、ブログ子もまた、人間の都合ではなく、シジミの気持ちになって、その都合に合わせた復活活動を続けたいと思うようになった。

 ブログ子の佐鳴湖からも産卵のため銀ウナギが、今、次ぎつぎと南の海に南下し始めている。

 塚本講義を聞いて、この湖で自分たちのしていることにあらためて反省をいだいたことを正直に書いておきたい。反省だけではない。新しい科学観をブログ子に具体的に教えてくれたことにも感謝したい。

 ( 写真はいずれもBS放送大学の「ウナギ大回遊の謎を追う」テレビ画面から引用。また、いずれもダブルクリックで拡大可能。)

 ● 注記 追加パネル

 Imgp6446201411  

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  Imgp64642009

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