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不運の名将か、幸運の凡将か 西本監督考

(2013.07.01)  野球体育博物館を改称し、新装なった野球殿堂博物館に出かけた。東京ドームの中にある博物館で公益財団法人(理事長は今、話題の「あの」加藤良三氏)。

 ● 安倍首相の直筆銘入り「金のバット」

 土曜日の午後なのに入館者はそれほど多くはなかったが、長嶋茂雄氏が、松井秀喜氏とともに国民栄誉賞をもらったというニュースもあり、そこそこにぎわっていた。

 Dsc0186420130629 安倍普三首相から長嶋氏に贈られた記念品、

 金のバット(写真)

が飾られていた。

 安倍首相の直筆で「長嶋茂雄」の銘がバットに刻まれていた。純銀製で、表面を金メッキしたものらしい。金メダルのつもりだろう。

 こうなると、このダブル栄誉賞もなにやら政治的な、もっと言えば、間近かに迫っている参院選目当ての人気取りのにおいもする。 それに付き合わされた長嶋さんはともかく、松井さんは、いい気持ちではなかったかもしれない。

 ● 殿堂入り180人の博物館

 名称変更しただけあって、名球会などから殿堂入りした元選手や元監督など180人のりっぱなレリーフがずらりと飾られたホールはなるほど圧巻だった。

 そのなかで、野球にそれほど詳しくないブログ子の目に留まったのは、400勝の金田正一氏とならんで、1988年に殿堂入りした西本幸雄氏。レリーフには

 監督歴20年、8度のパ・リーグ優勝

という文字があった。監督として8回もリーグ優勝を果たしたというのは、確かにすごいことであることはわかる。

 だが、一度も日本シリーズを制覇し、日本一に輝いたことはない。

 人は、これを称して

 不運の名将

というらしい。

 どのくらい不運なのだろうか。レリーフの前で考えた。

 ● 過去引きずった日本シリーズ8連敗

 日本シリーズに出てくるくらいだから、双方の力は五分五分だろう。とすると、2分の1の確率で、8回も続けて負け続けるというのは、

 256分の1= 0.4%

に過ぎない。社会現象の統計学的考察では、どのくらい確からしいかを示す有意水準は一般に95%に設定することになっている。

 つまり、5%より小さい確率は無視してよい、起こらない

ということになる。

 すると、西本監督の日本シリーズ8連敗= 0.4%というのは、一回、一回、前回の目がなんであったかには無関係なサイコロを振るような意味の偶然では決してあり得ないことになる。それほど異常に小さい数字である( 注記 )。

 その原因は何なのだろう。

 それは、前提とした、つまり、1回、1回の日本シリーズは独立しているという仮定が間違っているのだ(と思う)。独立していないというのは、たとえば試合の土壇場で

 またこれまで同様、負けるのではないか、という心理が選手にも西本監督にも去来した結果

ではないかということを意味する。肝心のところで過去におびえるトラウマである。

   不運にしろ、幸運にしろ、いずれにしても、8連続日本一を逃すというのは偶然ではあり得ない。江夏の21球の場合のような行き詰るような試合では、似た過去のいやな、すなわち負けた記憶が監督にも、選手にもよみがえり、土壇場で自滅する。

 そんな影響が出た。

 ● 自らは「幸運の凡将」

 西本監督自身は、名将と言われることについて、あえて言えばと、ことわりながらも、

 幸運の凡将

と述べている。リーグ優勝の原動力となった有能な選手を多くかかえながら、監督として申し訳ないとの意味が込められているのだろう。

 これは自嘲や謙遜とばかりはいえない。

 西本監督は、パリーグ一筋20年の監督だった。このことが余計に過去を引きずる原因になったのではないかと推測する。すくなくとも、それと8連敗とは無縁ではないのではないか。

 このように、原因を探っていくと、トラウマにとらわれたという意味では、大変に失礼な話だが、自ら言うように

 西本監督は凡将

なのかも知れない。過去を振り払い、その場の勝負に徹し切れなかった。

 素人考えだが、どうも、そんな気がする。

 そう考えると、殿堂入りしたほどの名指揮官にもそんな心のゆらぎがあったのかと、かえって

 人間・西本監督

に惹かれた。人間は、サイコロではない。そのことを自らの野球人生でファンに示したように思う。

  ● 注記 シリーズの負け確率は平均70%前後か

 それでは、五分五分ではないとしたら、日本シリーズに立ち向かう西本監督はどれくらいの負け確率なのだろう。

 仮に、50%の負け確率が、トラウマのせいで、各シリーズ平均して75%の負け戦だとする。

 この確率で日本シリーズ8連敗となる確率は、0.75の8乗で、

 約10%

となる。これは社会的な有意水準5%より高い。したがって、十分に社会で起こりうると考えてよい。負け確率が70%だと、それが5.8%となり、ぎりぎり有意水準をこえていて、95%の確かさで起こりえると考えてよい。

 私たちが見たのはこんな状態の西本日本シリーズ人生だったのだろう( 負け確率がもう少し低く平均0.60だとすると、8連敗の確率は1.7%と有意水準を下回ってしまい、そんなに低い負け確率ではないことになる )。

 これとは対照的なのが、川上哲治巨人監督。1965年に野球殿堂入りを果たし、1970年代には日本シリーズ9連覇を果たしている。

 こちらは、実力もさることながら、いわゆる「勝ちぐせ」がついていたのであろう。打撃の神様、川上巨人にファンが飽き飽きしたのも無理はない。ドラマのない予定調和では、スポーツはおもしろくない。

 そんなことも知った殿堂見学だった。

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