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実験で試してみよう 振り子+自由落下

(2013.06.10)  理系出身ということもあり、浜松科学館(浜松市)でサイエンスボランティアをさせていただいている。

 相手は小学校に入ったか、これから入るくらいの子どもたちが多い。これくらいの子どもだと、よほどわかりやすく、うまく話を運ばないと、おもしろいと思って実験したり、してもらったりしても驚いてはくれない。驚くためには、実験結果が子どもたちの経験とは異なっていたり、想像していたものとは違っていることが、不可欠。

 ● 離すと五円玉はどうなる?

 先日、親子連れの人たちに、右図のようなごく簡単な実験をしてもらい、結果がどうなるか、想像してもらった。

 Image16372 ごく細い糸(図の赤)の一方のはしに五円玉を、もう一方のはしに適当な重さのおもりを結びつける。それを水平にした割り箸にたらす。五円玉のほうは水平にして手に持つ。持った五円玉を離したら、おもりはどうなるか、という実験だ。

 あまりに簡単な実験で、戸惑うぐらいだ。

 たいていの子どもは、そして親はなおさら、そのままおもりは地面にドスンと落ちると想像する。実は、ブログ子も最初、そう思った。

 実際に、手を離すと、おもりは途中で止まり、五円玉は割り箸にぐるぐると勢いよく何回か巻きついてしまうという意外な結果になった !

 五円玉を水平より少し下にしても、上にしても巻きつくという結果は同じ。ただ、少し下にすると、巻きつく勢いが弱まったり、上にすると巻きつく勢いが強まったりするだけで、おもりは床にドスンとは決して落ちない。

 ● なぜ割り箸に巻きつくのか 

 この結果に、付き添ってきたたいていの母親たちも不思議そうに考え込む。経験とは違う意外な結果というわけだ。

 どうして意外な結果なのか。

 ブログ子も最初そうだったが、割り箸を使ったこの実験は、割り箸の代わりに水平な机の角におもりをたらした実験と同じだと勘違いして、混同しているからだ。机の場合では、当然、おもりはドスンと床に落ちる。そして、手を離した机上の五円玉は、勢いよく水平方向に放りだされる。

 どこが違うか。割り箸の場合、手を離すと五円玉は重力で、真下に振り子のように落ちる点だ。落ちながら、しかも割り箸からの距離は加速度的に短くなっていく。

 それがどうして勢いよく割り箸に巻きつくのであろうか。

  Photo_2 ブログ子も最初、巻き込むなどということは絶対にあり得ないと確信していた。

 なぜなら、時計の振り子がそうであるように、五円玉を水平な位置から離しても、エネルギーの保存則により、五円玉が割り箸の向こう側に行っても水平な位置より上に行くはずがないからだ(写真中の単振り子の模式図を参照)。一瞬不思議だと思った。

 ● 重力は保存力

 しかし、しばらくして気づいた。この間、おもりのほうは重力で落下するのだから、その分のエネルギー、いわゆる位置エネルギーが減る。その減った分のエネルギーが五円玉の運動エネルギーに移行し、全体として力学的なエネルギーは保存される。

 つまり、向こう側に行った五円玉は水平な位置では止まらず、さらに上に、しかも、振り子の長さが短くなった分、回転力の勢いを増しながら、グルグル割り箸に巻きつくことになる(より詳しくは「注記」を参照)。

 これが実験のからくりであり、真相なのだ。つまり、この「試してみよう」という実験というのは

 重力は保存力である

という事実を前提にした実験なのだ。

 言い換えれば、単振り子の運動と自由落下の運動を結び合わせたこの「試してみよう」という実験は、運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定であり、その和は五円玉とおもりの運動のいかんにかかわらず保存されるという動力学系なのだ。

 もちろん、この実験にはこのような物理法則があることを教える必要はないが、こういうことを演者が知っていると、子どもたちにいろいろ試してもらう時の楽しみは増える。

 たとえば、おもりの重さをいろいろ変えてみる。五円玉が勢いよく割り箸に巻き込むという定性的な事実はどの場合も変わらない。その理由も法則を知っていれば明らかであろう。

 実際に、子どもたちとともにいろいろやってみて、このことを納得してもらった。

 ただし、異なることもある。100倍重いおもりでも、軽いものと並んで落下する(つまり、重いほうが速く落ちることはない)。しかし位置エネルギーは軽いものより100倍ずつも減る。だから、その分、保存則により、それを受け取る五円玉の割り箸に巻き込まれるスピードは10倍も速い(エネルギーは速さの2乗に比例するからだ)。

 実際に、より重いおもりを使うと、割り箸に巻き込まれる五円玉の回転スピードはより速くなる。

 実験の背景にある法則がわかると、実験のやり方をいろいろ変えて、予測どおりかどうか試してみることもできて、楽しくなる。驚きも出てくる。

 ● ゆかいな40年ぶりの高校物理

 Image835 NHKのEテレ放送には、大掛かりな実験をやってみせる

 「大科学実験」

というミニ番組がある。先日の土曜日夜は、ゾウの体重を、どのようにして測定するかという難問に挑戦していた。

 大きな筏(いかだ)を川に浮かべ、その上にゾウをなんとか乗せ、筏の沈み具合を調べる。ゾウを下ろして、代わりに人間をその沈んだところにまで何人か乗せる。個々の人間の体重を体重計で測定し、それらを合計するというわけだ。結果に約1%の誤差しかなかったのには驚いた。

 この単純な実験も、保存力という重力の性質を応用したもののひとつである点で、割り箸の実験と基本的に同じなのだ。

 40数年ぶりに、高校物理を思い出したゆかいな一日だった。実験のおもしろさとともに、やはりボランティアはしてみるものだと実感した。

    (写真下は、浜松科学館の外観) 

 ● 注記 大科学実験  2013年6月22日夜「Eテレ」テーマ=高速スピン 

  回転木馬のメリーゴーラウンドのような回転する円錐形の底面円周に均等に4人が乗り込む。乗ったままゴーランドをスタッフが外からグルグル回し、手を離す。

 そこから、しばらくして、4人が一斉に調子をあわせて、ゴーラウンド円錐の頂点近くまでよじ登る。

 すると、ゴーラウンドの回転速度はスピードアップするのがわかる。これは、水平方向には外力がないため、移動に伴う角運動量は一定に保存されるからだ。

 角運動量、つまり運動量のモーメントというのは、円錐中心からの距離、Lと乗っている人の重さの合計、mそして、回転スピード、Vとすると

 L×mV = 一定

となり、よじ登ることでLが短くなる分、ちょうど回転の速さ、Vはそれに反比例して大きくなるというわけだ。

 実際の実験でも、Lが半分くらいになるまでよじ登ったところでの、回転周期はおよそ倍くらい速くなっていた(すなわち、クルクル回る周期は倍くらい早くなっていた)。

 割り箸の場合は、上下の重力の方向にクルクル巻きつくのだが、重力は保存力なので、大科学実験の水平の場合と同様、巻きつくほどに回転の勢いは速くなる。

 これが、浜松科学館での実験のもう一つのからくりなのだ。

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