« このごろ日本で流行るもの | トップページ | 監視の「番犬」から、権力の「飼い犬」に »

そんなに急いでどこへゆく 時計展に行く

Image164620130615 (2013.06.15)  自宅近くにあるせいで、土曜日の午後、散歩がてら浜松市博物館(浜松市)に出かけた。「時の記念日」(6月10日)ということもあるのか、

 市民コレクター展「掛け時計と変わり時計」

というのをやっていた(写真上)。

 収集した浜松市在住の黒田清孝さん自身の解説が、時計職人らしい実直な話ぶりでなかなかおもしろかった。

 高度経済成長前の昭和30年代の掛け時計の精度をお聞きしたら、

 「一日にして3分くらい」

と即座に答えてくれた。いまなら1カ月3分くらいが、がまんの限度だろう。ということは、

 今は、50年以上まえの30倍もせかせかしている

ということになる。ゼンマイ仕掛けの掛け時計のなかった江戸末期から明治初期では、一日の長さが季節によって一定していなかった。このこともあり、1日30分の精度、つまり「一刻」の四分の一の精度があればいいほうらしい。

 ということは、

 いまは、明治初期ごろに比べ、300倍も忙しい時代

ということになる。前回のこのブログで取り上げた池内了さんの

 急ぎ過ぎる現代

というのも、むべなるかなという感慨を持った。

 なにしろ、最近の株式のコンピューター売買では、1000分の1秒差が勝負というのだから、驚く前にあきれてしまう。

 ● 占領下でも日本は時計輸出国

 さて、振り子の等時性を利用したその掛け時計。日本では

 明治初期から中期にかけて、アメリカ製の

 八角合長型やダルマ型(いわゆる四つ丸型)

を輸入することで普及した。この間、国内でも試作が始まり、明治20年代には国産品が量産された結果、輸入は激減したらしい。

 大正時代になると、逆に日本は、その精度の良さから時計を海外に輸出するまでに成長する。アジアだけでなく、フランス、イギリス、そしてアメリカへも輸出した。

 昭和に入り、目覚まし時計なども出回ったという。そして、戦後の米軍占領下でも、時計は輸出品であり続け、

 Made in Occupied Japan

という〝ブランド〟で海外に届けられたほど日本は 

時計の国

となっていた。展示会場には、このときの丸型金属製の目覚まし時計が展示されていた。実に精巧なつくりに感心した。

 ● 動力源の変遷をたどると

 この歴史を、時計を動かす動力源に着目して考えると、

 江戸時代の櫓時計は、おもりが少しずつ下に落ちる分の位置エネルギー利用の水平時計

 明治以降のゼンマイ時計は、ひずみという弾性エネルギー利用の振り子垂直時計

 最近の水晶時計(クオーツ)は、電池エネルギー利用の発振時計

というふうに変遷してきた。

 江戸時代前にも、奈良時代以前には

 漏刻という水時計があった。これも動力源は水の重力位置エネルギーを利用している(注記)。

 さらには、それ以前、日本ではほとんど使われなかったものに、

 日時計

がある。これは、日影棒の影の位置から時刻を知る装置。大きな特徴は、時計自体を駆動させるにはエネルギー源を必要としない点である。太陽の存在を前提に、その地上に現れる影だけで時刻を知る方法だからだ。だから、表示板は水平時計でも、垂直時計でもいい。

 こんな方法がエジプトでは紀元前3000年も前にはすでに利用されていたらしい。

 Image1655 実際は、その起源はもっと古いだろう。

 最近では、おもちゃ時計(装飾インテリア時計)も人気だという。おもちゃ時計といっても、遊び心のあるこったものであり、写真下は、展示会場にあったもの。

 ● 時間は十分にある。  

 有名な皮肉屋の『悪魔の辞典』には、「時計」の項目にこうある。

 人にいかに多くの時間が残されているか、気づかせてくれて、その人の未来に対する不安を和らげる、人間にとってきわめて大きな精神的価値のある機械。

 時間は十分にある。本当に「時間がない」のは死んだ人だけなのだ。そんなことをこの警句は皮肉っている。なにもそんなに急ぐ必要はない。時間は十分にあると。

 注記 

 時の記念日については、

 日本書紀によると、

 太陽暦の671年6月10日

に公式に、この水時計「漏刻」で時刻を告げたとある。このことから、6月10日を時の記念日としている。天智天皇のころにはもう水時計があったことがわかる。

 今の奈良県明日香村には、謎の石造りの水関連施設が多く散在しているが、この中にはこの漏刻もあったように思う。

|

« このごろ日本で流行るもの | トップページ | 監視の「番犬」から、権力の「飼い犬」に »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533942/57599594

この記事へのトラックバック一覧です: そんなに急いでどこへゆく 時計展に行く:

« このごろ日本で流行るもの | トップページ | 監視の「番犬」から、権力の「飼い犬」に »