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拡散する放射能汚染  福島「3.11」ルポ

(2013.03.24) 原発事故から丸2年がたった福島市を取材で3月11日訪れた。デモに参加することが主な目的であったが、事故現場から60キロ以上も離れている福島市中心部の紅葉山公園の放射線モニタリングポストが全国でも、また事故周辺を除いて県内でも高い線量を維持し続けている原因は何なのか。

   ● 福島市、今も事故前の14倍

 それを、科学ジャーナリトとして直接みて、確かめたいという狙いがあった。

  Image7762_5 ポストは、阿武隈川のほとりの偕楽亭(福島城の庭園)跡の林の一角、東屋脇に2基並んでひっそりと立っていた(写真上。背景は阿武隈川)。知事公館の隣りである。

 3月11日午前の1時間平均値は、毎時0.64マイクロシーベルト。

 これは年間に換算すると、年間2.8ミリシーベルト。

 このポストでは事故の起きる前までの最高値は、公式で毎時0.046マイクロシーベルトだったから、これはその14倍にもなる計算である(補遺)。

 結論を先に言えば、これは一応の安全とされる許容量1.0ミリシーベルトと、チェルノブイリ事故から割り出された健康被害が心配とされる5.0ミリシーベルト以上のちょうど中間の値。

 つまり、暫定ではあるが、この境界値の誤差も考えると、このままでは県都の福島市も事故の影響で健康被害の出る恐れがある地域

ということになる(注記)。このことからすると、事故後、政府は年間20ミリシーベルトまでなら、十分に健康被害のリスクを回避できるとした報告書をまとめているが、とんでもないほど甘い基準設定であることは明らかであろう。

 さて、真中のグラフは、このポストについて、一か月前から3.11までの数値の変化を示したものだが、いっこうに下がる傾向がみられない

 なぜなのか。当日、福島県庁の県災害対策本部のモニタリングチームを取材した。

 Image7971 県担当者によると、紅葉山公園の樹木に降下した放射能が減らないためではないかと話してくれた。放射能が減るというよりも拡散しているのだ。つまり、除染しても、また事故の起きた東から吹いてくる風で、放射能が林にまた降り積もるというわけだ。非常に深刻な事態なのに、福島県民はもう慣れっこになっているのか、平然としていたのには、正直かえって驚いた。

 当日、持参した簡易放射線測定器で市内を測定しながら回ったが、どの地点でもおおむね安定値としては

 毎時0.30マイクロシーベルト前後

だった。これでも、許容限度はこえている。

 おしなべて、福島県の「中通り」と言われる中央部地域はまわりよりも線量が高い。ここは風の吹き溜まりなのだ。

 これに対し、原発の事故現場から20キロ圏内の浪江町はどうか。文部科学省の公式集計によると、

 3月5日現在で平均で毎時8.3マイクロシーベルト(μSv、年間換算で36ミリシーベルト)

と依然として高い線量である(注記2)。これでは、仮設住宅の避難住民の帰還の目処は立つまい。

 復興には、除染がいかに優先的な課題かがわかる。

 ● 安全基準づくりが課題

 効果がうたがわしいずさんな除染計画の見直しとともに、そもそも帰還しても安全といえる

  Image772311_3 安全基準を早く決める

ことが喫緊の課題だろう。

 安全神話の下、放射性物質の取り扱いについて、これまで先送りにしてきた環境省の責任は重い。

 (写真下は、2013年3月11日午前の県災害対策本部の様子、県自治会館)

 注記

 このことは、もし仮に南海トラフ「浜岡」で福島原発と同規模の事故が起きれば、50キロ圏内の県都、静岡市も、政令市の浜松市も、市民の健康に影響が出る恐れがあることを意味する。伊豆半島の南部も、つまり西伊豆町、松崎町の沿岸部も、福島市同様、60キロ圏であることも忘れてはならないだろう。

 それどころか、今回と同規模の地震が南海トラフで起きた場合、震源域に近い分、浜岡原発の事故規模はより過酷であり、今回をかなり上回る惨事の可能性が高い。こう考えると、浜松市に暮らすブログ子にとっては、福島市の今の状況は、あすはわが身として受け止めた次第。

  注記2

  この浪江町の数値は、事故から27年たったチェルノブイリ石棺付近の今の値

 毎時約7μSv (年間換算で約28mSv)

をこえている。このくらい強い線量だと、ロシアでも長時間の作業はかなり危険とみなされている。3、4年この線量を浴び続けると、医学的にみて、がんなどの健康障害が明らかに出るとされる100mSvをこえるからだ。

 ● 補遺 静岡市の放射線データ

 同じ2013年3月11日の静岡市は

 平均で毎時0.029マイクロシーベルト(事故前の最大値は毎時0.077マイクロシーベルト)。

 これは、年間に換算すると年0.13ミリシーベルトと、許容の1.0ミリシーベルトに比べ、一桁低い値。事故前の最高値よりも低い。

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