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ドイツ映画「みえない雲」を観て

(2013.03.19)  先日、小さな学習会で

 ドイツ映画「みえない雲」(2006年公開)

という映画を観る機会があった。ドイツでの架空の原発放射能漏れ事故をテーマにしていた。チェルノブイリ事故直後に想を得たドイツ人作家、G・パウゼバングが発表した小説『DIE WOLKE(雲)』が原作( 写真 )。

 51tmq4c0bl__aa160_ 上映会には、原発事故で福島県浪江町から浜松市に避難している女性も観に来ていた。このこともあり、上映後の互いの意見交換はいかにも真剣だった。件の女性は、福島原発事故では原子炉建屋の水素爆発の音まで直に聞いている。それによると、おおむねよくできた、つまり真に迫る映画であるとのことだった。

 ただ、福島事故も含めて日本の場合との違いも浮き彫りになった。

 まず、映画の(西)ドイツでは原発事故や放射能漏れを知らせる警報が街中に鳴り響く。しかし、これに対し、日本では、具体的には福島原発事故では、まったく公的な避難警報はなかった。それぞれの判断で、あるいは口コミで知って、それぞれの方向に逃げ出した。行政無線がほとんど役に立たなかった。

 第二は、映画では「地下室避難」が盛んに呼びかけられていたが、日本に地下室はほとんどないといっていい。パニック的な避難が起こった場合、ある意味では、自宅の地下室は放射能除けには有効かもしれない。日本では地下室がない分、パニックに陥らない避難訓練について十分徹底しておく必要があろう。

 パニックが起きるのは放射能や放射線がみえないからであり、その分、余計に恐怖心が増幅される。その意味で、これからは原発周辺住民は簡易線量計を身近においておく、あるいは使いこなすことが必要な気がする。

 第三。映画では、車避難がやはり主な避難手段となっていたことだ。通行止めや交通の大渋滞で大混乱が起きていた。

 日本でも、地震、津波避難ではこれまでは徒歩避難が原則だったが、やはり車社会という現実においては車での避難を前提に避難計画を立てざるを得ない。その場合、混乱の中、自転車避難や徒歩避難の人々が危険に去らされる。つまり、災害弱者対策を真剣に考えているかという問題である。映画でも、自転車で避難した子どもが急いで避難する車にはね飛ばされるという悲劇を描いていた。

 避難途中、放射能の降雨対策も、内部被ばくを未然に防止するという意味で重要だ。

 第四。せっかくなんとか避難できたとしても、脱毛などの急性症状の避難者は、被ばく差別を周りから受けるという問題を、映画は巧みに描いていた。差別との闘いが始まるのだ。この点の対策はほとんどないのが今の日本の現状なのではないか。

 第五。映画全体をみて思うのは、被ばく者の

 こころのケア

が極めて大事であるという印象を持ったこと。心身症やうつ病対策である。被ばく避難というのはとてもひとりでは乗り切れないほどの衝撃体験である。助け合いがなければ、せっかく生き残っても自殺などの悲劇が起こる。映画ではこの点も踏まえて映像化していたのが印象的だった。

 ただ、現実に、映画のような支えあいがうまく機能するかどうか、不安が残った。精神的に一人一人が強くなることも、日ごろの自助として大事であることも悟った。

 第六。映画では描かれていなかったが、こうした悲劇を乗越えたとしても、原発被災の場合、長期にわたる内部被ばくの不安との闘いが待っている。いわゆる半減期30年の放射性セシウム137問題である。不安はがんだけに限らないことも、ウクライナ政府のチェルノブイリ報告書(2011年)などによって最近わかってきている。いまもチェルノブイリの子どもたちはこれらにおびえている。

 いろいろ考えさせられる上映会だった。

  ● 補遺 脱原発を加速するドイツ最近事情

 ドイツは現在、4電力会社が17基の原発を稼働させている。ドイツ政府は2002年にすべての原発を2022年までに廃炉にすると電力会社と合意している。その後、2010年には国内電力事情に配慮して、10年程度の猶予期間(モラトリアム)を設け、廃炉期限を延長していた。

 その後、福島原発事故で、この猶予期間が取りやめとなった。つまりメルケル政権は脱原発(原発依存度ゼロ)に向け、当初予定通り2022年までにすべてを廃炉にする決定をしている。

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