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百姓ノ持タル国  早雲と蓮如

Imgp3364_1 (2014.03.19)  北陸出身のブログ子は、つい最近まで、

 百姓ノ持タル国

というのは、唯一、室町時代後半の1480年代の加賀一向一揆のことだと思っていた。それくらい、米の生産者としての農民、百姓は、当時の北陸の守護、富樫政親を自害させるまでに経済力をつけたり、互いに団結したりして勢力を持ち始めていた。この百姓ノ持タル国は約100年間続いた。

 応仁の乱後は将軍や幕府の力と権威が相対的に弱まった。一方の農業生産は技術の向上で大いに高まり、守護なにするものぞという意識が芽生えてきた。

 ● 丹羽文雄『蓮如』

 この意識を教化という形で浸透させていったのが蓮如。一揆では、蓮如の吉崎布教など、百姓同士の横のつながりが、精神的にも軍事的にもそれまでとは格段に強化された。これが室町後期に発火点に達した。蓮如が一揆を直接あおったかどうかはともかく、蓮如の教化が結果において、一揆を成功に導いたにちがいない。

 「蓮如さん」という呼び方でもわかるが、蓮如信仰の篤いことで知られる金沢で暮らしていたころ、自らも真宗住職家の生まれだった作家、丹羽文雄さんのライフワーク

 『蓮如』(全8巻、中央公論社)

を読んだ。理系のブログ子だが、今ではちょっとした愛読書になっている。

 ● 司馬『箱根の坂』

 定年後、静岡県で暮らすようになって、もう一つ、同じ時代に、そんな百姓ノ持タル国があることを、司馬遼太郎さんの北条早雲の生涯を小説化した

 『箱根の坂』(全3巻、講談社)

で知った。静岡県東部の伊豆半島である。

 当時、加賀一向一揆にならって、早雲が自ら先頭に立って国人・地侍を鼓舞。京都の将軍の地方での分身的存在の堀越公方(御所は今の伊豆の国市韮山)だった足利茶々丸を滅ぼした。一向一揆からわずか5年後のことである。伊豆を百姓ノ持タル国として、年貢の取り立てを大幅に減らした。幕府の干渉から独立した、いわゆる領国制のはしりを始めたのである。

 さしたる家門の出ではない早雲は、言ってみれば、家督争いや跡継ぎ問題に終始せず、初めて民衆のための政治に目を向けた武将といってもいいかもしれない。

 言い換えれば、早雲は

 主人持ちの守護から独立した領国大名へ、戦国時代のさきがけ

となった。この小説を読むと、早雲は、守護制の下では、自分の行動は謀反だが、支配者に造反するにはそれなりの正当な理由、義があり、許されるという

 造反有理

の思想の持ち主だったことがわかる。早雲が、義を重んじた孟子の革命思想に共感していたのも、これで理解できる。

 社会の実質を担っている民衆や百姓の心を蓮如や早雲はしっかりと捉えていた。そしてその行動を通して、彼らから信頼を勝ち取っていた。

 ● 時代の風とらえた不遇と下積みと無私と

 それでは、なぜ、とらえることができたのだろうか。

 二つの小説を読んで気づいた。

 ともに、人生の前半が大変な貧乏と下積み、不遇の時代だったという共通性がある。だから、下から目線で庶民の願いが何であるかを自らの肌で知った。だから、歴史の土台を動かすものは何か、そこから今吹いている時代の風向きはどの方向かを読むことができたのであろう。

 読みが大きく間違っていなかったのは、両者ともに、宗教者的な無私の人だったからだと、ブログ子は思う。

 我欲は時代の風を読み誤らせる元凶である。ジャーナリストとしてこのことを、これらの小説から学んだ。

  ● 補遺

 戦国時代の終わりとともに、早雲の望んだ領国制は実現したが、早雲の目指したもう一つの目標、つまり

 百姓の持たる国

づくりが、本当の意味で始まるのは、約400年後の明治維新からだろう。

 明治政府は、家柄や門地にかかわらず実力主義で人材登用をすることを、気分としてではなく本気で考え始めていた。そうしないと西欧文明に踏み潰されるという恐怖感があったからである。

 こうした人材登用を、明治という時代の明るさとともに司馬さんは

 『坂の上の雲』(全6巻、文藝春秋社)

に描いた。

 早雲が晩年の住居、伊豆の韮山から三島大社、そして険路難路の箱根の峠、つまり箱根の坂を上りきってから、さらに坂の上に浮かぶ雲にたどり着くまでに日本は約400年の歳月を要したことになる。

 早雲の先を読む力の恐るべき壮大さを思わざるを得ない。

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