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映画「渡されたバトン」  原発住民投票の総意は未来への遺産

Imgp1458_1 (2013.10.27) 最近、公開された映画「渡されたバトン さよなら原発」を「シネマ イーラ」(浜松市)で見た。映画シリーズ「日本の青空」の第3弾であり、つくづく 

 原発計画や建設をめぐる立地自治体の住民投票の総意は、たとえ法的な拘束力はなくとも、結局は目先の利益にとらわれない貴重な英知、つまり「未来への遺産」

だと感じた。どう選択するか、その総意づくりは、数十年にわたる住民の、そしてまた家族のバトンリレーから生まれる地域の財産だといえる。総意は一代で築けるものではない。そのことを分からせてももらった。

 ● 新潟県巻町が舞台

 映画の舞台となったのは1970年代初めの新潟県巻町(現在新潟市)。

 ストーリー展開では、主役が推進派であるなど原発推進派の動きをメインにすえている、推進派と反対派の対立とともにそれぞれの住民の心の中の人間らしい葛藤とその変化を巧みに描いているなど、映画がウソっぽくならないよう、また展開が平板にならないよう工夫されていた。一言で言えば、ジェームス三木さんらしい脚本力に感心した。その脚本力が映画に説得力を持たせていた。

 幾多の紆余曲折の後、1996年8月、町議会が決めた住民投票で、その総意が「計画反対」(61%)であることが明確に示された。このことから、状況は大きく動き出す。

 30年にわたる原発建設をめぐる賛否の争いにおいて、総意が明確になった7年後、最終的にダメ押しとなったのは、電力会社が起こした町有地売却訴訟。2003年、最高裁決定(電力会社側の上告棄却)で会社側の敗訴が確定したことだった。この法的拘束力のある結果を受け、建設に不可欠の用地買収に失敗した東北電力は計画を公式に断念した。

 ブログ子は、金沢在住時代の1990年代、珠洲原発計画(能登半島突端の珠洲市高屋地区、中部電力)の現地を何度も現地取材した。しかし、肝心の立地住民の総意が一度も明確に示されることなく、そして賛否で市が二分されるなど翻弄され続けた果てに、そして電力側の起こした市長選無効訴訟の挙句、計画が電力会社の都合だけで一方的に凍結という形で、事実上断念された後味の悪さをこれまで感じていた。地域振興協力金、たしか27億円を電力会社側が市に支払う形で〝手打ち〟となった。電力側の断念が公表された巻町と同じ、2003年のことだった。

 ● たとえ法的拘束力がなくても

 しかし、住民の総意が示されていないことで、この凍結が、原発をめぐる今後の状況の変化で、いつ解凍されるか分からない宙ぶらりんの状況が、珠洲市では今も続いていることに変わりはない。

 同様に三重県の伊勢湾に面する芦浜地区の原発立地計画(中部電力)も、いつ計画が電力会社の都合で凍結が解除されるか、不透明である。5号機などトラブル続きの浜岡原発を補完する芦浜計画は、すでに電力会社による用地買収は完了しているからだ。

 事実、福島原発震災の直前、原発比率を50%以上と現状より大幅に高めたいとして、計画の地元説明会などの再開を公表する社内準備に入っていたとされる。

 それだけに、この映画の舞台となった新潟県巻町の住民の意志表示は、法的拘束力がなくても大変に貴重な成果であると、いまでもブログ子は思っている。

 ● 静岡県も試金石の県民投票条例づくりを

 巻町、珠洲市、立地自治体のまたがる芦浜地区の苦い経験は、静岡県の浜岡原発再稼動にとってもきわめて重要である。

 すなわち、巻町と人口が同規模の立地自治体の御前崎市(約3.5万人)の住民の総意も、投票条例で確かめておく必要があろう( 注記 )

 さらに、南海トラフ巨大地震が予想されており、浜岡原発は日本一危険な原発である。巻町とは事情が異なるこの点を考慮すると、再稼動の是非について県民の総意を明確にするための県民投票条例の制定も県議会に求める再度の請求署名運動に力を注ぎたい。

   この結果には法的拘束力はないが、この総意を無視して県知事が、再稼働の条件である「同意」を表明することは、現実にはよほどの理由がない限り、困難だろう。

 このことは、映画ではほとんど触れられていなかった共有地主会など実力反対闘争や活動家の動きを無視してよいということではない。住民総意があってのものであり、それらの活動には成果を上げる上で、一定の限界があったことを映画は物語っている( 補遺 )。

 その意味で、御前崎市や県全体での住民投票条例づくりができるかどうかは、行政の「同意」を阻止する県民の拒否権行使をあらかじめ担保する試金石である。

 目先にとらわれて、未来の安全に目をつぶる者は、原発をめぐる過去の教訓にも無知である。

 映画を見終わって、そんな確信をいだいた。

  ● 注記

 投票条例にもとづく結果ではないが、直近の御前崎市長選での出口調査では、

 「永久停止・廃炉」が29%、「しばらく停止継続」23% 合計52%

  これに対し

 「安全点検後再稼動」は35%(地元中日新聞系の2012年4月16日付東京新聞朝刊)。

 この結果は、巻町の住民投票結果

 原発建設反対= 61%、賛成= 39%

と似た結果になっている。

 つまり、ともに原発に疑問を持つ住民が、そうではない人たちの2倍近くいる、しかも疑問住民が過半数という結果になっている。 

 ● 補遺

 Imgp1496 巻町を含めて、全国の実力原発反対闘争がどのようなものであったのかについては、当事者側の

 パンフレット「「3・11までの原発反対闘争」は全国でどのように闘われてきたのか」(片岡謙二、2012年8月)

が詳しい。発行者は、8・6広島-8・9長崎反戦反核闘争全国統一実行委員会(東京都千代田区、「編集工房 朔」)。

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