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今、みえてきたもの まだみえないもの   - 「3・11」から3年

Imgp3030_12  (2014.02.26)  福島原発事故からまもなく3年になるが、先日、沼津市で

 ふくしま共同診療所からの報告

という学習会が開かれ、ブログ子も浜松市から参加した。「すべての原発いますぐなくそう ! 全国会議NAZEN」静岡県東部の会(山口武代表)が開いた。講師は、共同診療所の杉井吉彦医師(左下)。

 ● 疑わしきは安全側に

 福島県内で今何が起きているのか

という点について、医師の立場から具体的に現状の問題点を洗い出していた。

 結論を先に言えば、

 「疑わしきは安全側に立つ」という医療体制を一刻も早く整えないと、東電を原因企業とする放射能による福島県版〝水俣病の悲劇〟が今後10、20年後に現実化する

というものだった。

 Imgp3026 医学的に因果関係が具体的に確認されるまで、1960年代の水俣病は放置されていたが、その間に被害は急速に拡大した。この過ちを、行政や医師は今また繰り返してはならない

というのが、ブログ子の学習会を聞いた感想だった。

 ● 甲状腺がんの検診結果

 今月初め、福島県は、25万人以上の県内18歳以下(事故当時)を対象とした甲状腺に対する健康管理調査の結果をまとめた。

 それによると、甲状腺がんの疑い42人と甲状腺がんと判明した33人合わせて計75人であることがわかり、公表した。

 これがどの程度、今回の原発事故で大気中にまきちらされた放射性ヨウ素(半減期8日)を吸い込んだことによる影響なのかどうかが、医学的な焦点である。

 甲状腺の罹患率というのは事故前には世界的にもよくわかっておらず、推定で、

 10万人に1人、あるいは100万人に1人

とずいぶんアバウトな数字。また、発生率には地域差があることもわかっている。

 しかし、仮に発生率の高い10万人に1人としても、今回の調査ではせいぜい数人のはずなのに、1桁も高い発生となっている。異常である。

 百歩譲って、仮に、さらに高い発生の1万人に1人程度としても、今回の結果は、疑いも含めれば、その割合よりも数倍も高いことになる。

 県の検討委員会では、今後精査は必要だがとしながらも、調査結果は

 「原発事故に伴う被ばくの影響とは考えにくい」

としている。検討委の分析医師の発言だが、どこからこんな結論が出てくるのか、まったく不明というべきではないか。

 問題なし、というあらかじめ答えを用意しておいて、それに〝アワスメント〟するための発言であろう。医師の倫理にもとる発言である。

 このことが、今、あらわに見えてきたものの一つである。

 Imgp3043_1

  考えにくいという見解が正しいかどうかだが、チェルノブイリ事故では事故の4、5年後から急速に甲状腺がんの子どもたちが増えていることから、福島でも来年あたりから、どうなるか注目されるところだ(写真上= チェルノブイリ事故の甲状腺流行曲線)

 つまり、影響がないなら、当然だが、流行曲線の急増傾向は見られないはずだ。むしろ、発生数は毎年ほぼ一定に今後推移するであろう。

 その様子のパネルを示す( 講演した杉井医師の資料から。写真ダブルクリックで拡大 )。

 ● 重大な異変を示す「A2判定」

 今度は、まだ見えてこない問題点について。

 Imgp3077_1 以前にも書いたが、甲状腺検査の判定条件、いわゆるA1(異常なし)、A2(小さな異常はあるものの、ただちには問題はない。2年後にもう一度検診)という

 判定のA2問題

である。共同診療所の独自の調査結果が右写真(甲状腺超音波検査結果 = 福島診療所建設委員会発行「SunRise」2013年10月11号))。

  それによると、無数微小のう胞(蜂の巣状のう胞)が

 検査対象者の17%、のう胞(水ぶくれ)のある検査者の36%

に検出された。通常はこのような異常検出はきわめてまれであり、甲状腺全体が何らかに侵されている可能性を示唆しているという。

 問題がないとされているA2判定には、いまだみえざる危険なシグナルが含まれている

と考えるべきではないか。2年間も検診を放置していいわけがない。

 ● 海洋汚染が国際問題に

 もうひとつ、杉井医師の心配は、今はまだ見えてこないが、

 汚染水問題で、今後海洋汚染が国際問題になるだろう

と予測していた。ブログ子もそう思う。

 科学誌「ネイチャー」も最近、この問題を重視し、日本に当事者能力を疑問視する見解を示し、国際協力が不可欠との論説をかかげ、警告している。IAEAなどの国際原子力機関も同様の見方をしており、共同調査を日本政府(原子力規制委員会)に積極的に働きかけている。

 最後に、主催者の山口代表が、すべての原発をいますぐ廃炉にし、再稼働も阻止を訴え、今年も3月11日の反原発福島行動に行き、これらをアピールしようと呼びかけた。

  (写真下=  NAZEN東部の会の山口武代表(中央)あいさつ、大手町会館(沼津市)。右端= 杉井医師。2月23日)

 Imgp3064_2

 ● 重要な補遺 よく言われる「100万分の1の確率」の意味

 Imgp3475_1ok 甲状腺がんの話で、よく使われる

 100万分の1の確率

がどういう意味なのか。つまり、どのようにしてこの推定値が出てきたのか、きちんと把握して使わないと、誤解や判断の誤りを犯す。

 このことを東大病院放射線科の中川恵一准教授が

 「週刊新潮」2014年4月10日号の連載記事「がんの練習帳」で

 福島で甲状腺がん急増の「デマ報道」

で明解に解説してみせている。つまり、このアバウトな確率について

 「現在分かっているのは、症状が出たため病院に来て小児甲状腺がんと診断された患者数だけで(推計された数字)で、無症状の(、したがって病院に来ていない)子供を(すべて)検査してどのくらいの率で甲状腺がんが発見されるのかについての正確なデータは(世界的に探しても)ありません。」

ということなのだ。

 放射線のほとんどない通常の状況で、すべての子供を全数検査して罹患確率を弾きだせば、当然のことながら、発見の確率は「100万分の1」より大幅に高まり、10万分の1、あるいは1万分の1の罹患確率になる可能性もあるというわけだ。

 福島の健康調査は、そのうむを言わさず子供たちをすべて調査した。そうしたら、27万人のうち33人がはっきりと甲状腺がんだった。

 だからといって、ただちに、ストレートに、100万分の1の確率から考えると、福島の調査結果は多すぎる。だから、これは放射線の影響が出ているのだ。とは断定できないことになる。

 この点は、確かに注意する必要がある。疫学的な調査方法において、確率計算の分子の部分が病院に来た子供をカウント対象にしたものなのか、それとも来る来ないにかかわらず全数調査した場合の患者数を分子にするのとでは当然ながら結果の確率は大きく異なる。単純な比較ができない。バイアスがかかっていることを見逃してはなるまい。

 この点を中川准教授は強調している。重要な指摘であると思う。

 巷間なんとなくいわれている100万分の1というのは、すくなくともこれくらいの確率はあるが、来院しない多くの患者もいることを考えると実際はもっと大きな確率だろうということをきちんと理解することがこの問題を理解する上で、一つのポイントである。

 しかし、だからといって、中川准教授が言うように

 デマ報道

とまでいえるかどうかは疑問。なぜなら、放射線の影響がない場合、つまりもともとの本当の推定値がどのくらいなのか、世界的な、そして地域差を考慮に入れた、たとえば平均確率値が分かっていないからだ。

 このもともとの確率が仮に1万分の1くらいだとすると、福島の調査結果は、確かに放射線の影響が出ているとまではいえない。しかし、この仮の1万分の1の確率が正しいのかどうかが、世界的に見ても正しいとは疫学調査で確かめられていない。ここに問題がある。

Imgp3474_2  

 この問題はとくに今後重要になると思うので、関心のあるブログ読者のために全文をあえてきちんと紹介しておきたい。写真をダブルクリックすると拡大できる。

 ● 補遺2  国連科学委「がん増加確認されず」

 国連の科学委員会も最近、福島原発事故とがんとの疫学的な因果関係について検討結果をまとめている。たとえば、

  Imgp3466_1_201404021_2 朝日新聞2014年4月2日付朝刊に

 原発事故後の福島県民分析

 がん増加、確認されず

である。ただし、記事を読む限り、

 不足する現段階のデータでは、確認されず

という条件がついていることを忘れてはなるまい。影響がなかったと結論付けているわけではないのだ。

 記事によると、

 「(.累積で)80ミリシーベルト近く被曝した子が大勢いれば、甲状腺がんの増加が統計的にもわかる可能性があるとした」

と書いている。がんの医学的なリスクが高まるとされているのは100ミリシーベルト以上だからだろう。実際には、原発から20-30キロ圏内の1歳児の事故後1年間の甲状腺被曝量は平均で47-83ミリシーベルトと推計。しかし、高線量被曝データが不足しているため、甲状腺がんが増加しているのかどうか、統計的に裏付ける結論が出せないとしている。

 また、記事によると、このブログで杉井さんたちが問題にしている「しこり」などについては、

 「大多数は原発事故の被曝とは関係ない」

と報告書は判断している。 

 このほか記事によると、報告書は、

 福島県内全体については、事故後1年間の全身累積被ばく線量は原発周辺を含めた福島県全体で平均1-10ミリシーベルト(成人)。放射線を取り込みやすい子供の場合は、この約2倍と推計している。

 報告書は、今後出てくる新たな知見を踏まえて数年後に再検討され、今回の結論の見直しもされるという。共同診療所の地道な活動と成果も生かしたいものだ  

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