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これは恐怖の避難になる 浜岡原発震災

(2014.01.31)  天気のよい昨年4月上旬、浜松市から直線距離にして40キロほど東にある浜岡原発まで仲間たちと車で取材に出かけた。途中、ゆっくりと昼食までとったりしたのだが、原発のほんの近くにある御前崎市役所まで、せいぜい3時間だった。国道や県道、地方道を利用したのだが、ほとんど車とすれ違うこともなかった。

 原発にアクセスする道路の実情を見極めるため、わざわざ遠回りをして出かけたのだが、海岸沿いの国道150号を利用すれば、この半分ぐらいの時間で十分に原発まで行けたであろう。

 ● 毎時0.5ミリシーベルトで圏外避難

 さて、それでは、南海トラフ巨大地震が発生、浜岡原発を襲ったとしたら、こうした事情はどうなるのであろうか。

 Imgp2790_1 つまり、原子炉緊急停止(スクラム)の失敗、したがって原子炉内での核暴走、あるいは冷却水の消失など深刻な事態になった場合、原発周辺に漏れ出した放射能を避けるための住民の避難には、どの程度の時間がかかるのだろう。この取材以来、このことが気になっていた。

 最新の規制基準(昨年7月施行)では、原発から5キロ圏内(御前崎市役所もこの圏内)では、冷却水の消失段階でただちに30キロ圏外に避難開始。その外側の30キロ圏内では、毎時0.5ミリシーベルト以上になったら屋内退避をあきらめ、住民全員が圏外に避難することになっている。その数はざっと100万人、つまり、静岡県の人口の4分の1近い。

 当然だが、道路は地震でズタズタだろう。利用できる車もバスも大混乱だろう。

 ● 2日で避難は不可能

 先日の中日新聞(1月19日付朝刊1面)を見てびっくりした。民間のシンクタンク「環境経済研究所」(東京都)の調査結果の記事である( 写真 )。

 記事によると、渋滞はあるにしても、地方道も含めすべての道路が利用できる場合のシミュレーションでも

 2日で避難するのは不可能

という結果になった。比較的に堅牢にできている国道(1、150、473号)だけしか利用できない場合、なんと、全住民が30キロ圏の外、つまり浜松市や静岡市などに避難を完了するのには、

 100時間以上

かかる。実際の原発震災では、この頼みの国道も無傷であるとは考えにくい。海岸沿いを走る150号など、ほとんど全線がズタズタであろう。

 とすれば、パニックは抑えられたとしても、無傷で残った国道は、道路状況や渋滞状況がつかめないことも手伝って、大混乱となるであろうと考えるのが常識である。

 仮に、国道のみが利用可能の場合の5割増し、200時間(8日間)の避難時間がかかるとする。すると、その間の避難住民の被ばく線量は単純計算で、

 累積100ミリシーベルト

にも達する。一時的な累積数字とはいえ、これははっきりとガンなどの健康被害がでると、医学的に予想される水準の線量である。

 このことは

 浜岡原発震災が恐怖の避難になる

ことを数字で示している。お年寄りや病人など災害弱者のことを考えれば、避難にはもっと時間がかかることを覚悟しなければなるまい。

 さらには、8日間の避難中には1日くらいは高濃度の放射能を含んだ雨に打たれる覚悟も強いられる。

 また、避難はできたとしても、受け入れる側の浜松市や静岡市も、震災直後でもあり、大量避難の対応では少なからず混乱するであろう。いまから、東北大震災の経験を十分生かす訓練が必要だが、ほとんどが手付かず状態だ。

 ● 2年後の2016年、地元の正念場

 浜岡原発では、今年、来年(2015)は原発設備の安全対策の確立や規制庁のその審査の関係で、物理的に再稼動は無理のようだ。

  しかし、2016年に入ると、4号機、3号機などの審査結果を受け、再稼働の地元事前了解など政治的な動きが活発化することが予想される。また、原発敷地外にある段丘地形での中部電力自身による自主的な活断層調査の結果も再稼動に大きな影響を及ぼす可能性がある。その結果のまとまるのは今春との見方もある。

 原発敷地内に貯蔵されている使用済み核燃料の安全保管も喫緊の大問題。この問題も含めて、中電を相手取った運転差し止め控訴審(東京高裁)の審理も大詰めを迎えている。

 廃炉が望ましいが、それまでの一時的なつなぎとしての再稼働であっても、原発震災では危険な避難になることを考慮すると、よほど慎重でなければなるまい( 注記 )。

 「即原発ゼロ」は正論であることはもちろん、今も停電が起きていないことを考えると現実的な選択でもあると思う。

 ● 映画「みえない雲」の悪夢

 チェルノブイリ事故直後に公開された架空の原発事故再現映画にドイツの「みえない雲」がある。

 避難に伴う大混乱を描いているが、その上震災まで加わった悪夢を静岡県で再現するようなことがあってはなるまい。

 ● 注記

 仮に、2016年中に再稼動させた場合、営業開始から28年たった3号機、22年たった4号機を5年ぶりに稼働させることになる。プラントのハード面からも、運転要員の人材面、錬度面からも、安全性の確保は容易ではないだろう。

 5年間のブランクは安全性の確保面から、重大なリスクを伴うことを忘れてはならない。再稼動すれば、少なくとも最も危険な初期トラブルは避けられないだろう。

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