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常識を疑おう 桑田真澄『スポーツの品格』

(2013.11.19)  集英社の読書情報誌「青春と読書」の最新11月号を見ていたら、巻頭の「今月のエッセイ」欄に

 Imgp1886 進化と伝統

というのが出ていた( 写真上 )。プロ野球選手であった桑田真澄さんのものである。その冒頭は

 「常識を疑おう」

というもので、このブログの趣旨、一度は常識を疑おうにかない、何事かと読んでみた。

 ● いい伝統、わるい伝統

 桑田さんは、今年春から、東大野球部の特別コーチを引き受けているのだが、東大は六大学野球では、これまで優勝どころか万年最下位に近い。

 同じことを続けていては、これからも最下位という結果は変わらない。優勝したいというのなら、これまでの野球の常識を疑って、いままでやったことのない思考と行動をしようと、うながした。

 このコラムというか、論説の言わんとするところは、

 野球の伝統にもいい伝統とわるい伝統がある。その選択と集中で効率的に、そして合理的に練習をしよう

ということだった。わるい伝統とは、今社会問題になっている体罰や暴力沙汰のことであり、その背景にある勝利至上主義。いい伝統とは、グランドの出入りでは帽子をとって礼儀正しくあいさつをすることなどだ。

 技術や道具も進化しているのに、わるい伝統だけが足踏みしていていいのか、という苛立ちがある。

 そんな折、スポーツ社会学が専門の知人が、桑田さんの書いた

 近著『スポーツの品格』(集英社新書。桑田真澄/佐山和夫。写真下)

をぜひ、読んでみたらいいとすすめられた(佐山さんはスポーツ史研究家)。以前、このブログで書いた、

 Imgp1887_2 人はなぜスポーツをするのか

を読んで、批評していただいたせいだろう。また、

 体罰はなぜなくならないか

という問いかけでもいろいろご教示をいただいたからである。

 早速、読んでみたが、その内容は、確かに、常識を疑おうという呼びかけにふさわしいものだった。しかも、桑田さんの野球人生の体験に裏打ちされたアドバイスが至るところに披瀝されていた。

 勝利至上主義を抜け出して、競技力を伸ばすには、殴らない、怒鳴らない、押し付けない、無理をさせない-この4つの「ない」だというのだ。

 ● あの感動の「星飛雄馬」は要らない

 勝利を目指すプロセスを大事にすることこそ、スポーツの喜びであり、品格である。この品格と喜びが競技力を大いに高める源泉になる。監督やコーチにビクビクの野球では本当の競技力は伸びない。縮こまり野球になるからだろう。

 これが常識を疑おう

の中身だ。

 だから、高校野球に代表的に見られるような「負けたら終わり」というようなトーナメント方式はやめるべきであると主張している。負けても次に教訓を生かせる仕組みこそ、高校野球にふさわしいというわけだ。

 投手についても、体を壊さないよう投球数制限をすべきだとも根拠を示して論じている。根性野球という悪しき伝統はもうやめるべきだというわけだろう。はっきりいえば、

 あの感動の巨人の星、星飛雄馬は要らない

というところだろうか。巨人軍の名投手だった桑田さんだから、これは説得力がある。

 勝利至上主義に走りがちな、そして過去の自分の体験を押し付けがちなスポーツ指導者にとって、真摯に耳を傾ける価値のある筋の通った話であると思う。

 ● 東大野球部が優勝する日

 スポ根ではなく、効率的で合理的な練習で、東大野球部が優勝する日が来るのを楽しみに待ちたい。 

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