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失敗作の2足歩行進化 新しいヒト文明観

Imgp1503 (2013.11.04) 人類が歩んだ500万年の進化の歴史は、生物のなかで最も高度なものであるとほとんどの人は信じ、それを疑うのはまれであろう。

 垂直に立ち上がり2足歩行するようになったからこそ、大きな脳を持つようになったホモサピエンス。生物進化のメインストリートとは、2足歩行の人類の登場と、その後の脳の巨大化の道のりのことであるさえ人は思っている。

 だから、神の姿に似せた自分たちの存在は生物界の最高傑作と、ほとんどの人は考えるまでもなく当然のこととして了解している。

 果たして、この人間中心主義的な人類進化観は正しいのであろうか。文化の日にあたって、新しい文化論として、この問題に立ち入って考えてみたい。

 結論を先に言えば、さまざまな動物の解剖学的な人体内部構造論からみると、垂直に立ち上がり、2足歩行への道のりを可能にする人体の設計図の変更に次ぐ変更は、結局

 行き詰った、つまり後戻りのできない失敗作

ではなかったかというものだ。

 少し詳しくこの結論を解説すると、内部構造論からみると、サルからヒトへ、重力に逆らって垂直に立ち上がり、脳を巨大化させた進化には、それらの代償として、人体の設計変更だけではどうにも対応できない無理、つまり腰痛、股関節痛、ヘルニア、心筋梗塞、脳卒中、貧血などさまざまな現代文明病が人体を苦しめている。

 物理的な面だけでなく、精神的にも、脳の急速な巨大化の代償として、心臓病だけでなく巨大脳の防御反応に起因する「うつ」が人間を痛めつけている。

 2足歩行のメリットは手が自由になったことのほか、気道が開き、さまざまな発声が可能となり、言語コミュニケーションができるようになったことが挙げられる。このことが脳の巨大化を加速させたとも考えられる(500万年で、脳容量は約400ccから約1200ccと3倍にもなった) 

 ● 設計変更に行き詰まり、現生人類も絶滅する

 Imgp1497_2 こうした結論に達したのは、ひとつには、NHKのシリーズ特集「病の起源」をみたことがある。先週も、心筋梗塞などの心臓病の起源として、重力に逆らって立ち上がったことが挙げられていた( 注記 )。

 もうひとつは、大きな影響を受けたのだが、

 『人体 失敗の進化史』(遠藤秀紀、光文社新書。2006年)

に出会ったことである。遠藤氏は、国立科学博物館で活躍してきた動物遺体解剖学者(現在京大教授)。C.ダーウィンのような動物の外側からの外観観察からではなく、解剖学的な考察がこの本には書かれていて、面白い。

 遠藤氏は、ヒトの未来はどうなるかについて

 「遺体解剖で得られた知をもって答えるなら、やはり自分自身を行き詰った失敗作ととらえなくてはならない」

と不気味な予測をしている。つまり、巨大脳を持ったことが結局は取り返しのつかない失敗を生み出すことになり、人類は終焉を迎えるという。

 この遠藤説をはっきり言えば、設計変更の失敗により、500万年前にアフリカから始まったホモ・サピエンスの進化のうち、たった一つ生きながらえてきた現生人類も、やがて絶滅するに違いないということにほかならない。

 となると、無限の可能性が秘めているせっかく脳の巨大化をいかに上手に活用するか、ここに人類の未来がかかっている。

  裏を返すと、遠藤説は、巨大脳の生み出す現代文明が、設計変更の行き詰まりを一層加速しているという困った今の状況に対する警告でもあろう。

 ● 主体性の進化論  ヒトはなぜ2足歩行を始めたか 

 最後に、人体の内部構造的には無理なのに、あるいは必然性はないのに、ヒトは、なぜ2足歩行を始め、それを維持し続けたのであろうか。

 あえて言えば、生物学者だった今西錦司さんではないが、環境に逆らっても、生きながらえるために、環境に唯々諾々と振り回されることなく

 自らの主体性

を貫いたからであろう。突然変異を通じた親から子へ、そしてそれが種内に広がっていくという設計変更の環境が整うのを待つことなく

 起こるべくして一斉に種内に2足歩行が起こった

のではないか。突然変異など待ってはいられない。それでは種は生き残れない。いわば主体性の進化論である。

 このことはなにも巨大脳のヒトだけでなく、すべての生物の進化で、大なり小なり主体性はおこったにちがいないとブログ子は思う。

 生物には、人間同様、主体性がある。

 人体は最高傑作などではなく、むしろ早晩、絶滅の運命にある失敗作。設計変更の失敗作の代償として手に入れた大きな脳。環境に振り回されることなく、この脳で主体性を発揮する。そこから、謙虚で、新しいヒト文明観が生まれるように思う。

 

 (トップの写真は、「週刊文春」2007年10月18日号「CATCH UP」 スクープ撮 !!  2足歩行進化論より。東山動植物園(名古屋市)の綱渡りするゴリラの様子。ヒトに比べて、異様にヒップが小さいのが気になる。このことは、ゴリラがそもそも2足歩行に適した動物ではないことを示している。2足歩行にはヒップにある大臀筋の発達が不可欠)

 ● 注記

 Imgp1498_2 病気というものを、その動物の進化から、特にダーウィン進化学から考察したものに

 『進化から見た病気 ダーウィン医学のすすめ』(栃内新、ブルーバックス。2009年)

がある。生活習慣病、感染症、遺伝的な疾患について、2足歩行と関連付けて紹介されている。

   

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