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分社化? 持ち株会社? 国営化東電の行方

(2013.11.13) 小泉元首相の「(即)原発ゼロ」発言のなか、原発事故を起こし、国が筆頭株主になるなど事実上国営化された東電の今後の行方に、メガバンクなどの大手銀行を中心に関心が高まっている。

 ● 注視する大手金融機関

 電力債(総額4.4兆円)や借入金融資(総額3.5兆円)で貸し込んでいるからだ。国から支援法で得ている支援金の返済3兆円超もある。

  Imgp1794_2 だけでなく、東電自身、汚染水問題で事実上当事者能力を失っていること、先のみえない莫大な除染費用や被災者への損害賠償が重くのしかかっていることで、これまた事実上、経営破たんしているからだ。

 あまつさえ、いくらかかるかすらわからない莫大な廃炉費用も今後発生する。このままでは東電が八方ふさがりに陥ることは必至。

 これらのことから、大株主の政府としても、放置できない状況に追い込まれている。通常なら、そして筋としては会社更生法に基づく強制的な、つまり法的な破たん処理により、経営責任や株主責任を問うべきところである。

 しかし、社会的な影響が大きすぎて、政府としてもとてもそんな処理はできない、というのが現状だろう。

 ● 脱原発を前提にした分社化案

 汚染水問題が浮上する半年前までは、金子勝慶応大教授(財政学)もいったん破たんさせて、経営責任、株主責任を問うべきだとしていた。しかし、最近では、

 原発依存度ゼロという脱原発に舵を切ることを前提に、

 分社化案

を提案している(中日新聞2013年11月8日付「特報」面= 写真)。今の東電を原発事故処理に専念させ、送電・発電部門を新会社に移すという案である。優良会社として新株を発行し、その利益で借金を返済する。

 一方、国営化のまま旧東電として残った会社は、ほとんど収益はない。これをどうするかがポイント。これには、

 脱原発で財源を生む

というのだ。

 具体的には、電力各社は使用済み核燃料を再処理する費用として今まで合計2.6兆円積み立てている。これが脱原発で要らなくなるので、これを活用する。政府ももんじゅ、六ヶ所再処理工場建設稼働など核燃料サイクル費用を毎年数千億円拠出している。が、これも脱原発で国営化の旧会社の財源として組み入れるという。

  金子案は、財政学の専門家らしく、財源を明示した上で分社化を提示しており、説得力がある。今後、多角的に妥当性を吟味する価値があるだろう。

 ● 再稼動を前提にした分社化案

 Imgp1790 これに対し、同じ分社化案でも、こうした原発事故処理会社として残る旧東電の財源として、

 再稼働で財源捻出

という選択肢を提案しているのもある。保守系オピニオン誌「WEDGE(ウェッジ)」2013年11月号に掲載された

 東京電力を分割し/再稼動で財源捻出を

という主張だ(石川和男/政策研究大学院大学客員教授)。東電分割後の財源論として「合理的で現実的な事故処理体制」と銘打っている。

 この再稼動前提の分社化案でも、金子案同様、事故処理は国営化旧東電が担う。ただ、分社化した後に残る旧東電の財源論が異なる(再稼動分社化案では、再処理積み立て費用やサイクル費用は財源として旧東電に当然組み入れられない)。

 いずれの場合も、当然だが、大幅な法改正は避けられないが、財源論から言えば、

 再稼動分社化案は、電力会社に好都合

な法改正になる。

 ● 財源論を伏せた持ち株会社案

 最後に、分社化をしない、つまり現状維持に重きを置いた持ち株会社案として、同じ「ウェッジ」号の「WEDGE OPINION」欄に5ページにわたって掲載されている

 Imgp1799 民間シンクタンク「21世紀政策研究所」研究主幹、澤昭裕氏の

 事業環境整備法案

がある。この案では、東電は持ち株会社として当面は生き残る。

 事故処理については、当面、子会社化で対応する

としている。

  この案は、事故処理、賠償などのバックエンドについて官民一体で新設の政策本部で実施するとしている。つまり、制度全体における東電の位置づけが、財源論も含めてきわめてあいまいなままなのが難点。その分、責任の所在があいまいになる。

 タイトルには「総合的に解決する」案となっているが、その分、むしろ、東電にとっても、電力業界にとっても、好都合なのだ。というのは、重荷になっているところだけを切り離し、政府、つまり、国民に押し付ける仕組みなるからだ。つまり、貸しがね棒引きといった財界、金融機関(や電力業界)の痛みが最小限になるような環境整備案なのだ。

 財源論に踏み込まず、あえて伏せたままのこの民間シンクタンク案を、業界系の「ウェッジ」が、大々的に、しかも早々と、公正であるかのようなオピニオンとして取り上げたのも無理はない。

 ● 東電自身は〝社内分社化〟検討

 以上、3案を論じたが、東電自身は別法人ではなく

 社内分社化

を検討しているらしい。この強気の背景には、昨年、一般家庭で約8%電気料金を値上げした東電だが、この9月中間決算で約1400億円超の黒字を出していることがあろう。事故後も〝りっぱな〟黒字優良企業なのだ。

 これに対し、値上げに踏み切っていない中部電力は、依然として約270億円の赤字を計上している。

 ● 自民党も分社化案を首相に

 自民党の検討部会(本部長・大島理森前副総裁)も、この9月下旬、廃炉作業を進める東電分社化案を安倍首相に提出している。

 こうした政治的な動きは、今後ますます盛んになるだろう。事故原発だけでなく、日本一危険な浜岡原発でも、規制委からの強制廃炉などで起こりうる共通の問題である。

 それだけに、このブログでも、東電の行方について、刑事責任も含めてきちんとフォローし、国民の側に立つ視点から、あるいは東電の経営責任をあいまいにしない観点から、私見を述べていきたい。

 ● 補遺 電力会社はなぜ再稼動を叫んでいるか

 これについては、現行会計制度、つまり総括原価方式に電力各社が縛られているからだといえる。

 仮に、40年運用可能な原発を、30年で廃炉にしたとすると、残り10年分を一括した

 減価償却費用

を廃炉時点で計上することが税法上必要になり、債務超過に陥る可能性があるからだ。

 これに対し、再稼働(そこまでいかなくても〝休炉〟扱い)にしておけば、税法上、減価償却費用として電気料金に上乗せできる。これは大きな違いである。運転維持費も、停止中でも顧客の電気料金に含めることができるというメリットもある。

 こうした事情から、少なくとも、廃炉促進には、この税法上の仕組みを、先の例で言えば、残りの10年間に分割計上できる仕組みにするよう法改正をする必要があるだろう。この改正のミソは、改正しても長期的には国民の負担がほとんど改正前と変わらないことだ。

 今後、硬軟取り混ぜ、事故の刑事責任の追及とともに、電力各社に引導を渡す仕組みづくりも必要である。 

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