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「花は咲く」になぜ違和感を覚えるか

(2013.06.05)  常識を一度疑えというこのブログの趣旨に賛同していただいているある熱心な読者から、例のNHKの

 東北復興プロジェクト・ソング「花は咲く」

に違和感を持つのは、私一人でしょうか、とたずねられた。

 Image1505_2 実は、ブログ子も、この歌に違和感を覚ええた一人であることを正直に遅まきながら、告白しておきたい。

 いかにも、NHKらしい、そう「らしい」歌なのに、いやな感じがぬぐいきれない。

 最初は、歌詞がふわふわして、どこにも具体性がないというのが、理系出身のブログ子としては不満であり、それが原因だと思った。

 しかし、あるとき、気づいた。

 繰り返し歌われる間に、この具体性のないふわふわした感じが、東北震災で忘れてはならない何か大事なものを、こっそり忘れさせる効果があることに。

 語弊があるかもしれないが、あえて言えば、「いやし」というよりも、〝いやしい〟歌だと気づいた。力が出なくなる歌なのだ。

 ● 反戦歌「花はどこへ行った」の具体性

 そう思うようになったのは、ブログ子が団塊世代であることと無関係ではないだろう。

 祈りのベトナム反戦歌「花はどこへ行った」

を、1960年代の高校生時代に、同世代のアメリカ人留学生とともに英語で歌った経験がある。

 原題は

 Where Have ALL The Flowers Gone ?

である。高校生ながら、ひどく心を揺さぶられたのを今も覚えている。

 この歌の原型がつくられたのは1950年代、つくったのは、今は知る人も少なくなったが、アメリカの教祖的なフォークシンガー、

 この歌は、何かを思い出させる歌であり、また、行動のための歌なのだ。

 そのことは、歌詞の、具体性からもわかる。

 1番から5番までの構成は、次のようにつながっている。

 花はどこへ行った。少女がつんだ。

 少女はどこへ行った。男の下へ嫁に行った。

 男はどこへ行った。兵隊として、戦場へ。

 兵隊はどこへ行った。死んで墓場に行った。

 墓石はどこへ行った。花で覆われた。

となり、元に戻って

 (その)花はどこへ行った。(注記)

 ここには、いつまで戦争に明け暮れているのか、という、静かではあるが、具体的で強烈なメッセージ性がある。忘れてはならないものが歌い込まれている。行動しなければ、という力が湧いてくる。

 「花は咲く」

にはこれがない。自己満足や、いやしのマッサージではこまる。

 ● 原因は具体性とメッセージ性のなさ

 あえて、言い換えれば。

 「花はどこへ行った」は、そのメッセージ性のゆえに、歌をうたう「つらさ」を教えてくれた。

 これに対し、「花は咲く」は、そのメッセージ性のなさゆえに、歌をうたう「気楽さ」を押し付けられた。

 これこそが、違和感の原因であり、建前を押し付ける失望感のおおもとであろう。

 しかも、このプロジェクトが善意とビジネス抜きで続けられているだけに、事態はより深刻といえるだろう。思いとは、逆の効果を生んでいるからだ。

 読者からのこの問いかけに、

 NHKは正義であるという〝常識〟

を一度疑ってみるという、なかなか勇気の要る姿勢を教えられた。

 注記

 この歌詞についての詳しいことは、

 「Wikipedia」の「花はどこへ行った」を参照してほしい。

 ● 補遺 

 この心に響く名曲、もともとは、

 ミハイル・ショーロホフの小説『静かなドン』

のなかに出てくるコサック地方の子守唄から、1955年にシーガーがインスピレーションを受けて3番まで一気につくったらしい(本人のインタビュー証言)。

 2013年6月放送のBSプレミアムアーカイブス「世紀を刻んだ歌「花はどこへ行った」)によると、飛行機に乗っていたシーガーは、わずか20分くらいの間に3番まで仕上げたという。

 その後、別の人物が4、5番を加えて、現在の形に完成された。

 ショーロホフ自身の戦争体験も交えた『静かなドン』のメッセージは、

 戦争の悲劇は、戦場だけではなく、すべての人々の日常にもおよぶ

というものであり、ベトナム反戦歌にも通じるものがある。

 この歌が、もっとも世界に喧伝されたり、歌われたりしたのは、北爆開始などベトナム戦争が本格化する1964年から、ベトナム・テト攻勢など米軍の敗色が濃くなった1968年前後。ブログ子が留学生とともにこの歌を高校でうたったのも、ちょうどこの時期にあたる。

 当時、アメリカのフォークグループ、PPMがうたって世界的にヒットしたのを記憶している。

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