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「浜岡」では原子炉緊急停止は成功するか

(2013.03.20)  これらの番組をみて、ブログ子は

 南海トラフ「浜岡」は巨大地震発生時、果たして原子炉緊急停止(スクラム)に成功するだろうか

という恐怖心を持った。稼働中なら、まず失敗するだろう。地震探知から5秒程度で、どんなに長くても10秒ぐらいで原発に破壊的な揺れが襲う。数分後には巨大津波が押し寄せる。稼動中に地震が発生すれば、多分、原子炉内の核暴走と炉の崩壊で日本は破滅するであろう。

 東北大震災のような震源地から海岸まで100キロ以上もはなれていたにもかかわらず、原発は大惨事になった。震源真上の南海トラフ「浜岡」では何が起きても不思議ではない。

 震災直後、菅直人元首相が浜岡原発の停止を中部電力に強く要請したのは当然であり、法的な根拠うんぬんはともかくとして、むしろ英断だったといえる。

 ● NHKの2つの番組から

 これらの番組というのは、先日、NHKで放送された

 「メルトダウン 原子炉〝冷却〟の死角」と

 「何が書かれなかったか 政府事故調査」

である。

 Yjb 前者は、事故を起こした福島原発の1号機について、ICと呼ばれる非常用冷却復水装置が、電源がなくても自動的に動くはずなのに、なぜ冷却に失敗したのかという問題を検証したもの。機能していないことに気づかず、1号機は、最も早く燃料棒が融け始めるメルトダウンを引き起こし、ついに3月12日午後、水素爆発にまで至った(写真= 水素爆発の福島第一原発建屋。NHK)

 全電源喪失に加えて、ICの構造上の問題、機能していることを、〝ブタの鼻〟といわれるIC水蒸気吐き出し口の「モヤモヤ」の目視で確認する訓練を誰一人経験していなかったことなどが、その後の対応を遅らせたことが指摘されていた。

 機能しているかどうか確かめるために必要なIC水位計自体の信頼性も問題視されていた。

 後者は、非公開の政府事故調では、直接の事故原因を突き止めるという目的の中で何が書かれなかったのかについて、失敗学で知られる委員長だった畑村洋太郎氏など元政府事故調委員が私的な立場で自らを再検証したもの。

 書かれなかったことの第一は、原子炉の水位計の「誤表示」問題。なぜ誤った表示をしたのか。その理由を探る再現実験はなされなかった。失敗したら何が起きるのかという再現実験の必要性は認めても、その具体的な実験方法がわからず、あるいは構築できず、時間切れで報告書には書かれなかったらしい(畑村委員長は詳細な仮説まで提示したのに)。

 ● 原発事故原因の全容は未解明

 これを要するに、事故はなぜ起きたのかを突き止めるのが事故調の目的なのに、事故原因を特定する再現実験すら書かれなかったのだ。これでは事故原因の全体像は描けない。

 失敗の原因を特定し、それを再現する実験すら、委員長が提起したのに、できなかったというのでは、話にならない。これは一水位計だけの問題ではないはずだ。

 これでは、南海トラフ「浜岡」は、巨大な地震発生時、スクラムに失敗し、核暴走するのではないかという恐怖心を払拭することは到底できまい。

 元委員たちも不安そうに番組で語っていたが、

 報告書は、事故原因の特定には程遠い。事故原因の全容はどうだったのか。このままでは、政府事故調以外の事故調の報告書もふくめて、その原因解明の決定版がないままになる

というのが、番組の結論だった。

 書かれなかったことの第二は、事実上の実権を握っている中央省庁の課長の実名は出さないという官僚システムのあり方の問題。事故原因の解明という目的とは直接関係ないとして、事務局が報告書で取り上げることはなかったらしい。

 この問題は、事故原因の背景ではあるが、確かに直接の原因ではないだろう。しかし、こうしたことからもわかるが、委員自ら膨大な量の報告書を書かない限り、真の原因解明にはつながらない。

 ● 試される規制委の責務と覚悟 

 このような体たらくでは、浜岡原発を再稼働させることには到底納得できない。福島原発のメルトダウンの原因の特定ができていないのだから、当然といえる。

 政府事故調の目的を引き継いだ原子力規制委員会は、官僚に丸込められることなく、フォローアップをすべきだ。そしてなによりも事故原因の一つひとつの特定と、それらをつなぎ合わせた整合性のある原因の全容について解明し、実質的に仕切る必要があろう。

 それができないというのならば、廃炉しかない。そんな覚悟が規制委の委員には必要だ。

  原子炉設計技師でもあった大前研一氏には、福島原発事故を各号機ごとに時系列にそって詳細に検証した

 『再稼働 最後の条件』(小学館)

という報告書がある。この場合の条件とは、全電源喪失の阻止と冷却源の確保の2点である。しかし、浜岡原発のことを考えると、最後の条件の前提となる

 再稼働の安全審査入りの

 最初の条件とは、福島原発の事故原因の特定と、特定した要因の間の因果関係を明確にする全容の解明

である。これなくして、再稼働はない。規制委はこのことを明確に打ち出してもらいたい。この全容解明なしに、本当の意味の安全審査などはできないはずだ。この最初の条件は、東電の刑事責任を問う裁判でも争うべきだろう。

 これが二つの番組を見た率直な感想であり、怒りでもあった。

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