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科学者も、事実より信念で行動する

Imgp2761_12014.01.29)  昨年12月からこの1月にかけて、進化論というか生物学の一般書を何冊かまとめて読み、このブログでも抜き書きをするなど読書ノートとしてまとめてみた。生物はこの地上でどのように進化してきたか、最新の成果をじっくり味わった。

 そんななかで、あまり一般には知られていないが、

 『ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト』(ニール・シュービン、早川書房、2008)

というのが、面白かった( 写真上 )。サブタイトルの

 最新科学が明らかにする人体進化35億年の旅

というのにつられて、読んだのだが、読み甲斐のある科学書であった。

 ● 腕立て伏せのできる魚の発見

 これまでの、そして今でもダーウィン進化論、あるいはそれを洗練させたネオ・ダーウィニズム進化論の致命的ともいえる

 なぜ進化途中の中間化石が発見されないか

という問題について、古生物学者で解剖学者である著者が

 理論の予想通りのところと、予想通りの時期に、その中間化石(海生から陸生動物に変わる境の魚)

を見つけたというのだ。

 腕立て伏せができそうな前足に関節のあるその詳しい復元図まで、表紙に描かれている。

 これにより、種は太古の昔から変化しないという神の創造論は完全に否定されることになった。しかし、種は変化するとしても、問題はどの進化論が正しいのかという点は、依然として不明というスリリングな展開だった。

 遺伝的な変異が少しずつ蓄積して進化するとする定説というか正統派進化論でもいいし、種は突然に進化し、その後はほとんど進化停滞の状態にあるとする断続(区切り)平衡説でもいい。大進化は小進化では説明できないというわけだ。はたまたブログ子が支持する定向的な、生物主体的な今西進化論でもいい。

 これらの生物学本を読んで気づいたのは、生物の進化は生物界だけでなく、

 地球進化と生物のそれとの共進化

という視点であった。生物の進化が地球の進化を促し、その進化がふたたび生物の進化に影響をときには大きな影響を与えるという、いわば

 非線形の進化のダイナミックさ

を知った。具体的には、写真下の二冊

 『ワンダフル・ライフ』(S.J.グールド、早川書房、2000年。注記)

 サブタイトルは、バージェス頁岩と生物進化の物語。

 もう一冊は

 『スノーボールアース』(P.ホフマン、早川書房、2004年)

で、副題は、生命大進化をもたらした「全地球凍結」。腰巻帯には

 その氷が融けたとき爆発的な(生物)進化のドラマは始まった

とある。約6億年前のいわゆる「カンブリア爆発」のことを指している。

 詳しくは本書を読んでみるのが一番だが、結論を言うと、

 Imgp2770_1 全球凍結が始まるきっかけは、地球表面を漂っている大陸が赤道付近に集まっているとき。その凍結が終わるのは、分厚い氷を通して地下から吹き上げてくる火山噴火の二酸化炭素が増加したときというわけだ。

 そうだとすると、地球史では何回も全地球凍結が起こってもおかしくない。

 ダイナミックで壮大なドラマであり、ブログ子が高校で習った知識、常識をはるかにこえた科学挑戦ものがたりに仕上がっていた。

 しかも、その全球凍結が生命を大量絶滅に瀬戸際に追いやるが、氷が融けた時に生き残った生物は、爆発的にその数や種類をこれまで以上に増やしていくというのだからすごい。

 これまでとはまったく異なる

 地球生命観

がそこにある。

 ● 「ワンダフル・ライフ」と全地球凍結説

 この二冊を読んで、つくづく感じたことは

 科学者も眼前の事実より、まず、信念で行動する

という事実である。人間はときには合理的に行動するとはかぎらない。信念のもとになっている常識を疑うのは科学の世界でも大変にむずかしいことがわかる。

 ましてや、断片的な事実を帰納的に再構成し、定説に反する

 無礼な仮説

を公に問うのは、もっと勇気がいる。定説とは、ここでは進化論の、あるいは地質学の斉一説のこと。定説に疑義を申し立てれば、学者としての生命が絶たれることも覚悟しなければならない。

 そして、その仮説を演繹的に検証し、予測するなど確証するまでには10年以上もの時間がかかる。この間の孤独なそして、苦しい戦いに堪えなければならないのだ。このことをこの二冊の本は奇しくもブログ子に教えてくれた。

 ● 新パラダイムへの試行錯誤

 科学論あるいは科学史には、科学研究における思考の基本的な枠組みであるパラダイムの転換という考え方がある。

 これらの本を読むと、そうした転換の実際は、ずいぶんと複雑である。決して一直線に転換が行なわれるのではない。試行錯誤のなか、行きつ戻りつの連続の中から次第に真実が見えてくる。

 知の水平線を押し広げるとはかくも苦しい戦いなのだ。

 ● 注記

 「ワンダフル・ライフ」という書名は、直訳すれば

 驚くべき生物

という意味。これは、具体的には、カナダ・ロッキー山中(カルガリー市に近い)の今から約5億年前の地層(古生代カンブリア紀)から出てきたバージェス頁岩のなかから発見された化石動物群のことをさす。

 余談だが、

 米クリスマス映画「素晴らしき哉、人生」(F.キャプラ監督)

の元題「It’s Wonderful Life」から選ばれたらしい。素晴らしき哉、生命という意味も込められているのだろう。

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