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名著でつづる3次元の科学・技術史

(2013.10.03)  名古屋市科学館で

 「世界を変えた書物」展

Imgp1000 というのをやっているというので、先日、浜松からわざわざ出かけた。

 金沢工業大学が30数年をかけて世界の古書店から収集した科学や技術に関する歴史的に貴重な書籍を一堂に展示する。全国で唯一の科学・技術稀こう本コレクションらしい。

 ブログ子は京都の大学で天体物理学を研究していたこともあり、また、金沢に20年暮らしたこともあるところから、最初はただ、

 ニュートンの『自然哲学の数学的原理(プリンキピア)』(1687年)

の現物初版本をみてみたいという単純な動機で出かけたのだった。

 ● ニュートンの「プリンキピア」を前に

 そして、会場に入ったのだが、驚いた。貴重な本、名著がただ、ケースに入って床にずらりと並んでいるだけだと想像していた。もちろん、そうしたケースは並んでいたのだが、それだけではなく、会場の中央には、それぞれの歴史的な名著の書名をダンボールパネルにして、それらをあたかも建築素材の壁であるかのように、ひとつの建築物にくみ上げた

 シンボルモニュメント「知の森」

が展示されていた。それが右側の3枚の写真(角度を変えて撮影)。

 Imgp1019_1_1 言ってみれば

 名著でつづる3次元の科学・技術史

といっていいだろう。しかも、それぞれの名著パネルの関連がどうなっているのか、カラーの動線で鮮やかに描いてみせていたのには、感心した。

 はじめてみる3次元の科学・技術史

である。いかにも、同大学環境・建築学部の建築デザイン学科の教授、竺覚暁(ちくかくぎょう)さんにふさわしい作品である。

 Imgp1021_11687 

 その竺教授が会場に並べられた100冊以上の稀こう本を前に、一冊一冊の価値や意義についてていねいに解説してくれた。

 Imgp1004 写真左上は、ニュートンの『プリンキピア』(初版。ロンドン発行本 写真中央)を前に竺教授が解説している様子。

 ざっと1時間半で、古代ギリシャから、アインシュタインの相対性理論の著作までを語ってくれた。ブログ子にとっては、至福の時間だった。

 これほどの見事な展示は、ここだけでなく、もっと広く

 国立科学博物館(東京・上野)

でも開催したら、全国的な反響があるだろうと、会場にいた人たちと話し合った。

 ● 文化としての科学・技術

 ただ、ブログ子の感想をひとつ言えば、これだけ多くの世界の知性が書いたもののなかに、日本人のものは、たった一冊、

 湯川秀樹博士の『素粒子の相互作用について』(1935年、初版)

のみだったことに、なさけない気持ちになった。しかも、竺教授によると、この本は日本では入手できず、ニューヨークの古書店から買い求めたという。

 これは何を意味するのだろうか。

 すくなくとも日本人の科学や技術に対する冷淡さ、関心のなさを示すものだろう。日本では科学や技術は明治期に西欧から出来合いのものを手っ取り早く輸入した

 輸入学問

であり、経済の道具に過ぎないという科学・技術観があり、それとは無縁ではないだろう。これは科学の土台を自らつくってこなかった日本のひ弱さでもある。

 逆に言えば、西洋では科学の知識を身につけることは合理的にものを考える教養人の必須条件であり、それには知識獲得のプロセスを示す歴史的な著作は大事にしなければならない。そういう文化が日本にはいまもって根付いていない。結果のみを求める文化のひ弱さである。このことが、湯川さんの歴史的な著作が日本で入手できなかった本当の理由ではないか。

 湯川さんに限らず、日本には、歴史的な役割を果たした科学や技術に関する古書マーケットがないのはいかにも象徴的である。

 Imgp1002_1 その意味で、この展覧会は

 文化としての科学・技術

について考えさせてくれたように思う。

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コメント

山ほど量産される温暖化に関わる論文・書籍で後世に名を残すものはあるのでしょうか。 
 陳腐な温暖化問題。 私が、観るところでは、例えば「京都議定書」には、「排出権取引」の制度化ぐらいしかありません。 議定書を観る限りでは、金融市場を創設したいがためにCO2を制限し、取引の対象にしたのだ、との印象が強いのです。 詰まり、全てが逆転しているのです。 
 これは、私の専門である「法律学」からの観察ですが、議定書の中で、注意書として金融取引の過熱化を危惧する一項に疑念が湧き、その時点から調べて来たのですが、地球温暖化CO2主因説を唱道して居る諸国が、新自由主義諸国であることと関係があるでしょう。 詰まり、これ等諸国は、金融が自国の大産業なのです。
 どうも日本は、これ等諸国に騙されたようです。 ブログ主様御指摘のように、科学が国家と国民に根を持っていないからこうした国際的詐欺に嵌ってしまうのでしょう。 縁も所縁も無い国に、今までにどれだけの国費を空気の対価として支払ったのでしょうか。
本当に馬鹿な国と国民です。

投稿: とら猫イーチ | 2013年10月 3日 (木) 08時52分

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