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後からわかる「後知」 東海予知は困難

(2013.06.02)  内閣府は東海地震など南海トラフで起きる巨大地震について、前兆現象など現在の手法で予知するのは困難とする専門家による最終報告をまとめた。それが写真上の

 東海地震 予知は困難 「前兆滑り」検知限界

というニュース(中日新聞2013年5月29日付)。東北大震災を受けての政府としての対策最終報告である。

 ● 現状は予知ではなく「後知」

 今回のような巨大地震でも、また地震発生直前になっても前兆滑り(固着域のプレスリップ)がそもそも検知しにくい、あるいは検知したとしてもそれが前兆滑りかどうか、そしてそれが巨大地震発生に直結するのかどうか、科学的に判断しにくいというのが結論の根拠である。

 はっきり言えば、前兆滑りかどうかは、地震が起こってみなければわからないというレベルなのだ。その地震が起こった後でしか、予知はできないというわけだ。こんな話では、政府が警戒宣言など出せるわけがない。

 今回の報告書を要するに、今の予知研究は、予知ではなく「後知」ということになる。もっと言えば「後知恵学」なのだ。

 きつい言い方をすれば、基本的に占星術と変わらない。むしろ科学的な装いをしている分、たちが悪い。

 ● 「前兆滑り」の検知Image161020130529 に限界

 ブログ子は、この記事を読んで、いまさらながら16年前の結論を再確認しただけではないかという、いきどおりを感じずにはいられなかった。

 16年前、阪神大震災を受けて、このニュースとまったく同じ最終報告書(1997年6月)を文部科学省(当時は文部省)の測地学審議会地震火山部会という専門家部会がまとめている。

 写真下に示すように、文言、言い回しまで同じ。

 念のため、16年前の結論の部分を抜き書きしてみると、次の通りなのだ。

 「前兆現象の複雑多岐性を考えると、同じ現象が「東海地震」で繰り返されるという保証は必ずしもない。地震に至る過程が上記と時間的経過が著しく異なる場合、或いは地殻変動の振幅が小さい場合、「東海地震」の予知は困難である。予知が可能となる場合はどの程度なのかとの疑問を生ずるが、残念ながら昭和19年(1944年)東南海地震の事例のみからでは、予知が可能である場合の確率を推定することはできない。」(測地学審議会「レビュー報告」1997年6月。写真下)。

 この「中日」1面準トップ記事は、トップの南海トラフ対策最終報告

 家庭で備蓄1週間分

の記事の重みを読者に知らしめる役割を演じている。予知に頼るな、というわけだ。地震予知ほど国民の期待と専門家の見立てにおいて隔絶を露呈した分野も少ない。

 ● 家庭備蓄1週間分の覚悟

 日本が、いわゆる「ブループリント」立案により地震予知に本格的に動き出して、今年で50年。

 それだけに、警戒宣言など予知に頼よってきた防災の弊害を、今後いかに少なくするかが、大きな課題である。

 要するに、予知ができるという大前提の上に、

 警戒宣言が発令される

 今回の最終報告書は、結局は家庭での備蓄1週間分に落ち着いた。

 巨大で、広域の震災が予想される南海3連動地震では、救援はこれまでの3日ではなく、1週間以上も遅れるという覚悟が要る。道路、鉄道が広域にわたって寸断され、物流が大混乱するからだ。

  ● 静岡県民の責任重い知事選

 ここで、忘れてならないのは、この政府の対策最終報告書でも、南海トラフ「浜岡」原発事故が想定されていないことだ。また、南海トラフ「富士山」噴火も含まれていない。これでは、現実的ではない。実際の役に立たない可能性が高い。

 これらの問題は、政府に下駄を預けておけばいいという問題ではない。静岡県を中心に中央政府とが密接に関連して解決をしなければならない問題であろう。

 静岡県の知事選挙が始まっている。南海トラフ「浜岡」の再稼働も争点である。具体的には再稼働の可否や、廃炉問題をめぐる県民の総意づくり、すなわち住民投票条例づくりの可否に対する知事の態度が争点である。

 次期知事に、だれが当選しても、これらの問題と真正面から取り組まなければなるまい同時に、原発震災加害者になりかねない静岡県民の国民に対する責任も重い今度の知事選挙といえる。

というこれまでの防災体制を根本から見直す必要がある。予知に頼らない新たな防災態勢づくりを急がなければならない。

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