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安倍官邸にあやつられるメディア

(2014.08.19)  先日の日曜日夜、たまには民放の報道番組も見てみたいと、BS-TBSの

 週刊 報道部 「検証 メディアの戦争責任」

というのを拝見した。

 ● 国民を戦争に導いた新聞の責任

 「そして、メディアは日本を戦争に導いた」という調子のものだったが、

 過去の新聞は具体的にどう戦争への道にかかわったか、

 その事実から、その現代への教訓とは何か

について、キャスターも交えて、たとえば各紙の社説タイトルまで映し出して具体的に論じていたのが面白かった。出演者は、メディアに詳しい作家の半藤一利(84歳)さんと保科正康(74歳)さん。

 出演者がよかったせいか、なかなか鋭い、あるいは新聞社には耳の痛い指摘がこれでもか、これでもかといわんばかりに出ていた。さらに放送では、過去の新聞批判だけでなく、最近のテレビ報道の問題点や批判まで、当のキャスターに向かって、遠慮する様子もなく率直に語られていた。

 メディアが自縄自縛におちいり、自らも制御できないほどに戦争をあおり立て、国民を戦争に駆り立てる先兵的な役割を担ってしまったのは、まぎれもない事実である。この意味で当時のメディア、つまり新聞には当然戦争責任がある。

 ● メディアコントロールに巧みな政権

 問題は、それがにがい教訓として、今、活かされているかという番組後半の部分だった。

 その結論をまとめると、

 安倍政権は、こうした過去のメディアの振る舞いや、あるいはもともと持っている特ダネ争いや部数拡大に走りがちな習性を十分活用し、メディア操縦に動き出しているのに、また手玉にとられている

というものだった( さらに具体的には「注記」を参照 )。メディア側はもっと過去の失敗に学び、今に生かしてほしいと半藤氏は嘆いていた。

 ● 今、進む情報統制

 一方、この失敗に学び、現代に生かすという点について、保科氏が番組のなかで示した図は面白かった。「国民」と書かれた文字を囲んだ四角形の各辺に

 上= 言論の自由の抑圧(新聞紙法)

    情報の一元化(大本営発表)

 左= 弾圧立法 ( 国家総動員法/治安維持法)

 下= 教育(教育勅語/軍人勅諭)

 右= 暴力(特高)

と書かれていた(括弧内はブログ子の補い)。これらが、当時の国民を戦争に駆り立てたという図である。

  今で言えば、言論の自由の抑圧は、NHK会長人事への安倍官邸の関与であり、最近の朝日新聞「慰安婦問題」記事取り消しへの過剰な反応だろう。

 情報の一元化は、官邸のメディア戦略である。

 過度の競争が起こらないよう新聞業界を現在保護している再販売価格維持制度(再販制度)もいすれは撤廃に追い込まれるであろう。紙の割り当てに関する戦前の新聞紙法の運命を思い出させる。

 左側の弾圧立法というのは、今で言えば、特定秘密保護法であり、国家総動員法に比較できるものとしては集団的自衛権容認の閣議決定。

 下の「教育」というのは行政主導の教育委員会改革。

 さらに言えば、自らの国家像を提示し、ことさらに愛国心の尊重を振りかざす

 『美しい国へ』(安倍普三著、2006年、文春文庫)

  『新しい国へ - 美しい国へ完全版』(安倍晋三、2013年、文藝春秋)

である。

 ● 過去のにがい教訓生かしているか

 右の「暴力」については、これからであろう。これが整えば、戦前の体制と同じものが整ったことになる。

 番組では、こうした状況に対し、メディアはほとんど対応し切れていない、過去に学んでいないと出演の二人は批判していた。 

 この番組は

 安倍官邸にあやつられるメディア

という官邸と新聞の現状の関係を、戦前の状況をほうふつさせる形で整理させてくれた。

  ● コオロギは鳴き続けたり

 この番組を拝見して、半藤さんも、保科さんも、今報道界が学ぶべき人物として反骨のジャーナリストだった

 桐生悠々

を挙げていた(もう一人は言論人の徳富蘇峰=蘆花の兄)。悠々はブログ子が長く暮らした金沢市の高岡町出身。ブログ子はこの高岡町で仕事をしていたこともあり、番組を見終わって、

 『抵抗の新聞人 桐生悠々』(井出孫六、岩波新書)

を今一度読み返してみたいと思った。発禁処分に抵抗しながら新聞「他山の石」を死の直前まで発行し続けた。その悠々の句に

 コオロギは鳴き続けたり嵐の夜

というのがある。1946年9月5日号(発禁処分)を最後に彼が息を引き取ったのは、同年9月10日、真珠湾攻撃のわずか3カ月前のことであった。

 ● 注記 安倍官邸と新聞

0751a_2  安倍官邸のメディア戦略については、近著

 『安倍官邸と新聞 二極化する報道の危機』(徳山喜雄、集英社新書)

に詳しい。右派と左派に二極化した新聞業界の対立構造を、安倍官邸はたくみに利用、情報の統制を図っている様子など参考になる。 

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