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記者に「善魔」の覚悟はあるか

(2013.11.25)  少し古いが、新聞記者を主人公にした映画

 「善魔」(木下恵介監督、1951年)

というのを、BS日テレで見た。木下監督がブログ子の暮らす浜松市の出身でもあり、また記者役の三國連太郎のデビュー作というので、興味を持った。

 感想を一言で言えば、なんだか、『罪と罰』のドストエフスキーの世界を描いたような暗い作品だった。

 内容的には、

 社会の木鐸(ぼくたく)たらんとする新聞記者は、悪魔では話にならないだろうが、それでは

 善の魔、つまり善魔か

というのがテーマ。善魔とは、目指す目的では道徳的に正しいのだが、手段を選ばないという行動の結果、周りに害を及ぼす。これに対し、悪魔は目的自体が道徳的にみて人間性に欠け、行動でも害を及ぼしたり悪事を平気でしたりする。

 映画では、善良な主人公の新米記者、その上司が善魔役という設定。その間の対立と葛藤を、汚職や男女関係をからめて描いていた。

 この映画で、木下監督は設定したテーマに対して、何を訴えようとしたのか、どうも判然としない。

 しかし、新聞社で論説委員をつとめたブログ子に言わせれば、

 目的も手段も善良では、新聞記者は失格

ということにつきる。善良では、とても権力の巨悪に立ち向かうことはできない。

 したがって、

 巨悪をあばかんとする記者は善魔に甘んじる覚悟が要る

ということを主張したい。

 木下監督の作品には、この映画もそうだが、善良そうな主人公が登場することが多い。しかし、それを必ずしも評価しているのではなく、そんなのでいいのかということを、せりふではなく映像で伝えている。だから、台本を読むとつまらない。しかし、映画自体はすばらしいということがちょくちょく起きる。

 ブログ子は、これを反語的な映画と読んでいる。

 たとえば、「笛吹川」(1960年)という映画。善良な農民に温かいまなざしを送ってはいるが、そんなんでいいのか、あまりに愚かではないのか、という監督の声が聞こえてくる。この映画は、60年安保の年に公開されており、国民の覚醒を促した静かなる反戦映画である。

 さて、記者は善魔に甘んじる覚悟が要るという話に戻る。

 覚悟とは、法令違反は論外だが、手段を選ばないということはいいことでは、もちろんない。が、時と場合によっては、記者の役割としては、やむを得ないという意味だ。

 時と場合によっては、というのは、巨悪をあばくことによる国民の利益と、その手段がえげつないことによる周りへの悪影響のデメリットの比較考量によっては、という意味である。

 この意味で、1970年代に起きた沖縄密約をめぐる元毎日新聞政治部記者、西山太吉氏の行動は、最高裁で有罪が確定したものの(1978年)、

 国民の知るべき権利の行使において自覚と覚悟を示した善魔

だったと、その正当性を支持したい( 注記 )。

 「ひそかに情を通じて」(起訴状)密約情報を得たのは、社会的には好ましいことではない。外務省の国家公務員だった相手の女性に多大な迷惑をかけたことは事実。しかし、東京地裁判決のように、違法性があるとまではいえないとすべきであった。

 最高裁は、西山氏の行動を相手の女性の基本的人権を踏みにじった行為と認定したが、これは法律論を盾に取った因縁づけ、あるいは法律論的な言いがかり、はっきり言えば、ある意図をもったこじつけであろう。

 ● 「著しく不当な取材」とは何か

 今月に入って、外交、軍事、テロなどの分野で、安全保障上から

 特定秘密保護法案

の審議が始まった。知る権利との関連が問題になっているが、ここでも、国民の知る権利を確保する、あるいは行使には、新聞記者には、法案が廃案になろうと、成立するとすれば、なおさら、

 善魔の覚悟

が要る。

 というのも、今回の法案では、第21条に、

 国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない

と努力義務が明記されてはいる。しかし、

 その2項には

 取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする

となっているからだ。

 この場合の

 著しく不当な取材

とは何かが、あいまいなのだ。「著しく不当な」というのは、違法ではないが、倫理的に判断して非常識な、という意味だろう。 

 そうだとすると、国家公務員法の守秘義務違反と人権侵害が問われた西山事件の場合、国家公務員員法ではなく、もし仮にこの法律が適用されたとしたら、無理やりのこじつけではない明文規定がこの法案にあることから、より重い罪に問われることになるだろう。

 こうなると、法律の縛りで情報提供自体が受けにくくなる。このこととも重なって、記者は善魔だとはいってみても、ますます巨悪はあばけなくなってしまう恐れがある。比較考量の点から考えても、あまりにも重大なデメリットを招くことになりかねない。

 ● 公開法と保護法のセット

 だから、廃案にするのも手だが、ほかにどんな対案があるか。

 知る権利を担保する現行の情報公開制度は、個人情報保護法と10年前に施行された情報公開法があり、公開と保護のセットから成り立っている。公開法では、公文書が対象であるが、軍事、外交、警察、治安などの分野は、非開示として除外されている。

 これが不備というのなら、公開法の非開示のあり方をまず論議すべきではないか。これには公開法をいくらいじっても、国家機密があばかれるはずはないとの異論がある。原則公開の公開法と、原則秘密の秘密保護法は水と油のかんけいというわけだ。本当か、どうか詰めた議論が必要であろう。

 Bs1wave20130703_03 なぜなら、個々の開示では機密ではないが、それらの開示請求で得られた情報を組み合わせると巨悪が浮かび上がって来ることがあるからだ。当然、一定の限界はあるものの、田中元首相の金脈をあばいた立花隆氏の調査報道法は参考になる。

  また、たとえば、ビッグ・データ時代を反映して、こうした新しい手法を駆使した調査報道に対して3人の記者に米ピュリツァー賞(国内報道部門)が贈られるなど、最近のアメリカ・ジャーナリズム界でも注目されている( 写真。注記2 )。

 ● 巨悪に立ち向かう「罪と罰」

 西山さんは、おそらく日本で初めて国家機密そのものに切り込み、国民の「知る権利」の行使者になった記者だった。

 秘密保護法案のない時代ですら、西山さんが有罪になったことを思うと、法案の行方にかかわらず、国家権力や巨悪に立ち向かう場合の「罪と罰」では、記者には、

 葛藤をかかえる善魔の覚悟

が要る。このことだけは、確かである。

 以上の理由により、ブログ子は特定秘密保護法案に反対する。今後、その国会での行方を注視したい。

  ● 注記

 西山太吉さんの事件では、自身による

 『沖縄密約 「情報犯罪」と日米同盟』(岩波新書、2007年)

がある。これを読むと、国家の隠蔽体質のすごさがまざまざと伝わってくる。特定秘密とはいえ、これ以上の機密保持法は、国民の知る権利にとって、そして国民の安全保障にとって、メリットよりも、より大きなデメリットを生むことになるだろう。

  ● 注記2

  詳しくは、2013年7月3日放送の

 BS1「ワールドWave Tonight」ザ・フォーカスのコーナー=

  アメリカのジャーナリズム最前線=

  http://www.nhk.or.jp/worldwave/marugoto/2013/07/0703.html

を参照してほしい。写真は同コーナー画面から。

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