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赤字は事故を引き起こすか JR北海道

(2013.10.07)  ときどき拝見しているNHK総合の「時論・公論」で、先日

 Imgp1267_1 安全は取り戻せるかJR北海道

というテーマを解説委員が取り上げていた(写真上= 10月4日深夜同番組画面より)。「クローズアップ現代」でも外部の識者を呼んで問題点を洗い出していた。

 ● 意思疎通を欠く労使

 いずれも経営の赤字体質が大きな問題であることを指摘していた。もっともらしいが、しかし、隔靴掻痒(かっかそうよう)の感である。はっきり言えば、もっと重要なことが、意図的かどうか、述べられていない。はっきり言えば、

 赤字続きは結果であり、トラブルや事故の原因ではない

といいたい。何が赤字を生んでいるのか、という問題なのだ。トラブルや事故は人が原因で起こるものなのだ。これさえしっかりしていれば、いくら赤字経営であっても安全は確保できる。赤字がひとりでにのこのこ歩いて事故を引き起こすことなどあり得ない。

 なぜ社是として「安全最優先」をかかげながら、それが徹底できないのか。それは会社の経営側と労働組合側とが意思疎通を欠いているからだ。これほど頻発している事故やトラブルをみるにつけ、ともに協力して安全を確保しようという気がないとしか思えない。これでは企業として体をなしていない。

 民営化以来の長きにわたるこの意思疎通のなさが事故・トラブル頻発の根本原因であり、赤字垂れ流しという結果を生んでいるのではないか。

 ずさんなというよりも、崩壊の瀬戸際にある車両検査体制やスピードアップ化、あるいはレールを補修する現場の保線員たちだけの問題に矮小化してはなるまい。崩壊の背後に一貫して何があるのか、これが問題である。

 ● 「経営安定基金」が弊害を生んでいないか

  JR各社の最新の経営状況(2013年または2012年3月期決算 = 写真下)を調べてみると、JR北海道は、営業利益は241億円の赤字。国から預かっている経営安定基金(約6800億円)の運用益収入を繰り込んで経常利益をかろうじて出している。

 しかし、同様に赤字経営が続くJR四国やJR貨物は、それほどトラブル続きなど起こしてはいない。

  Imgp1229 確かに、安定基金などの支援のないJR東海(2012年3月連結決算)では、純利益は1300億円を超える。超ドル箱路線の東海道新幹線をかかえているとはいえ、雲泥の差だ。社員一人当たりの純益はJR7社のトップ。

 利益が出れば、その分、安全対策が充実するのは当たり前。しかし、赤字だから事故が起こるとは、直接これらの数字からはいえないことがわかる。

 企業で働く従業員の体質が問題なのだ。

 こうしたことから、時論・公論の解説委員は

 JR北海道= ゆでガエル説

を紹介している。民営化以来26年間、身を切る改革をほったらかし、経営がますます悪化。それはまるで、少しずつ温度を上げていくぬるま湯にその場しのぎで我慢していつまでもつかっているカエルのようなもので、ついにそこから抜け出せずに死に至るというわけだ。

 そして、最後は、国がなんとか面倒をみてくれると、そろばんだけはしっかり弾いているズルイ体質が経営側にも働く側にもありはしないか。この点だけは、いがみあう労使、意見が一致しているというのでは、国民を愚弄しているといわれても仕方あるまい。

 その意味で「ゆでガエル」説は言いえて妙である。が、しかし番組では、このゆでガエルが具体的に誰なのか、労働組合をはばかったのだろうが、指摘していない。

 経営陣という見方もあるだろうが、あえていえば労働組合でもあろう。

 額にかかげられた「安全最優先」( 注記 )が徹底できるかどうかは、経営の体質改革もさることながら、今も古い体質に安住し続ける一部の労働組合の改革なくしては困難だ。きちんとまじめに働く労働組合でなければ再生はできまい。

 ● 「鉄路に生きる !」と胸を張るには

 記録映画のように「俺たちは鉄路に生きる !」と自信を持って言えるためには、そして再生するためには、自らも身を切る改革をする社会的な責任がある。このことを労働組合は忘れてはなるまい。乗客は労組の人質ではない。

 繰り返すが、事故やトラブルは人間とそれからなる組織が引き起こすものである。赤字が引き起こすのではない。赤字は明確な目標や意思疎通を欠いた「ゆでガエル」どんぶらこ体質の結果であり、トラブルの原因ではない。

 労組を含めてJR北海道は、意思疎通を阻害している原因に目をつぶることなく自ら切り込み、公共交通機関としての社会的な責任を果たしてもらいたい。

 自立なくして、誇りなし。このことを肝に銘じてほしい。

 自立し、安全確保の社会的な責任を果たして初めて経営側も労組側も「俺たちは鉄路に生きる !」と乗客に向って胸を張れるだろう。

  ● 注記

 この額にかかげられた「安全最優先」というのは、普通は、当然、乗客の、という意味であろう。しかし、ここでは、

 労組の安全を最優先する

という意味かもしれない。労使対立に加えて、JR北海道には、JR総連か、JR連合かしらないが、その傘下の労組間対立というややこしい状況が今も続いているらしい。

 これでは乗客のことなどかまってはいられないという気持ちになったとしても、無理はないだろう。

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