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保護される百獣の王、ライオン 環境倫理

(2014.10.03)  パンダのロゴで知られる世界自然保護基金(WWF)が先日、

 報告「生きている地球レポート2014」

を公表した。

 この40年、人類の人口はほぼ倍増したのに、ほかの約3000種の脊椎動物について調べたところ、多くの場合、個体数が半減した

という内容。絶滅の危機を回避する有効な対策は保護区の設定であるという。

 ● この40年で動物の個体数、半減

 かつて繁栄を極めた百獣の王、ライオンも今では、アフリカのその保護区でしか生きながらえられない。それでも密猟が絶えず、絶滅の危機にある。いまでは、かつての繁栄は「見る影もない」(放送大学の現代生物学、松本忠夫東大名誉教授)らしい。

 Imgp5647 密猟といっても、ゾウなどでは、今ではオートバイに乗った密猟者が機関銃をぶっ放して殺し、象牙だけを盗み出すというのだから、荒っぽい。

 今回の報告の概要を読むと、危機に直面しているのは、ライオンやゾウだけではない。ライオンですら、もはや保護区のなかでしか生きながらえないのだから、この報告内容はある意味当然の帰結かもしれない。なんと罪な人類なのだろうという感慨を持たざるを得なかった。

 ● 天罰のメカニズム  

 問題なのは、こうした危機が、回りまわっていずれ人類自身にも降りかかってくるという事実だ。

 というのは、個体で構成される種は種として単独では生きながらえることはできず、ほかの種と相互に依存しながら、種の維持を図っている。これは進化の結果、すべての種は相互に依存していることを意味する。言い換えると、生物は生物からだけしか生まれないという自然の摂理の結果を意味する。

 Image2011 それが種の絶滅などで依存関係が崩れると、それがいわゆる食物連鎖のピラミッドに大きく影響する。その結果、食う、食われるのピラミッド頂点にいるはずの種の絶滅が危惧されるようになる。

 すると、その頂点に立つ種を底辺とするもう一つ上の階層の食物連鎖も崩壊。その頂点に立っていたライオンなどの大型肉食動物も危機に陥る。すると、そのまた上の階層の食物連鎖が崩壊、その頂点に立つとされている人類の食料危機が深刻になるという構図の連鎖反応をおこす。

 これが天罰の働くメカニズムである。

 ● なぜ生物の多様性が必要なのか

 こうみてくると、客観的な事実のみの記述を離れて、生物の多様性の価値とは何かという人間にとっての価値を伴う問題に立ち至る。この問いに対するこたえは、次の通りで、少なくとも二つある。

 一つは、今言った「天罰のメカニズム」を回避する価値があるからだろう。

 もう一つは、水質の浄化など生態系サービスが、多様性の高まりとともに、より豊かになるという価値。生態系サービスというのは、最近流行の言葉で、

 自然が人間に与える恵み

という意味である。

 ● プリマック(2000年)の環境倫理

  生物多様性を根幹にすえた倫理的な考え方に、

 R.プリマック(2000年)の環境倫理

というのがある。プリマックは保全生物学者。種の絶滅は悪、進化は善であるとした上で

 すべての種は相互に依存している

という考え方を環境倫理の根本として提示している。

 ブログ子は、絶滅は悪というのは信じたい。ただ、進化が善であるかどうかなどということは判断できない。

 絶対的な善ではないが、

 生物多様性の保持が人類自身をも永続させる

という意味で、善と捉えたい。

 生物多様性の保持という〝情け〟はほかの動物のためならず

つまり人類のためであり、善であることを警告したものとして、今回のWWF報告を真摯に受け止めたい。 

(写真上は、種の多様性の理解について述べた放送大学「現代生物学」テレビ画面より。写真下は、E.O.ウイルソンの大著『生命の多様性』(原著=1992年、邦訳=1995年)。社会生物学論争から離れて、脅かされる生物の多様性に目を向け、警告した名著。この報告を機会にあらためて再読してみたい)

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