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建築は「数学」でてきている 白熱教室から

(2013.10.12)  数学がこれほど、私たちの暮らす世界、たとえば建築に対する新しいものの見方を教えてくれるとは、ついぞ今まで知らなかった。

 Dsc00036_480_1_1_2 今、Eテレで放送中の、世界的な数学者、デュ・ソートイ教授の

 オックスフォード白熱教室 シンメトリー

という番組である。

 2次元図形において回転対称性を分類すると、その数は17種類しか存在しないということをガロアが自ら創り上げた「群論」から証明して見せたという話から、始まった。

 それだけなら、それほど驚かなかった。

 ● アルハンブラ宮殿の数学

 問題は、そんなすべての回転対象を使って壁面をタイルでおおった建物があるという指摘だった。

 あのイスラム文化の傑作といわれている

 アルハンブラ宮殿(スペイン南部グラナダ、14世紀)

である。たとえば、右のようなタイル模様。白い葉っぱと、黒い葉っぱがびっしり、だまし絵のように敷き詰められいる。

 これなども、17種類の回転対称のひとつなのだ。

 イスラムの幾何数学の水準の驚くべき高さである。なにしろ、ガロアが群論を発見する500年も前に、すでに2次元の回転対称性について熟知し、そして、その成果を建築の壁デザインに生かしていた。

 さらに講義が続いた。

  回転対称な正多面体のうち、3次元のものとしては、正4面体(すべての面が合同な正三角形)、正6面体(立方体)、正8面体(すべての面が合同な正三角形)、正12面体(すべての面が合同な正5角形=サッカーボール)、正20面体(すべての面が合同な正三角形)の5つしかない。

 これだけなら、これまた、どうということはない。中学校の数学で習った。

 問題は、これを4次元に拡張するとしたら、どうなるか、である。4次元空間など、私たちは到底、想像できない。思い浮かべられない。

 そう思うかもしれない。そこで数学的な発想でこれを乗越える。

 つまり、形を表現するのに、デカルト流に座標を使うのだ。シンメトリーという言葉を座標で表現する。そして、その座標の扱いを、ガロアは群論という高等数学に完成させた。要素の関係性をまるで四則演算の代数学でもあるかのように扱える便利な道具だ。

 たとえば、3次元の立方体。その角の位置は

 (0,0,0)、(0,0,1) 、 - 、 (1,1,1)

の8つの座標で表される。2×2×2=8だからだ。

 とすると、形までは想像できないが、4次元空間の立方体は

(0,0,0,0)、(0,0,0,1)、 - 、(1,1,1,1)

の16の座標点で表されるはずだということが分かる。2×2×2×2=16だからだ。

 イメージとして想像することは難しいが、4次元空間の世界ではサイコロのような立方体の角は16か所あることがこれでわかる。

 ● パリ新凱旋門は〝4次元への入り口〟

 これを具体的に、われわれの3次元の世界のイメージに置き換えるにはどうしたかいいのかということを考えてみる。 

そんなの無理、と思うかもしれない。

 Hpgood_108_sum640_1279634380_2 そこで登場するのが、これまた数学の射影数学をつかう。具体的に言うと、これをつかって、この4次元立方体を〝3次元の影〟として写してみる。見る角度としては、すべての角点、つまり16個がそれとわかるように3次元に投射するとどうなるか。当然、3次元にできた影立体の角点も16個になる。

 それは具体的には、どんな形か。

 講演によると、なんとそれは、

 パリの「新凱旋門」のような角ばった正方アーチ門

になるのだという( 写真左 )。このように、 3次元の立方体から立方体を切り取ったような形だというのだ。これが4次元立方体を3次元に投射した場合にできる影。

 3次元の立方体の場合で言えば、立方体が壁などに映しだした影絵にあたる。

 たしかに、この写真から、角の点を数えてみると16個ある。新凱旋門は、旧パリ市外と、もう一つの超近代的なパリ、オフィス街の接点にある。つまり、異次元を行き来する門なのだ。門の足の部分には、先端企業のガラス張りオフィスが多数入居している。

 いわば、新凱旋門は4次元への入り口

なのだ。きっとこのアーチをつくろうとした建築家たちの意図には、ナポレオンの旧凱旋門=いわゆる有名なエトワール凱旋門の形は参考にしただろうが、こうした数学的なイメージがあったことはほぼ違いないだろう。その証拠が、アーチの平面天井である。ここに数学的な意匠がある。

 群論というような数学は世界の、あるいは建築の新しい見方を教えてくれる。逆に、こうなると群論の初歩ぐらいは学んでみたい気になってくる。

 それがソートイ教授の講義の狙いであろう。

 (新凱旋門の写真は、パリ観光旅行ガイド「パリナビ」= http://paris.navi.com より)

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