« 泣いて馬謖を斬る その真相とは | トップページ | 「テレビの消える日」は来るか 放送60年 »

重圧と緊張との闘い 「江夏の21球」

(2013.06.26)  このような土壇場のスポーツドラマというのは、最近の例で言えば、

 サッカーW杯出場を決めた本田圭祐のど真ん中PK

であろう。後半ロスタイムという土壇場のPKで、日本はオーストラリアに1対1と追いつき、引き分けに持ち込んだ。勝ちはしなかったものの、絶体絶命の試合を救った。

 Dsc0177321_2 本田選手は、蹴る直前、ゴール右を狙ったのだが、キーパーの微妙な動きを察知、足の蹴り角度を瞬時に変更、ど真ん中に蹴り込んだ。これが、サッカーに詳しい人の解説だった。

 ブログ子などは、最初から決めていた度胸満点のど真ん中シュートと思っていたが、そんな単純なものではなく、読みに読んだ上での

 一瞬の駆け引き

の結果らしい。そうかもしれない。

 ● 押しつぶされた近鉄、はねのけたリリーフ

  深夜、NHKプレミアムアーカイブス、

 江夏の21球

を見た(写真上= 同番組画面より。以下、同じ)。

 小雨の降る大阪球場。1979年の日本シリーズ、広島対近鉄、互いに3勝で迎えた最終の第7戦。広島1点リードで迎えた9回裏、リリーフ、江夏豊投手が近鉄打線に投げた21球の攻防を、選手、監督の心理にまで踏み込んでつぶさに解説したスポーツドキュメンタリーである。放送は、いまからちょうど30年前の1983年。

 原作は、若きノンフィクションライター、山際淳司の出世作『スローカーブを、もう一球』所収の「江夏の21球」(初出はスポーツ誌「ナンバー」(1980年))らしい。

 見た感想を先に言ってしまえば、

 この一戦の、そのまたこの回に、どちらの球団も初の日本一がかかっているという重圧と、その重圧をはねのけ、押しつぶされまいとする肉体的な、そして精神的な緊張との闘い

だったといえる。その重圧と緊張から、

 Dsc0175119 神技の1球、つまり第19球

が生まれた。押しつぶされたのが近鉄。はねのけたのが広島なのだろう。

 このことは、本田選手の場合のPKでもいえる。後半ロスタイムのこのPKに日本のW杯出場がかかっているという重圧である。そこから、神技の一蹴が生まれた。

 ● 運命の絶体絶命の第19球は「神技」

 ドラマは、ノーアウト満塁で迎えた第17球から始まった。江夏は代打、佐々木を空振り三振に討ち取る。

 そして、次の打者、石渡茂への第19球でドラマは最高潮に。依然、1アウト満塁。

 江夏は、警戒していた広島のスクイズを外し、「ストライク」。スクイズ失敗をさそった(写真中 = 運命の第19球)。この絶体絶命の1球を、江夏は自ら、外したのは「神技」と言い切る(写真下)。練習してできるものではない。また偶然に外れたのでもないと番組で語っている。

 それにしても、敗将、西本幸雄監督のよくよくの不運と無念を思った。それというのも、西本監督は8度のリーグ優勝を飾ったにもかかわらず、この江夏の21球の試合も含めて一度も日本シリーズを制覇していないからだ。

 それは、ともかく、明暗をわける勝者と敗者、勝負の世界は、なんと厳しいものなのだろうとも思った。

 Dsc01761 この年、1979年というのは、あの江川投手がドラフト指名で阪神に入団、即時トレードで巨人に移籍(交換相手は小林繁投手)という前代未聞の出来事があっただけに、一層、真っ向勝負のすごみを感じた。

 伝説的なこの勝負をみて、これこそがスポーツの醍醐味だという気持ちにされられた。

 スポーツは、小説より劇的なり

ということを思い知った。

 それに比べ、ひるがえって、自分は、立ちはだかる壁に、ひるむことなく立ち向かってきたことがこれまでの仕事にあったかと問われれば、正直、忸怩たる思いがした。

 ● 参考文献 江夏の21球

 このドキュメンタリーについては、参考文献として

 フリー百科事典ウィキィペディアの項目に

 江夏の21球

がある。全21球それぞれについて、1球ごとに時々刻々の変化の様子がわかるように、一覧表にわかりやすくまとめられている。

 ただ、臨場感のある映像の視覚効果には、かなわないような気がする。

 この作品原作の完成後まもなく病魔に襲われた山際淳司氏の早世が惜しまれる

|

« 泣いて馬謖を斬る その真相とは | トップページ | 「テレビの消える日」は来るか 放送60年 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533942/57669414

この記事へのトラックバック一覧です: 重圧と緊張との闘い 「江夏の21球」:

« 泣いて馬謖を斬る その真相とは | トップページ | 「テレビの消える日」は来るか 放送60年 »