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疑わしきは予防する 共同診療所訪問記     「3.11」福島ルポ

(2013.03.23)  先日、福島市に開院して3か月の「ふくしま共同診療所」を訪問した(写真上=診療所の外観。福島市内)。原発事故で放射線被ばくに健康不安を持つ県民に対し、甲状腺などのがんの相談に応じたり、甲状腺検査あるいは治療をする施設。まだ仮設の段階で、いずれ、本格的な診療所を開設する準備を今も続けているらしい。

 Image761それでも内科と放射線科が設けられており、院長は、国立がんセンター病院に38年間勤務し、放射線診断部医長もつとめた松江寛人医師。その後、がん総合相談センターを開設するなど放射線診断と治療のベテランである。

 ● 広島市の診療所がモデル

 この診療所の大きな特徴は、全国からの募金で開院されたことである。いわば募金診療所なのである。

 その意味で全国でも珍しい診療所ではあるが、参考にしたモデルがある。原爆被ばく2世らが独自に開設した

 高陽第一診療所(広島市)

だという。この診療所をはじめ全国7つのクリニックが放射線専門医師を派遣するなど協力している。

 これまでのところ来院の9割は親に連れられた子どもたち。超音波のエコー検査で甲状腺に異常はないのかどうか診断し、相談に応じているのが日常業務となっている。

 そのため、診療所には2つの診察室とレントゲン室が設けられている(写真下=診察室の様子。右手のベッドで超音波甲状腺エコー検査や触診をする)

 ● 大きい「セカンドオピニオン」の役割

 このような募金診療所が設けられた意義について、ブログ子は福島市を訪れて初めて気づいた。

 Dsc012242_2 というのは、福島県が県民健康管理調査の一環として現在行なっている子ども(対象は震災時18歳以下)の甲状腺「異常」検査が、検査結果の評価をめぐって必ずしも受診者から信頼されていないという現状を知ったからだ。受診者と医療機関との間でさまざまなトラブルが相次いでいる。

 検査自体は、県から委託された福島県立医科大学が全体を担当しているのだが、この事態を考えると、診療所は、いわば、患者側にたって専門的なアドバイスをする

 セカンドオピニオン(第二の専門医の意見・見立て)

の役割を担っている。ここに募金診療所の真骨頂があろう。

 もちろん、このほか、心ならずも県外に避難できない家族の健康不安に親身になって相談に乗りたいということも、ほかの医療機関にはないこの診療所の重要な存在意義だろう。

 ● 疑わしきは「問題なし」?

 この3か月の診療の具体的な様子については、別項で話す。が、要するに

 検査で、シロかクロかはっきりしない場合、多くの場合そうなのだが、とかく「シロ」、つまり問題なしとしている点。

 疑わしきは、問題なし

としている点だ。

 しかし、これは科学的ではない。シロかクロかはっきりしないということは、グレーであり、シロではない。さらに慎重に2次の精密検査、あるいは経過を見極めるというのが、つまり、

 疑わしきは、受診する県民の利益に

というのが医師のとるべき態度だろう。ましてや、甲状腺「異常」については疫学的に信頼できる大規模調査が国内にも国際的にもないに等しいのだから慎重を期すべきだ。つまり、ひょとしたら、検査結果の〝異常〟は原発事故と因果関係があるかもしれない。そんな謙虚さが検査機関には求められる。

 謙虚さどころか、再検査を「過剰診療」として制限しようというのでは

 医師の倫理にもとる

行為といわれても仕方あるまい。はっきり言えば、ためにする言動だろう。

 ● 疑わしきは予防する原則を

 共同診療所を訪れて、医師たちの思いが、最も真摯に現れている場所を見つけた。来院者向けの小さな本箱である。

 その中に

 『予防原則』(合同出版、大竹千代子/東賢一著。2005年)

という、人と環境の保護のための基本理念と考え方をまとめた専門書が置いてあった。地球温暖化の防止原則としても知られているが、医療面でも欧州で広く受け入れられている

 疑わしきは予防する

という原則が詳細に説かれていた。名著であり、また診療所の医師たちが何を目指そうとしているのかがうかがえる著作だと思う。

 もう一つは、ブログ子も愛読している

 『人間と環境への低レベル放射能の脅威』(グロイブ/スターングラス。肥田舜太郎/竹野内真理訳、あけび書房。2011年)

があった。チェルノブイリ事故が起こるかなり前から一部科学者には知られていた低線量被ばくの恐ろしさ、細胞破壊のメカニズムなどを紹介したものだ。そのペトカウ効果など、内部被ばくの脅威のメカニズムを一般にもわかりやすく、しかも医学的にも詳細に解説されている。

 ● 水俣病の二の舞、許すな

 実は、この疑わしきは予防するという原則を、疑わしいだけではダメだとして、1960年代、国も熊本県も、そして医師の多くも守らなかったといういまわしい歴史がある。水俣病の悲劇である。

 このことが、高度経済成長時代の蔭で、20万人にも上るとされる水俣病被害を出すことになった。この痛恨事を私たちは忘れてはなるまい。そして、その二の舞を福島原発事故で再び繰り返してはなるまい。

 そんなことを誓った診療所訪問だったように思う。

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