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「日本政府だけではもう無理」と英科学誌  - 汚染水問題

Imgp0756 (2013.09.20) 国際的な科学雑誌「ネイチャー」9月5日号が福島原発汚染水問題で、

  日本は海外の専門家に助けをもとめるべきだ

という論説を掲げた。新聞なら社説にあたる

   EDITORIALS

という欄。後手後手の対策の東電や、お粗末な指導力の日本政府の対応に、いらだったのか、

 「もう政府だけでは対応は無理」

といわんばかりなのだ。

 具体的には、写真上に示した

 2番目の論説がそれ。タイトルは

 Nuclear error (核エラー)

というもの。偶然の、あるいは不慮のAccident(事故)なんかではない。間違い、誤りのエラーだというのだ。原発事故後の対応のお粗末さ、誤りに対し皮肉った。というよりは、さすがの一流とされている上品な科学雑誌も、ここにきて業を煮やしたのだろう。

 海外メディアはこれまで

 事故を対岸の火事視

していた。だが、汚染水が太平洋に流れ出している。しかもコントロールできていないようにみえる。世界中の海が危ない。つまり火の粉がわが身に降りかかってきたという恐怖がこうした論説を書かせたのだろう( 注記 )。

 ● 5、6号機の廃炉要請した安倍首相

 この論説は、

 最後のほうに

 「最近、日本の安倍晋三首相と政府は-」

という形で、名指ししている。そして、そこで安倍首相は科学の振興に力を入れると約束しているのだから、科学者をサポートする体制を整えるべきだと痛いところを突いている。

 この論説に敏感に反応したのが、当の安倍首相。

 最近(9月19日)、福島原発の汚染水現場を視察した際、海外メディアの前で、

 政府が前面に出る。私(首相)が責任をもって(汚染水問題を)決定していきたい

と述べた。その上で、原発再稼動に積極的な首相の口から、事故対応に専念するためとして、なんと

 (点検中で無事だった)5号、6号機を廃炉にするよう東電に要請

した。その場の雰囲気からは、要請ではなく強制したようなものだろう。

 これに対し、現場で案内した広瀬直己東電社長は、即答は避けたものの、今年中に判断したいとかろうじて答えたという。

 首相がこうした強い決意をしたのは五輪招致の場で汚染水問題はコントロールできていると世界に向って見栄を切った手前もあるにちがいない。が、世界の科学者の多くが読んだ

 核エラー

の論説がこたえたからだろう。世界の一流科学雑誌から、これまでの対応は間違い、誤り、国際連携しろと、いわば満座のなかで面罵されたに等しいからだ。

 これでは、安倍首相も、思い切った決断を打ち出さざるを得まい。もう、兵力の小出し策はダメだと腹をくくる時に来ている。

 この首相の決断を高く評価したい。

 それにしても、「ネイチャー」論説の威力をあらためて知った。日本の大新聞の社説が束になっても、とうていこうはいくまい。

 ● 「ネイチャー」9月5日号論説の日本語訳

 ブログ子のつたない英文理解では心もとないので、次の和訳も参照されたい。

 http://yokofurukawa.tumblr.com/post/60466011377/9-5-nuclear-error 

 ● 「アエラ」9月23日号の巻頭コラム「eyes」(内田樹)

  自然科学誌が政府と東電の不行跡を論難する真意

Imgp0753_1というタイトルのコラム(写真下)も参考になる。

 しかし、見出しに出したその真意が明示的に本文に書かれていないのは残念。踏み込み不足。論説のポイントを突いていない。だから、何が言いたいのか、よくは分からなかった。

 しかし、文系の人が、ネイチャーの論説に敏感に反応したのは、さすがである。

 ● 注記 2013年9月25日

 ニュース雑誌「NEWSポストセブン」(9月25日配信)によると、原子力専門家、小出裕章氏(京都大学原子炉実験所)は、

「実際、福島から海に流れ出た放射性物質はアメリカ西海岸まで届いている。いずれ大西洋にも広がる。したがって海産物の汚染は避けられない」

と説明している。被ばくの危険度が高い子どもたちへの影響、つまりがんや白血病だけでなく、腰痛、高血圧、視覚障害などが増える心配があると警告している。

● 補遺 2013年10月11日記

 毎日新聞朝刊(2013年10月11日付、総合・経済面)を読んで、このNatureの論説がいかに国際的に支持されているかを知った。

 記事の見出しは

 汚染水漏れ対策/「海外と連携を」

 IAEA天野事務局長

というもので、これはまったく「Nature」論説と同じ趣旨。記事を読むと、中身まで同じなのだ。

 この記事によると、世界の原子力規制の元締め、国際原子力機関の事務局長は、東京都内の「アジア調査会」で講演、日本は汚染水対策については海外と連携を、と訴えた。さらに第一原発廃炉についても

 「外国と一緒にやるべきだ。日本だけでやりそうな気配になっているが、それだけはやめてもらいたい。世界の英知を集めて行なうべきだ」

と強調した。というか、危なっかしくてみていられないので、クギをさしたというべきだろう。

 この件については、原子力規制委員会の田中俊一委員長との会談でも、天野事務局長は同趣旨の発言を繰り返し、田中委員長もIAEAと協力して取り組みたい旨を天野事務局長に伝えていた。

 要するに、東電も頼りないが、もっとダメなのは日本原子力学会だということだろう。まったく無視されているか、素人同然の何も知らない子ども扱いされたということだ。

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