« なぜイボニシ貝は福島の海岸から消えたか | トップページ | 人生万歳、わが愛しのカツオたち »

後を絶たない科学者のニセ論文

Image1468nature20132_2 (2013.05.10)  宗教裁判で、地動説の撤回を迫られたガリレオ・ガリレイは

 「それでも地球は動く」

とつぶやいたという。事実かどうかはともかく、身の危険を犯してまでも科学者が真実を追い求める固い信念が、うかがわれる。

  ところが、現代の科学者は、

 「それでも、ニセ論文を書く」

と、どうもうそぶいているらしい。

 ● 撤回論文のトップは改ざんやねつ造で4割強

 医学や生化学などの生命科学分野で、国際的にかなり有名な科学論文雑誌にいったんは掲載されたものの、著者自ら取り下げた、あるいは取り下げさせられた論文について、どういう理由で撤回となったのかという分析記事が有力科学雑誌「Nature」の最近号に掲載されている。

 そのダイジェストが「日経サイエンス」(2013年2月号)に紹介されている(写真)。

  それによると、撤回論文の67%、つまり3分の2は、なんとデータなどの改ざん、してもいない実験をあたかもしたかのようなでっち上げ(ねつ造)、二重投稿、他人の論文からの盗用・剽窃などだという。その中でも多いのは、悪質極まる改ざん・ねつ造やその疑いで、撤回論文のうち43%にものぼる。これに対し、比較的に罪の軽い意図しない単純ミスというのは21%にすぎない。

 こうした撤回論文では、研究資金に公金が使われている場合を除けば、刑事責任が問われるケースはまれであり、研究者の倫理違反の範囲で処理されている。刑事罰がないことが研究者にニセ論文を書かせる誘引となっている。

 では、なぜ、ねつ造やでっち上げ論文などのニセ論文が後を絶たないのか。刑事罰など不利益が少ない割りに、得る利益が大きいからだ。

 ● 見破られにくい事情も

 具体的には、一つは、有力学術雑誌に論文が掲載されれば、研究資金が得やすい、二つ目は研究者の評価やキャリアの向上にもつながりやすいというメリットがあるからだ。

 これらを支えているのが、研究業績評価の論文数至上主義という研究社会のシステム。論文をたくさん書かないと遅れをとるという焦りがニセ論文に手を染めさせる。

 焦りがあり、その上、あまつさえ、生命科学分野では、物理学と違って、再現実験がなかなか難しく、データの改ざんやねつ造を行なっても厳格なチェックができにくいという事情が重なる。これでは、ニセ論文という詐欺的な誘惑を思いとどまらせるのは難しいだろう。

 ● 患者を危険に陥れる犯罪

 こう考えてくると、意図しない「単純ミス」が、果たして本当に意図しないものだったかどうかは、微妙。単純ミスに分類された2割強の多くは、研究者としての体裁、あるいは審査するレフリーの体面、さらには掲載学術誌の面目をつくろっただけというのが、実態だろう。

 さらには、ニセ論文と見破る有効な方法や防止策がなかなかないことをあわせると、今回見破られたニセ論文数は、ほんの氷山の一角と考えるのが妥当だろう。

 となると、ことは深刻だ。なぜなら、生命科学分野の場合、ニセ論文は、特に臨床的なニセ論文は、病気などに苦しむ患者の命に直接影響する場合が多くあるからだ。

 ニセ論文問題は、倫理問題というよりは、実は危険な犯罪行為なのだ。

|

« なぜイボニシ貝は福島の海岸から消えたか | トップページ | 人生万歳、わが愛しのカツオたち »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/533942/57354143

この記事へのトラックバック一覧です: 後を絶たない科学者のニセ論文:

« なぜイボニシ貝は福島の海岸から消えたか | トップページ | 人生万歳、わが愛しのカツオたち »