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びっくり、空中にモノを固定する方法

(2013.10.20)  マジック、奇術、あるいは手品ではない。歴とした科学実験なのには驚いた。先週末、10月18日金曜日がまもなく終わろうとしていたとき、Eテレを見ていたら、

 きょうの終わりにほっとひといき「2355」

という5分間番組で、

 空中にモノを固定する方法

というのを、実験で見せていた。

 ● 一日の終わりの5分間番組「2355」

 まず、磁場をつくる磁石を板に固定する。その磁石の上近くに超伝導物質をおき、間に発泡スチロールをはさんで固定する。次に、おいた超伝導物質に超伝導現象を起こさせるため、これら全体をマイナス190度くらいに、液体窒素の冷気で冷却する( 注記  )。そして、約10分くらいそのままにする。

 当然のことながら、超伝導現象で、磁石とその上の超伝導物質の間にある発泡スチロールを抜き取っても、重力に逆らう反発力でモノは空中に浮かんでいる。

 ブログ子も、ここまでは大学の基礎物性実験で知っていた。左右のバランスをとれば、ころりと落ちることなく、磁場の上にうまく浮かんでいる。だろうと思った。

 事実、画面はそうなっていた。

 ところが、この番組では驚いたことに、ブログ子の早合点というか、思い込みを見透かすようなことを次にやってくれた。

 つまり、モノを少し傾けて左右に手で動かしても、なんと冷却中の位置にきちんと戻ってしまうのだ。

 それどころか、磁石を取り付けた板全体を、フライパンをゆっくりひっくり返すように上下逆さまにしても、空中に浮かんだモノは、重力でストンと床には落ちない。そのままあたかも固定されているかのように空中に固定していた。

 これには、ブログ子も考え込んでしまった。そして、20分くらい考えて、ようやく、超伝導現象は反発力だけしか生じないという自分の思い違いに気づいた。

 これは一言で言えば、

 超伝導現象の「ピン止め効果」

なのだ。磁化した超伝導のモノを磁石に押し付けようとすると、つまり上にモノをおくと、反発力が働く。逆に磁石の下にモノをおくと、重力により、磁石から引き離されようとするので、今度は磁石に引き付けられるように力が働くのだ。

 つまり、磁場の中でおきる超伝導現象は、モノの中に固定された磁場の位置を記憶している。その記憶が元に戻すような力として働くというわけだ。磁場を押せば反発力でもとにもどる。磁石からモノを遠ざけようとすると、元に引き戻す力が働くというわけだ。

 少し専門的に言えば、押し込んだり、引っ張ったりして磁束がのびると、それぞれ(輪ゴムのように)反発力や引き戻し効果が働く。ピン止め効果は、この輪ゴムのたとえによっておきる。

 板をひっくり返してもモノが床に落ちないのは、引き戻し力が重力とつり合っているからだ。磁束の輪ゴムたとえからも、これは理解できるだろう。

 この実験の監修には、物質・材料研究機構(茨城県つくば市、独立行政法人)があたっているが、10分くらい冷却するというのがミソ。これくらいの時間が磁場の記憶にかかる。これくらいの時間で超伝導物質の中の磁場が固定される。形状記憶合金の考え方と似ている。

 だから、板をゆっくりひっくり返しても、モノは落ちない(モノがある程度軽いものなら)。

 ただ、これだけのことに気づくのに30分ぐらいかかった。

 ● 通常物質にも「ピン止め効果」 ?

 そして、また、気づいた。

 このことは、モノは何も超伝導物質である必要はない。普通のものにも

 ピン止め効果

はあるはずだ。ただ、普通の物質は、抵抗ゼロの超伝導物質とは違って、抵抗がある。だから反発力にしろ、引き込む吸引力にしろ、移動電荷の量は極端に少ない。その結果、ピン止め効果は、超伝導物質に比べ、かなり小さい。つまり、このような空中固定の効果は目に見えないだけの話、ということではないか。

 この最後の考察が正しいかどうか、ブログ子には自信がない。が、理屈としては、当たらずと言えども、遠からずではないか。

 そんなことを考えていたら、いつもは眠るはずの時間帯がすぎてしまい、

 夜更かしフライデーになってしまった。

 Eテレもなかなかレベルが高い。

 ● 注記

 液体窒素くらいの、つまり、転移温度が絶対温度で100度K以上の高温でも超伝導になる超伝導物質として、最近では鉄系超伝導物質が見つかっている。番組では超伝導を起こすモノとして何を使っているかは明らかにしていなかったが、この種の物質を利用したのであろう。

 余談だが、20年くらい前までは、転移温度が20度Kそこそこのモノしか見つかっていなかったことを思えば、今は隔世の感である。これでは、液体窒素程度の温度では、とても超伝導現象を起こさせることはできない。液体ヘリウムが必要だった。

 ● 補遺

 このブログには、あえて実験の様子を示す写真はつけていない。

 読者は想像力を働かせて、ピン止め効果を楽しんでほしい。超伝導現象には、反発力だけでなく、引き込み力も生み出す。

 そして問題。この力を生み出す元、つまりエネルギーはどこから供給されているのかということを考えると、もっとおもしろい。

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コメント

>液体窒素の冷気で冷却する

 液体窒素温度で超伝導になる物質が既にあるのですか、知りませんでした。

 マイスナー効果で磁束が外に出れないので、移動させようとすると磁束が伸びて反発力が出る、と云う事ですね。

投稿: mms | 2013年10月21日 (月) 10時36分

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