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集団的自衛権、閣議決定はまやかしだ

(2014.07.05) 今回の集団的自衛権についての安倍内閣の性急な閣議決定は、結論的に言えば

 まやかし

であるといえるだろう。辞書によると、まやかしとは、

 それらしく見せかけた、ごまかし

のこと。それとは、今回で言えば、決定の中にある

 「国民の生命、自由及び幸福追求の権利を守るためのやむを得ない」措置

のことである。

  国民のための措置のように見せかけてはいるが、実はこの決定は多国間の集団安全保障への道を開くひそかな地ならしなのだ。

 以下、そのまやかしの根拠を具体的に指摘してみたい。

 ● 「憲法の基本変わらない」のウソ  

 第一のまやかし。

 そもそも歴代自民党内閣、たとえば1972年の見解などが繰り返し、集団的自衛権は行使「できない」と明言していた。これに対し、閣議決定では「できる」と180度変更した。のに、「憲法解釈の基本的な考え方は変わらない」(決定後の安倍首相会見発言)と強弁したのは、まやかし以外の何者でもない。

 決定にあるような「グローバルなパワーバランス変化」など国際情勢が変わっただけであるという強弁は、憲法は、粘土細工のように時の政権の恣意で自由に解釈してよいとする道を開くものであり、憲法をないがしろにするのもほどがある暴言といえる。

 そればかりではなく、粗雑で、現実離れした現状認識に立っているのが一層問題である。これは、まやかしを押し通そうとする結果であろう。

 戦前の旧軍部が「自存自衛」を口実に、近隣諸国に侵略戦争を仕掛けてきたことを思い出すまでもなく、

 いつか来た道

であることをわすれてはなるまい。

 ● 落とされた切迫性の要件 集団安保に道

 第二のまやかし。

 もう少し、各論的にまやかしを指摘すれば、閣議決定には集団的自衛権容認の3条件のなかに

  切迫性という第4の大事な歯止め

が抜けている点だ。1972年見解には「急迫、不正の侵害に対処する場合に限られる」とした文言が、今回の決定では、こっそりカットとされている。

 行使容認の今回の新3条件では、

 「明白な危険」の予見性があること

 国民を守る適当な手段がほかにないという不可避性があること

 必要最小という限度性があること

である。しかし、

 「明白な危険」が目の前に迫っている切迫性があること

をこっそり落としているのだ。これがないと、

 多国間の集団安全保障における武力行使の一体化

も容認できることになろう。切迫性があれば、一般的な「武力行使の一体化」はできず、集団的自衛権に限定されざるを得ないからだ。

 閣議決定は2国間の集団的自衛権だけの容認だったはずなのに、そして集団安全保障には言及がないのに、多国間の集団安保の「武力行使の一体化」にまで道を開くことできるというトリックを、決定はひそませている。

 事実、閣議決定にあたって作成された政府の非公開想定問答集では、集団安全保障条約に基づく武力行使について「許容される」と明記されている(中日新聞6月28日付朝刊1面「集団安保ひそかに容認」)。

 Imgp4449 与党合意さえできてしまえば、あとはいくらでも拡大解釈できる余地を残すという政府や自民党側の計算がみえるようだ。

 同様の指摘を外務官僚側の動きから暴き出したのが、2014年7月6日付朝日新聞「検証・集団的自衛権」(写真右)= 「集団安保」潜ませた外務官僚」。 

 まとめると、集団安保には言及していないはずの今回の決定が、実は集団安保の武力行使を許容できるようにも解釈できる余地を残した。これが具体的な第二のまやかしだ。

 このほか、集団的自衛権の行使対象国の定義「密接な関係にある国」があいまいであることを外務省も認めたとの記事(中日新聞7月1日付)などがある。

 逆に言えば、これらや、切迫性の要件を閣議決定で意図的に落としたことは重大な問題を今後引き起こすだろう。

 ● 補遺 7月2日付の各紙「社説」検証

 特集 集団的自衛権、各紙「社説」検証

 今月初めの集団的自衛権の閣議決定について、72日付各紙朝刊の社説を、地方紙、全国紙、その他に分けて検証しました。新聞によってずいぶん論調が違うのが、具体的にわかります。

 ① 中日新聞「9条破棄の暴挙」

    「静岡」には社説なし

 地元紙の中日新聞は「9条破棄に等しい暴挙」と主張、現実感の乏しい議論をなじっています。1面では論説主幹が現行憲法には海外での戦闘には加わらないという「越えられぬ一線」があるとして、政府や国会に再考をうながしました。

Imgp4401  一方、静岡新聞はどういうわけか、社説の掲載がありません。このような極めて県民の関心度の高い重要な政治テーマに社論を掲げないようでは、県民の信頼にこたえる使命のあるメディアの責任が問われかねません。ただ、社説対向面の2面の論壇でタカ派識者が「行使の意志、中国への抑止力」と論評しています。

 その一方で、読者(中面)のページで、社外ジャーナリストが安倍政権の暴走で「日本への信頼壊すな」とハト派的な寄稿しています。どうやら、同紙はタカ派に肩入れしているようです。

 ②  朝日、毎日、赤旗は暴挙派

     産経、日経、読売は容認

 朝日新聞の社説は「この暴挙を超えて」と題し、強兵への道は許されないと主張しています。毎日新聞は「歯止めは国民がかける」との論調。野党が賛否バラバラで歯止め役を果たさなかったことも批判しています。

 これに対し、産経新聞は「「助け合えぬ国」に決別を」と主張、閣議決定を積極的に支持しています。さらに、今秋にも改定の日米安保指針と決定を担保する法整備を急げと、政府に発破をかけています。日経新聞も同様に「助け合いで安全保障を固める道へ」と政府決定を評価しています。衰える米警察力の補完に注目しているようです。

 Imgp4399  読売新聞は「抑止力向上へ意義深い「容認」」。

 今後、防衛指針に閣議決定を反映させよと勇ましく進軍ラッパを吹いています。同紙はこのテーマに特段の関心を示していましたが、このことは、政治部長自ら1面準トップ「真に国民を守るとは」との論説でもわかります。それは閣議決定で「対米連携を深めること」だと政府見解と一致する意見を述べています。

 「しんぶん赤旗」は「この歴史的暴挙、国民は許さず」と主張。決定は9条をくつがえすものだと言葉をきわめて批判しています。

 ③ NHKは「どっちつかず」派

 右傾化の進むNHKも注目されます。7月1日深夜の「時論・公論」では、安全保障担当のベテラン解説委員が「憲法解釈変更 その先は ?」と、新しいNHK会長の顔色をうかがうような、どっちつかずの論評をしていました。放送法で公平中立を義務付けられているメディアの限界を感じました。

  ただ、その先は?という問いかけで、集団安全保障にかかわる「武力行使の一体化」にまで、踏み込んで解説していたのは注目に値します。閣議決定では、この点について、国際的な集団安保も容認できることをにじませてはいるものの、明確には言及していないからです。

Imgp4389 

Imgp4386

Imgp4392

 ( いずれも、7月1日深夜のNHK「時論・公論」テレビ画面から)

 

 

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