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最後発の強みを生かす 自然史系博物館

(2013.03.25) もう50年以上も昔のことだが、まちなかの夏の夕暮れ、物干し竿を空に向けて振り回すと、面白いほどコウモリが棹にぶつかって、落ちてきたという思い出がある。子ども心にも、コウモリは、目のみえない鳥だと思った。そしてこの歳までずっとそう信じてきた。

 ● びっくりの「富士山の生きもの展」

 ところが、先日、ボランティアをしている浜松科学館(浜松市)の

 富士山の生きもの展

のコウモリの標本展示みて、ハッと気づいた(写真上)。

 Image806 コウモリは鳥ではなく、ほ乳類なのだと。富士山には10数種のコウモリがいるそうだが、いずれも鳥のような羽毛に覆われた翼ではなく、皮膚をひろげたような形だった。明きめくらだったのは、ブログ子のほうだった。

 さらに、標本をよくみると、半数近くの種が、富士山一帯では絶滅危惧種か準絶滅危惧種に指定されていた。しかも、残りのものは、「情報不足」という表示。つまり、その生息状況がよくわかっていないらしい。だから、もう絶滅してしまったのかもしれないわけだ。

 そんな思いで、展示をみていたら、さらに驚くべき解説が目に入った。なんと、

 富士山の鳥があぶない

というのだ。富士山一帯には、静岡県の県鳥、青い目の三光鳥など約150種くらいの野鳥が生息していたが、それがこの数10年で急速に種が減っているというのだ。このままいけば、なんと、1種類、それも中国原産の外来種

 ソウシチョウだらけ

になってしまうかもしれないという危機に富士山は今、直面しているらしい。とくに高原地帯の野鳥の減少が激しいという。

 たとえば、東部富士山麓の朝霧高原。静岡県内で唯一といってもいい高原地帯の草原なのだが、かつて、たとえば50年くらい前までは高原性の野鳥の宝庫。なのに、いまでは植林その他で森林化し、たとえば、

 ノビタキ、アカモズ、オオジシギの生息数の減少がとくに顕著

とあったのには、びっくり。

 美しい蝶の標本の数々をみると、これまた生息状況が大きく様変わりしているらしいことも展示で感じられる。

 ● 自然史系博物館の整備、4月から本格化

 しかし、最も驚いたのは、なんといっても、

 どの県にも必ずあると思っていたのに、静岡県だけには県立の自然系博物館がない

という事実である。地域の植物や動物、昆虫を体系化する標本づくりや保存・収蔵を手がけたり、その成果を県民に広く公開したりする県の施設がない。これでは貴重な資料が失われたり、県外に散逸しかねない。

 Image809 幸い、自然史や博物学に関心を持つ関係者たちの20年近い努力が実りつつある。自然系博物館、あるいは、少し絞り込んで自然史系博物館の整備が、静岡県によって、これまでの3年間の準備期間をへて、4月から本格化する。富士山の世界文化遺産登録の盛り上がりを機会に本腰を入れた格好だ。

 本拠地は、高校再編で使われなくなった静岡南高校(静岡市駿河区)。オープンは2014年度中を予定しているという。

 2012年4月5日付静岡新聞「社説」は

 若手学芸員の育成急げ

と主張している。構想の成否は一にも二にも、人材、特に若手の登用にあり、その通りだろう。その若手に、科学館の目的や機能とは一味も、二味も違う、いわば

 最後発という強みを生かした取り組み

を期待したい。

 たとえ一周遅れでも、多くの県民に愛されさえすれば、どの県よりも先頭を走っていると胸を張れる。新しい時代に対応した実物教育の場にしたい。

 (写真下は、生きもの展での「NPO自然史博物館ネットワーク」の呼びかけ掲示「静岡県に自然史博物館を!」)

 ● 補遺

 自然系博物館「必要」 川勝知事が議会答弁(2010年3月9日付静岡新聞)

  自然系博物館 学習の場の拠点に(「しずおか自然史」2010年3月28日付静岡新聞)

  自然史資料活動拠点 静岡南高活用を検討(2011年2月18日付静岡新聞)

  自然史系博物館構想 2013年度、本格的な移転整備に着手(2013年2月7日付静岡新聞)

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