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過酷事故に即応する能力と覚悟があるか

(2013.07.09) 原発の新しい規制基準が施行された。同時に、電力会社が相次いで再稼動のための安全審査の申請を原子力規制庁に提出した。

 ● 過酷事故への即応を義務付け

 新基準の言わんとするところは、安全神話を否定し、詰まるところ、

 大量に放射性物質が大気中に飛散する過酷事故が突然起きることを前提に、即応できる能力があるか

という点。さらに言えば平常時でも最高レベルの安全確保の覚悟はあるか

という2点だろう。 

 具体的に言えば、新基準の柱は、過酷事故への対策を電力会社に義務付けたこと。これまでのような自主努力に任されていた点を改めた。安全神話を否定している。

 2つ目の柱は、立地で科学的に予想される最大の地震や津波に対し、多重の備えを電力会社に義務付けた点。これまでは、科学的に予想される合理的な範囲の地震や津波に備えさえすればよかったのとは大きく変わった点である。

 この2つの義務が果たせないのなら、再稼動は認めない。廃炉にしなさいということを新規制基準は言っている。

 Dsc0190220130702たとえば、2つめについて。

 敷地内や周辺に断層があるか、またはあると予想される場合、

 その想定される断層は活断層である

とみなされる。原発立地を可能にするには、この想定をくつがえす「活断層ではない」との科学的な証拠の提出が事業者に求められる。提出がなければ、活断層とみなされる。再稼動はできないことになる。これまでは、明確に活断層とは断定できなければOKだったものが、否定しなければならなくなった分、格段に厳しくなった。グレーゾーンは、安全側に立って活断層とするという原則である。

 簡単に言えば、敷地や敷地周辺の断層はすべて活断層とみなされる。それがいやなら、活断層ではないという科学的証拠が必要ということになったのだ。場合によっては、さらに数10万年までさかのぼって地質調査をしなさいというわけだ。事業者の手抜きは許さないというわけだ。

 Image1728● 原子力村からも告発

 こうした能力と覚悟について、先日の放送大学の特別講義「未来への教訓 検証 福島原発事故」で、田辺文也氏は否定的な意見を述べていた(写真上)。同氏(注記)は社会技術システム安全研究所長(茨城県ひたちなか市)。

  田辺氏は、講義で

 想定外が起こるからこそ知的対処能力のある人材が必要なのに、そうした人材はほとんどいない

と述べていた。

  ブログ子もこの主張を支持したい。そもそも、福島原発の事故の全体像がほとんどつかめていない現状では、原発の再稼動うんぬんは論外といえまいか。

 ● 鋭い朝日社説「木だけでなく森も見よ」

 7月9日付の各紙社説がおもしろい。

 20130709_2 産経新聞社説は、あいかわらず、この新基準施行を

 再稼動に向け進む好機に

とやらかしていた。のんきな太平楽であろう。

 朝日新聞は

 木だけでなく森も見よ

と書いていた(写真下)。大局的な観点からのチェックも厳しくすべきだと主張しているのだ。正解だろう。おそらく、申請した電力会社もこの指摘にドキリとしたのではないか。すでにこのブログでは指摘したことだが、盲点だ。

 個々の原発ごとの審査も大事だが、森、つまり、原発と原発の間の関係も間引きするよう検討すべきだというのだ。

 「狭い地域で複数の原発を稼働させるリスクをどう考えるか。規制委は検討を急ぎ、見解を示す義務がある」

と指摘。福島原発では、ドミノ倒しのように連鎖的に個々の原発が次々と制御不能になる可能性があったことを指摘したものだ。このリスク回避には、原発密集地では間引きが必要なのだ。

 ● 南海トラフ巨大地震「浜岡」の場合

 それでは静岡県の場合の「森」にあたる問題は、

 南海トラフ巨大地震「浜岡」

という観点である。「木」として浜岡原発が新基準にたとえ適合したとしても、大局的な観点からは再稼動はできないと判断すべきではないか。

 川勝平太静岡県知事も、浜岡の再稼動と新基準の関係について、

 「規制(基準)以外にも固有の問題がある」

と述べ、新基準だけで簡単に再稼動を判断すべきではないとの見方を示している(7月9日付朝日新聞静岡版)。

 当然だと思う。すくなくとも、今後4年間の任期中にはゴーサインは出さないとの決意なのだろう。 

  注記

 田辺氏は京大工学部原子力工学科出身で、元「旧日本原子力研究所研究主幹」などをつとめている。30年以上、いわゆる原子力村の住人だった。

 最近ではその体験から、上記のような能力と覚悟が村にはないとして、できるだけ早く原発ゼロを目指そうと訴えている。 

 田辺氏には専門的な新著『メルトダウン』(岩波書店、写真中)がある。このなかで3号機について、事故10日後の3月21日未明、再溶融(メルトダウン)し、融けた燃料が格納容器へ融け落ちる、つまりメルトスルーした可能性を具体的なプロセスや計算で指摘している。放送大学の講義でも、放射能の拡散状況に照らしより詳細に分析、メルトスルーの公算を指摘している。

 このように、原発事故では事故の全容はいまだつかめていない。

 また、同氏の一般書『まやかしの安全の国 原子力村からの告発』(角川SSC新書)も、原子力村の責任と覚悟について具体的に知ることができる好著。

 なぜ脱原発が必要かということを痛切に感じることができる。一読をすすめたい。

 

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