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続 陸に上がるシャチ 実は-

(2013.11.15)  先日11月8日付のこのブログで、

 陸に上がるシャチ

というのを取り上げ、いずれシャチは陸上を歩き始めるのではないかと書いた。

 ところが、これを読んだ生物学に詳しいある読者から、メールで

 進化的には、その逆ではないか

との指摘を受けた。

 Image1935 つまり、もともと人間と同じほ乳類で4足歩行していたものが、再び海に生息の場をもとめて海に戻るというか、再び進入していったのが、今のシャチだというのだ。

 海にいたのが陸に上陸しようとしていたのか、陸にいた哺乳動物がなぎさから海へと進化したのか。

 件の読者は、このどちらかというのは、現在のシャチの内部構造的な解剖学知見から、今のシャチはもともと陸にいたという。

 そう考えたら、シャチのあの見事な狩りは説明できる。

 その読者は、なんと、わざわざシャチについての生態写真集を送ってくれた。

 それが、写真の『オルカ』という本である(1997年。プロトギャラクシー社発行)。

 そこにはブログで紹介したアルゼンチンのプンタノルテ海岸での狩りの様子についてもより詳しく解説されていた。

 シャチ(この本ではオルカと呼んでいた)については、

 今のシャチはかつての4足歩行の陸上ほ乳動物が海洋に再び進出し、進化した結果

というような書き方になっていた( 注記 )

 数千万年という気の遠くなる遠い祖先が陸上で狩りをしていたことを、その高い知能のおかげで、プンタノルテ海岸のシャチは忘れていないのだろう。

 そうもとれないことはない。ともかく、ブログ子のあのブログで言いたかったのは、

 生物は、変わるべき時が来たら、海の中であろうと、なかろうと一斉に後戻りのできない進化をする主体性を持っている

ということだった。当てにならない突然変異など悠長に待ってなんかいない。それでは種は絶滅してしまう。このことについては、件の読者にも理解していただけたのは、よかったと思っている。

 何度も言うようだが、世の中には鋭い読者がいるものだ。

  ● 注記 主体性の進化論 2013年11月16日記

   逆システム学の考え方からの考察

 もう少し、詳しく言うと、

 シャチなどクジラの仲間の進化というのは、魚類などもともと海に生息していた生物が陸に上がり、今から1億2000万年前ぐらいに、同じほ乳類であったものがクジラの仲間へと進化するものと、人間へと進化するものとが分かれた。

 その分かれ道にいたのが、鼻が前にとんがって突き出ている小さな、たとえばトガリネズミといったほ乳動物の仲間。食虫の小動物だったという。

 クジラの仲間へと進化するものの一部が、ふたたび海へと進出していった。

 その時の様子を、『オルカ』の<クジラ類の進化>の項目では次のように記述している。

 「新しいクジラ類の系統は、ほとんど未開発の海の生態を侵略したのです。最初はためらうように赤道付近の海岸の浅瀬で生活していましたが、時間の経過とともに、徐々に完全に水生動物として生活するようになりました。」

 それがシャチであり、その内部には4足で歩いていた時代の骨格、つまり骨盤の痕跡が今も残っている。シャチには後ろ足はないが、これで後ろ足があったことがわかるらしい。ほ乳動物の証明である毛も胎児にはある。

 シャチなどのクジラの仲間の祖先は、かつては進化の過程で海中だけでなく陸地でも4足で生活していたことがうかがえる。

 そのなごりで、厳しい環境のパタゴニアでは「陸に上がる」狩りをするのであろう。

 とすると、かつてクジラの仲間は温かい赤道の浅瀬から次第に海中に新天地を求め、体制を変化させていったように、寒いパタゴニアの海岸のシャチも、エサを求めて、再び陸地を目指すというダイナミック可能性もあることになる。

 このダイナミックな可能性を切り開くのは、悠長な突然変異などではなく、シャチの持つ個体としての判断力ではないか。

 もっと言えば、ヒトがあるとき、つまり樹上生活からサバンナに降り立ったとき、一斉に重力に逆らってまで直立2足歩行を決意したように、シャチの場合も、個体自身の持つ主体性だといえまいか。

 この主体性のもとに、それまでの進化の過程で生殖細胞に蓄積した突然変異などの調節塩基配列が一斉に、たとえば多重フィードバックで動き出し、ある一定の体制づくりに収斂していくと考えたい。個体は、いつ現れるかも知れない気まぐれな自然界の突然変異など待ってはいない。

 これが分子レベルで見た、あるいは発生学的に見た進化ではないか。

 この考え方をブログ子は、ダーウィン進化論に対置すべき、主体性の進化論と呼んでいる。

 この実証的な検証には、個体の体制をつくりだす、つまり発生生物学的な見地からの生物進化の研究が必要であろう。

  図による追加的な説明。

 以上のことを発生生物学的な図にすると、次のようになる。

 Imgp1823_1

 この図で、赤く「進化」とあるのは、もちろんダーウィン流の

 環境による自然選択

である。これに対し、主体性の進化論では

 個体による主体選択

である。

 そして図の下部の薄い青色の「遺伝子や細胞のはたらき」というのは、

 「遺伝子や細胞の働きによる多重フィードバック」

ということになる。

 問題は、どのように

  個体による主体選択と、遺伝子や細胞の働きによる多重フィードバック

が結びついて、発生過程で次の世代の生物個体の体制が形づくられていくのか、ということである。

  結論を先に言えば、それは主体性という精神活動は、その生物体内の生理を通じて、卵子、精子、胚といった遺伝にかかわる生殖細胞に影響を与えるというメカニズムである。

 どういうことかというと、東大医学部の児玉龍彦教授の『逆システム学』(岩波新書、2004年)という本によると

 「生命の本質的なあり方は、調節制御が重なった多重フィードバックだと考えられるようになってきた」

と書いている。細胞内での閉じないフィードバックの働きこそが生命システムの本質だというのだ。

 では、具体的に細胞の中で何が起こっているのか。そのことについては、

 「それ(多重フィードバック)は遺伝子だけでは決らない。(たとえば、細胞内の)実際のコレステロールや、その材料や、代謝産物の量によって決るからである。ゲノムはすべてのプログラムを持っているわけではなく、(細胞核のゲノムにある)遺伝子と調節配列が(細胞質にある)センサー蛋白や調節配列蛋白と(で)フィードバックを作るようにさせ、多数のフィードバックの重なりで、生命を制御するプログラムを構成させていると考えられるようになってきた。」

ということになる。ゲノムだけでは、次の世代の体制、つまり体の内部構造のすべて、つまり細部構造までは決らない。

  このように、そして図にも示されているように、個体発生は遺伝子だけでは決らない。また遺伝子と、その残りのゲノム、つまり調節塩基配列の2つだけでも決らない。それらの入れ物である細胞という後天的に構成される生殖細胞の内容物にも個体発生は依存する。

 次世代の体制などの個体発生は、(生殖細胞内の)遺伝子の働きと、調節塩基配列の働きと、生殖細胞内の内容物を取り込んだ多重フィードバックの働き

という3つの働きによって決る。

 これからわかるが、上記の「個体による主体選択」は、分子レベルでは、選択にともなって後天的に構成される生殖細胞の内容物を決めることになり、それが収斂の多重フィードバックに影響を与え、最終的に発生段階で体制を決めることにつながる

というのが、主体性の進化論の分子レベルでのポイント。

 念のため、個体レベルから見た言い方は以下である。

 個体レベルの「主体性の進化論」のポイント、つまり、種は変わるときが来たら、突然変異なんか待たずに、一斉に変わるべくして変わるというポイントは、分子レベルで言えば、そして発生生物学的に言えば、生殖細胞内の多重フィードバックの結果であろう。親から子への突然変異の積み重ねの結果、つまり自然選択の結果ではない。

 樹上を降り立ったヒトたちが、突然といってもいいくらい短い期間で、しかも一斉に垂直2足歩行し始めたのも、これであろう。立つべくして立ったのである。悠長な、そして気まぐれな突然変異など待っていては、種は絶滅してしまう(もっとも、変わるべくして変わるといっても、物理学的に不可能な体制への個体による主体選択は、愚かであり、当然だが絶滅の道である。このように変わるべくというのにも、それぞれの進化段階ごとに決められた一定の限界がある)。

 シャチの行動も、きっとこれに関係があるに違いない。

 シャチには、かつてのヒト同様、

 個体による主体選択

があったと思う。

 なお、この「注記」の後半、発生生物学的な考察におけるフリップ図や以下の鶏卵の写真は、

 放送大学特別講義「細胞の声を聞く」(高橋淑子京都大学大学院教授)のBSテレビ画面(2013年11月16日放送)より。

Imgp1808_1_1

 ( 図や写真は、それぞれのダブルクリックで拡大できる ) 

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