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その時、南海トラフ「浜岡」は海側に傾く

Image1674 (2013.06.21)  前回は「しんぶん赤旗」を取り上げたので、今回はバランスをとって、業界寄りの月刊誌(発行=エネルギーフォーラム社)の

 「月刊 エネルギーフォーラム」2013年6月号

を取り上げる。トップ記事は

 〝六ヶ所〟を狙い撃ち!

   「新規制基準」の深謀遠慮

という記事(写真上)である。ジャーナリストの山崎康志氏の取材記事なのだが、規制委の次のターゲットは、

六ヶ所再処理工場(日本原燃、青森県六ヶ所村)

だというのだ。ここは原発で使用済みとなった燃料棒からプルトニウムを取り出し、再び、もんじゅなどの高速増殖炉などで使えるようにする施設。

 使用済み燃料棒の再処理を待つための工場隣接の中間貯蔵施設(日本原燃、青森県むつ市)も視野に入れているという。いずれも、もんじゅと並んで日本の核燃料サイクル政策を支える最重要プラントである。

 ● 今、六ヶ所再処理工場はどうなっているか

 深謀遠慮というのは、現在の地震学では予知は困難であることから、起こりうる最大の地震が原発敷地直下で起きることを想定した耐震設計が求められるという点。

 これまでは起こりうる地震を想定したのが、新基準が適用されるこれからは、起こりうる最大の基準振動を前提にして耐震審査が実施される。

 これまでせいぜい500ガル程度の加速度に耐えられればよかったものが、南海トラフ「浜岡」並みの1000ガルが求められかねない(浜岡の場合、東北大震災を受けて、最近、中部電力は自主的に基準振動を約1000ガルから1900ガルに倍増する補強対策を打ち出している)。

 ところが、原発とちがって、再処理工場はすでに試運転などでプラント内部は高濃度の放射能で汚染されている。つまり、配管などを耐震補強しようにも、それが極めて困難なのだ。もはや一から建設しなおす必要が出てくるというわけで、その打撃は大きい。

 耐震補強は再処理工場の稼働の死命を制することになる。規制委はこれを狙っているというのが、記事のポイント。

 かてて加えて、この六ヶ所村のある下北半島の東方沖には、まじかに南北に走る

 大陸棚外縁断層=下北半島沖撓曲(とうきょく=たわみ)帯

が84キロにわたって存在することが最近わかった。地震を起こせば、M8クラスの巨大地震の可能性がある。

 この帯は、活断層である可能性がきわめて高い。専門家によると、下北半島の東海岸沿いに段丘やたわみなど過去に地盤の隆起を示す地形が多く存在するからだ。こうなると再処理工場や中間貯蔵施設はこれまでのようなM7クラス耐震ではなく、M8クラスの耐震性が求められる。万事窮すとなる(この地域、東通村には同居の東電の東通原発、東北電力の東通原発もある)。

 だから、規制委は、再処理工場がこの秋、10月に竣工しても、完工に必要な使用前検査を受けさせないらしい。その前に、12月に出来上がるサイクル施設の新規制基準の審査をクリアした後に、使用前検査を行なうという手順を示しているという。

 Image916 審査で何を確認するかというそのサイクル原子力施設用の審査ガイドによると、

 海底に顕著な変動地形が認められる場合にも (中略) (変動地形の直下に)活断層を想定する必要がある

となっている。

 当然、審査官はこの点で活断層であるかどうか、ガイドに従って申請事業者の日本原燃に確認することになる。活断層ではないことを具体的に示すデータが提出されない限り、稼働はできないことになる。論法としては、活断層ではないというデータが示されないときは、想定どおり、敷地直下に活断層があるものとみなされるのだ。あれば原発立地はできない。

 立地してしまったものは仕方がないという論理は、新基準では原発版リコール制ともいうべき

 「バックフィット制」の適用

で、通用しなくなった。

 車同様、古かろうと新しかろうと、すべての原子力施設は最新の規制基準に適合しなければならなくなったのだ。

 ●浜岡原発にも、巨大な遠州灘撓曲帯

 実は、写真中の遠州灘に面する南海トラフ「浜岡」にも、直下に活断層をうかがわせる遠州灘撓曲(とうきょく)のあることが、名大大学院の鈴木康弘教授(変動地形学)らの調査で福島原発事故後に明るみに出た。

 東京新聞朝刊の記事(2011年7月17日付)は以下の通りである。

 浜岡原発直下に活断層 名大教授ら指摘

 中部電力は存在を否定

 = 「tokyo_web.mht」をダウンロード 

 7610807844_58e1922f50_2 この件については、当時の保安院の専門家からなる審議会でも議論された。中部電力も海底の地質構造を探るため海上音波探査を行なった。しかし

 「撓曲帯に対応する海底地層の変化はみられない」

として活断層の存在を否定した。ただ、この探査では海底下約5キロより深い海底地下構造について調べることができない。このこともあり、

 「中電の説明は十分ではない」

との宇根寛氏(国土地理院測量部長)など複数委員の意見が審議会で示された。この問題は現在も、先延ばしされたままであり、未決着なのだ。

 ● 地すべりでプラントが倒壊

  7610807690_30aee70edb_3 仮に、撓曲帯の真下に、想定どおり活断層があって、南海トラフ巨大地震に伴って、この活断層が動いたとすると、どうなるか。

 これにこたえたのが、活断層調査に詳しい東洋大学の渡辺満久教授(変動地形学)。同教授へのインタビューの様子を伝えた「You Tube」(2012年7月20日公開)によると、

 原発が立地する地面が(不等に)隆起し、地盤は地すべりしながら海側に大きく傾く。この地すべりに原発は耐えられないだろう

というのが教授の見立てである(解説図)。この重大な見解は、浜岡の場合、福島原発事故とは様相が大きく異なることを示しており、注目される。

 地盤の不等な海側への地すべり隆起で

 原子炉の緊急停止に失敗し、核暴走が起きるか、

 あるいは、原発の敷地が地盤ごと大きく海側に傾き、核暴走のまま、プラント全体が倒壊する

 そんな事態が予想される。つまり、津波という福島原発とはまったく異なる事態である。

 これに対し、防潮壁うんぬんという対策ばかりが注目されているが、これなど見当違いになりかねない指摘だ。原発敷地全体が大きく海側に傾き、プラントがズタズタに倒壊または崩壊する危険があるという問題だ。

 核暴走で原子炉が爆発したチェルノブイリ事故の悪夢。これが、巨大地震と同時に再現されることになる。まさに考えたくもないことが、南海トラフ「浜岡」では起きる可能性が高い。こうなると、即時避難区域は、30キロ圏どころではすまないだろう。

 ● 活断層調査、やり直しを

 渡辺教授は、インタビューで

 「浜岡原発を含めて、これまでの原発施設の活断層調査は、あまりにずさん。専門家は何をしていたのか。きちんと評価し直すべきだ」

と訴えている。当然の主張だ。

 今からでも遅くはない。静岡県民として真摯にこの声に耳を傾けたいし、傾けなければならない。少なくとも、撓曲帯下の断層を含めて、やり直しの敷地内活断層調査がすむまでは、再稼働は認めるべきではない。それを県民の総意にしたい。

 冒頭に取り上げた月刊誌にならえば、再処理工場問題の次には

 南海トラフ「浜岡」が狙い撃ち

にされるに違いない。静岡県民としてブログ子は、これは歓迎すべきことと考えたい。

 ● 中電、今が絶好の機会

 業界が右を向いているからといって、自分まで、無分別に右に向く必要はない。

 電力会社として原発を持たないと、業界内で肩身が狭い。そんな時代は遠い過去の話ではないか。原発を持たないクリーンな姿勢は、自民党が今推し進める電力の完全自由化を控えて、かえって消費者に大いにアピールするだろう。

 メリットは、それだけではない。

 廃炉を決断するとしたら、今なら痛手は小さく、長い目でみると、原発依存度の低い当の中部電力がもっともその恩恵に浴することになる。関西電力のような原発依存度の高い事業者では、言葉は悪いが、もはや手遅れのような気がする。

 浜岡原発について、ただちに廃炉とこのまま当分は停止継続の意見をあわせると静岡県民の6割近い。このことを考えると、県民はもちろん、脱原発=原発依存度ゼロの国民からも、廃炉決断の中電は大いに賞賛されるだろう。

 中部電力は、福島原発事故をしでかした東電の愚かな二の舞を演じてはなるまい。今が、堂々たる大義名分が立つ絶好の機会である。

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