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何を意味する「核不使用」国連声明

Imgp1462 (2013.10.24)  最近、国連総会の軍縮委員会が、

 いかなる状況でも核兵器が二度と使われないことが人類の生存そのものにとって利益

と強調した共同声明を発表した。当たり前である。しかし、核廃絶を目指す日本はこれまで、アメリカに遠慮して、この声明には賛同していなかったというのには、びっくりしてしまった。今回初めて賛同することにしたという。

 ● 北朝鮮は賛同せず

 もう一つ、笑ってしまったのは、核兵器保有国のアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国などが賛同していないことだ。

 ある意味、当然かもしれない。

 Imgp1459 核保有国は自衛の、それも存亡の瀬戸際での最後の手段として使用するというのだろう。自衛のための核兵器というわけだ。これを分かりやすく言えば、脅しのために持っているというわけだ。

 そんななか、これまでの日本は核を持っていないのに、使用してはいけないという声明には賛同してこなかったという〝変な〟国だったのだ。普通じゃない。世界から、日本は国内で有余っている大量のプルトニウムでいつかは核兵器をつくるのではないかと疑われてきたのも無理はない。

 あれこれ考えると、結局、核兵器を持っていない国ばかりが、賛同する〝変な〟声明なのだ。

 となると、この共同声明にはどんな意義があるのだろう、とは誰しも思う。

 しかも、賛同したからといって、なんの法的な義務も拘束力もない。こんな声明で核廃絶など実現できるわけがない。単なる紳士協定にすぎない。一見、無意味な声明のようにみえる。

 そんな思いで、しばらく考え、共同声明に賛同するかどうかというのは、核兵器保有疑惑国をあぶりだす「踏み絵」なのだと、ようやく気づいた。

 そういえば、北朝鮮も賛同していないし、インド、イスラエル、イランなども賛同していない。

 被爆国、日本は、これまでこれらの仲間に入っていた〝変な〟国だったのだ。

 ● 原水爆三部作を読む

 そんなことを思いつつ、読書週間でもあり、夜長、このブログにかかげたような原爆、水爆開発関連の本を何冊か、しみじみと読んでみた。

 Imgp1464

 これらの浩瀚な本を読むと、1950年代半ばでは全面核戦争が今にも起こりそうだという恐怖が現実味を持って語られていたことがわかる。この恐怖を背景に米ソともに原爆よりもさらに強力な水爆開発に熾烈な競争を展開していた。

 『スターリンと原爆』によると、原爆開発の戦後の国際政治への影響について、スターリンは広島に投下されるまで十分理解していなかった。

 また、猜疑心の強いスターリンが存在しなかったと仮定しない限り、戦後国際政治の冷戦構造の現実には大きな変化はなかったであろうとも、著作者の高名な国際政治学者は結論づけている。つまり、戦後の冷戦にはスターリンの個人的な性格が色濃く反映されていた。

 このことは、アメリカ側についてもいえよう。つまり、当時大統領だったH.トルーマンの個人的な性格もまた冷戦に大きな影響を与えたとブログ子は思う。小心であるがゆえに、それを隠すために強気で押しまくった。

 ● ソ連科学者は水爆の国際共同管理を模索

 一方、政治家だけでなく、科学者たちも冷戦で翻弄される。

 核科学者、たとえば、ソ連では水爆の父、I.クリチャートフ博士やアメリカの原爆の父、R.オッペンハイマー博士、水爆の父、E.テラー博士たちが国際政治に振り回されつつも、時間との競争の中で核開発にまい進する。あるいはさせられた。ソ連のサハロフ博士など一部の科学者を除けば、良心の呵責をうんぬんする暇などなかったであろう。科学者のスパイ活動など科学と政治をめぐる生々しい人間ドラマの息遣いがこれらの著作から今も伝わってくる。

 そんななか、核兵器の不使用の観点から、注目したいのは、アメリカに先んじて水爆開発を成功させたソ連のクリチャートフ博士たちは真剣に

 核軍備を国際共同管理

におくことを西側に提案し、自ら具体的な行動に出ている点である(『スターリンと原爆』)。しかし、このことがかえってアメリカをして遅れをとっていた水爆開発を急がせることになるというのは、なんとも歴史の皮肉である。

 秋の夜長、いろいろ考えさせられる三部作だったと思う。

  ● 補遺

 Imgp1469_1 マスコミ的な感覚から、ブログ子の好みとしてはピュリッツァー賞の大著、

 『原子爆弾の誕生』(R.ローズ、原作1986年、日本語訳1995年)

を推奨したい。戦後の国際政治への原爆投下の影響について優れた分析をしている下巻は、ジャーナリストらしい見方が随所に披瀝されており、特に一読に値する。

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