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監視の「番犬」から、権力の「飼い犬」に

Erarrowclicktopright3576_aa300_sh20 (2013.06.17)  たまには新書というお手軽な本もいいと思って、最近刊の

 『新聞消滅大国アメリカ』(鈴木伸元NHK記者。幻冬舎新書。写真上)

を手にとった(写真)。ブログ子は最近まで日本の新聞業界にいたこともあり、興味を持った。アメリカの危機的な状況は、10年後の日本であることを思うと、この本を読んでゾッとした。

 一言で言えば、IT技術の普及に伴う紙メディアの経営難から、各社ともにすさまじい人員削減が行なわれている。そのせいで、いまや権力を監視する番犬のはずの日刊紙が、権力の飼い犬に堕落する瀬戸際にまで追い込まれているというのだ。

 ● NYTは3年間で1400人解雇

 何しろ、2009年までの3年間で、あのニューヨークタイムズ(NYT)紙が記者を含めて社員数の3分の1に近い約1400人も解雇した。ワシントンポスト紙も、全支局を廃止した。西海岸でも、有力紙のサンフランシスコクロニクル紙が半数を解雇というすさまじさだ。

 同著によると、この3年間で全米で約50日刊紙が消滅したという。企業買収の盛んになっているというし、その後もますます、解雇は加速しているという(補遺)。

 ● 日本は宅配制度と再販制度に守られて

 これに対し、日本の新聞業界にはかってに販売価格を変えることを禁止する

 再販売価格維持制度(通称、再販制度)

というものがある。日本は自由主義経済の国なのに、新聞だけは売主が勝手に値引き販売ができない。1部買っても、まとめて10部買っても値引きはできない。値引きは違法なのだ。きわめて変則的な独占禁止法の例外規定だ。

 新聞はほかの商品とは違い、言論の自由を守る商品特性があるとの美名のもとに、国民にほとんど知られずに、これまで〝ひそかに〟存続し続けてきた。

 新聞は、唯一のこの再販品であることで、販売店のすみわけ、地域割りが定着。過当競争を排除し、戦後60年以上にわたって経営を安定させてきた。

 新聞以外の書籍も再販品だが、最近では「自由価格本」という名で、新本でも割り引きができるやり方が、少しずつ普及してきた。しかし、新聞業界には、

 値引き可能な自由価格新聞

というものは、一切、存在しない。

 ● 日本はこの10年で年率2%ずつ人員削減

 Image1114 どのくらい経営が安定しているか。

 日本新聞協会が発行した

 「データブック 日本の新聞2010」(写真下)

によると、協会加盟の新聞・通信社社員総数の推移では、2009年の10年間では約6.0万人(1999年)から、毎年2%程度ずつ減少、2009年には約4.9万人に。総売上高の減少に比例する割合で、ゆるやかに減少している。

 日本はアメリカとは違って、業界保護の再販制度や、それを前提とする宅配販売店テリトリー制があるために、今の制度のままでは激変は考えにくい。事実、加盟の日刊新聞社が潰れたという話はない。

 ● 「対岸の火事」視はできない

 しかし、独禁法の〝鬼子〟である

 再販制度はいずれ崩壊する

というのが、世界の流れからみて業界の常識。いつまで持ちこたえられるかが焦点なのだ。その制度が土壊した時、すなわち国民がこの制度を支持せず、見放したとき、そのときは米業界同様、業界再編や、さらには企業買収による御用新聞の続出など

 弱肉強食の新聞戦国時代

がやってくるだろう。

 果たしてこのことがいいことなのか、どうか。世界で最もジャーナリズムの盛んな米業界の今後をみればわかるだろう。

 ブログ子の意見は、再販制度の維持は、悪名高き鬼子ではあっても、国民の利益を守る必要悪であると考えたい。それには、社説や評論など、ますます国民の側に立った新聞づくり、論説記事の多様化と強化が重要になってくる。

 そういう意味で、米業界の今の動きは、「対岸の火事」視はできない。10年後の日本の新聞界を占う契機であり、

 他山の石

にすべきである。

 補遺 ワシントンポスト紙もついに身売り 2013年8月6日

 そして、ついには、長年収益が減り続けていた米有力紙、ワシントンポスト紙も

 アマゾン創業者のCEO(ベゾフ氏)に個人買収される

という深刻な事態に至っている。なにしろ、過去5年間で営業収益が半減するという深刻さだったらしい。ネットビジネスを中心に新聞改革を行い、経営を立て直すという。

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