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「御製」とセットで真実を知る 昭和天皇実録

(2014.09.11)  先日、宮内庁は、ようやくまとまった昭和天皇実録を公表した。20世紀の87年間を生きたその動静を克明に、そして公式に記録したものであり、近現代史の専門家にとって、その内容を確かめる作業を通じて、今後貴重な基礎史料という評価もなされるだろう。

 Image1992 一方、専門家ではない私たちにとって、この公表や今後の出版にはどんな意味があるのだろうか。

 実録には天皇自身の「肉声」はほとんど出てこない。政治的な側近あるいは侍従たちの記録が主なものである。

 このことを考えて結論を先に言えば、実録と、それを補う昭和天皇のそのときどきの思いを歌に託した、いわゆる「御製」をセットで考えることで、昭和史の真実が浮かび上がってくるのではないかということである。

 この意味で、今回の実録は、専門家の作業とは別の大事な史料であると思う。

 ● BSフジ、日テレ情報番組でも

 先日の公表と同時に、BSフジ「プライムニュース」やBSテレ「深層ニュース」で、近現代史の専門家をスタジオに招いて、実録のポイントとなる点について解説していた。そこには、秦郁彦さんとか、所功さんとか、日本現代史の専門家が、歴史家らしい目で微に入り細をうがって論じていた。

 その話から、どうやら、これまでの定説と著しく異なる事実は今の段階では出てきてはいない(「注記」)。

 Image1990_3 しかし、だからといって、専門家にとって史料的な価値が低いというものでもないだろう。

 ブログ子が、昭和天皇を今上天皇としてまじかに拝見したのは、大阪での夕刊紙記者時代、1986年5月11日の全国植樹祭(堺市・大仙公園)。これに先立って天皇が近くの仁徳陵を参拝したときである。そのとき撮ったのが、右の写真。

 亡くなる2年前のことであり、おそらく元気な姿を全国民に広く知らしめた最後の場であったように思う。

 このとき、天皇がどんな歌を詠んだか、覚えていないが、生涯600首以上を公表しているらしい。

 その中の大半を歌の解釈とともにまとめた『昭和天皇の御製』(国柱会本部編、平成元年=1989年)もある( 写真 )。歌の背景を知ることで、歴史的な事実を背負ったそのときどきの天皇の思いが、より強く伝わってくるようになる。

 歴史の真実を、史実だけでなくもっと多面的にとらえる。ここに国民一般にとって今回の公表の大きな意義があろう。

 ● 昭和を冷静に見つめ直す好機

 亡くなって四半世紀、昭和天皇は稀にみる激動の昭和史の中心人物。その心中を多面的に深く理解する。多面的な理解は、昭和という現代史を、側近に都合のいい立場から見るのではなく、御製という天皇自身が国民に直接語りかけた、いわば国民の側から歴史を見直す出発点、あるいは土台でもある。

 実録がまとまった今が昭和を冷静に見直したり、見極めたりする好機ではないか。

 この実録の公表と今後のその公刊を近現代史の専門家だけの占有物としてはなるまい。

 ● 注記

 月刊「文藝春秋」10月号(2014)には、早速、実録の衝撃について特集、3人の歴史家が鼎談している。が、タイトルに反して、これといった新事実の発見はなかったらしい。

 逆に言えば、これまでわかっていた定説を覆すような記述は、今回の実録にはあえて掲載を避けたというのが真実であろう。

 はっきり言えば、実録は事なかれ主義の編集方針で編纂された。大筋で言えば、これまでの定説を追認する内容になっている。

 その追認をより深めるには、御製とセットで考える必要があり、また専門家は隠された真実の掘り起こしに一層の努力が必要である。

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