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弁天島の新幹線は大丈夫か M9の想定を

(2013.07.17)  こういう記事こそ、地元紙の強みだろうし、歴史学者の出番でもあろう。

 7月16日付静岡新聞1面に、歴史家の磯田道史静岡文化芸術大准教授が、巨大地震で

 Image17920130716 浜名湖弁天島を通る新幹線「浸水の危険」

と警告しているとの記事が写真付きで大きく掲載されている。

 弁天島周辺の新幹線線路の海抜は約6メートル。JR東海が先日、巨大地震が来ても新幹線全線は津波などすべての面で大丈夫と

 安全宣言

を出したばかり。だから、この磯田氏の警告は大きな反響があったらしい。

 ● 津波は最高で約15メートルにも

 しかし、この安全宣言は、県が最近まとめた第4次被害想定を前提にしているのだが、その中でも、

 M8クラスのレベル1

を想定している。この場合は、湖西市あたりの遠州灘では津波高は最大でも約7メートルだから、海岸から1.5キロもはなれている新幹線の線路が浸水する恐れはまあ、ないと考えていいだろう。

 しかし、問題は、4次被害想定のもうひとつのケース。つまり、レベル2というマグニチュードM9クラスの最悪の場合(南海トラフ巨大3連動地震)だ。

  この場合は、被害想定では、湖西市の遠州灘には最高15メートルの高さの津波が押し寄せる。陸上の場合には減衰も考えられる。しかし、ほとんど海面ばかりの浜名湖南部の場合、弁天島鳥居の中洲をこえ、ほとんど弱まることなく10メートルをこえる高さの大波が弁天島付近の新幹線を襲うだろう。

 ● 300年前の巨大地震で約9メートル津波の可能性

 事実、東大地震研究所の歴史地震調査によると、

 今から300年前の宝永大地震(1707年)では約9メートルの津波が到達した可能性

がある。今とは弁天島の地形はずいぶん異なるが、これだと、十分、線路が浸水する可能性はある。

 このあたりは、地盤が軟弱であり、宝永地震でもあちこちで数メートル隆起したり、あるいは数メートル沈降したりした事実が知られている。

 同氏は

 「日本の大動脈のなかで最も弱点をさらしている場所」

と指摘している。ブログ子もこの現状認識に賛成したい(静岡県にはもうひとつ、新幹線を含めた動脈のボトルネックとして静岡市清水区のサッタ峠がある。ここが切断されると、首都圏からの救援は大幅に困難になる)。

 ● 地盤の軟弱性で脱線も

 高速運転中に地震が起きても脱線防止装置が全線にあるとJR側は言う。しかし、津波警報が間に合わず、真横から大津波を受けても、脱線は食い止められるか。

 大津波が来るのは地震発生後2分前後。これに対し、新幹線が地震で送電をとめ緊急停止するまでには1分前後はかかろう。しかも、脱線防止といっても、この地域特有の地盤の軟弱性は不安材料だろう。

 次の巨大地震として発生する確率はM8よりは小さいとはいえ、M9が起きれば、弁天島周辺の新幹線もただではすむまい。

 M9(被害想定レベル2)に備える津波対策、地盤対策が必要だというのは正論だ。

 JR東海は、今、10年計画で数千億円をかけた新幹線開通50年老朽化対策を実施している。歴史という現実に向き合い、そこから具体的な教訓を学びとろうという磯田氏の警告を真摯に受け止める好機ではないか。

  ● 大学教員としての責務

 それにしても、ブログ子は、失礼ながら、頻繁にテレビ出演している磯田氏を、いわゆる歴史オタクだと思っていた。

 それが今度の警告で、社会に向って言うべきことは、根拠を示して言うという大学教員としての責務を十分自覚し、覚悟もあったことを、図らずも知った。

 大学教官とは、かくあるべきだろう。

 ひるがえって、静岡県内には全国に知られた名誉教授も含めて日本史が専門の国立大学教授が何人かいる。が、ほとんどはそうした自覚と覚悟にとぼしいのはさびしい気がする。

 気楽な評論などではなく、歴史学者の現代社会に対する具体的な問題提起、警告あるいは専門家らしい具体的な提案がもっとほしい。 歴史学に閉じこもった歴史学では、せっかくの貴重な教訓が今に生かせない。

  ● 補遺 磯田氏は社会学者 2013.08.02

 最近のアエラに、

 時をかける歴史学者

として、磯田氏が大きく紹介されている(8月5日号「現代の肖像」)。なぜ、茨城大から浜松市の静岡文化芸術大学に移って来たかなどおもしろい記事である。どうやら南海トラフ巨大地震への備えらしい。

 上記にも書いたように、

 震災で歴史学者の使命知る

とある。磯田さんは、日本近世史研究者などではない。古文書など歴史という切り口から現代社会を分析する社会学者であろう。

 あまりにおもしろいので、ここで、そのいったんを写真で、具体的にお見せしておきたい。

 引用が過ぎると、お叱りを受けるかもしれないが、そういう人は、ぜひ、本号アエラを買って一読することをすすめたい。とくに、歴史研究者には(東大地震研究所には、古文書を読み解く歴史地震学者、西山昭仁という若き気鋭の特任研究者がいることも、公平性のため付記する。こちらは、文学博士の学位を持ち、国の防災会議でも主査をつとめるほどの本格派)。

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