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科学者たちの闘い

(2013.02.24)  科学者たちへのふんばりを期待する、あるいは応援する言論が目立つ。原発の新安全基準づくりを急ピッチでまとめようとしている原子力規制委員会への風圧が高まっているからであろう。再稼働が遅れるのは困るという政治的な、あるいは電力会社からの圧力だ。

 Image705_2 2月24日付中日新聞が

 科学者よ、屈するな

という大型社説を掲げている。さらに、2月20日付で朝日新聞が、自民党や一部メディア(産経新聞を指すと思われる)が規制委を反原発的な〝暴走〟を始めていると激しく批難していることに対し、

 およそ見当違い

との論陣を張った( 補遺 )。

 さらには、「アエラ」2013年2月18日号でも、写真のような

 自民党が狙う規制委支配

という内幕を解説してみせている。総選挙後早速、衆院に

 原子力問題調査特別委員会を設置

したのは、規制委の独立性に対し、けん制しようというのが狙いらしい。

 ブログ子も、科学者たちの奮闘を支援したい。

 ● 活断層の調査と評価、規制委に責任一元化を

 では、その矢面に立たされた科学者たちはどんな闘い、主張を展開しているのか。月刊科学雑誌「科学」(岩波書店)のこの1年間のバックナンバーを調べてみた。

 第一。2012年8月号 大飯原発の破砕帯問題と耐震安全審査のあり方

 鈴木康弘氏(名大減災連携研究センター教授)と渡辺満久氏(東洋大学社会学部)の共同執筆なのだが、活断層の過小評価問題を論じている。これは、従来の審査体制の不備によるものと結論付けている。

 それでは、どうしたらいいのか。両氏は

 調査も含めて活断層評価の責任は規制委に一元化を

と主張している。「活断層の見落とし問題を解決するには政府(つまり、規制委)が責任を負うというはっきりとした体制に変更することが必要」と主張している。

 活断層調査を電力会社に委ね、しかも、

 活断層であることを否定するために準備された資料だけでは、(見落としのない)十分な検証はできない

と指摘している。また電力会社の再調査の有無にかかわらず、安全側に立って

 活断層ではないことを電力会社が科学的な根拠を示して証明しない限り、活断層とみなす

という原則を堅持すべきであると述べている。グレーはクロという考え方だ。

 活断層調査について、あるいはその評価について、どこが最終的に責任を負うのかという責任の所在が、これまであいまいだったことが意図的とも思える見落とし問題を生み出していると、両氏はいいたいのだろう。

 この指摘は図星だ。責任の一元化には、専門調査官など人材の充実が重要であろう。

 ● 場所が決まった後に作文することが問題 

 第二。2013年2月号 規制委の活断層調査 科学的に検証された適切な結論

 著者は、規制委の外部委員の渡辺満久氏。

 「電力会社が事業者として求められているのは、活断層ではないことを(科学的な根拠を示し高い精度で)証明すること」であり、「断層運動以外の可能性もあることを主張することではない」と主張している。

 また、最近の変動地形学偏重の調査という批判は当たらないとしている。むしろ、従来どおり地質学的な知見に基づく判断が多いくらいだとしている。

 問題なのは、建設場所が決まってから、そこが安全であるという作文を始めていることだと断罪している。活断層と断定できない場合には「安全側に立って適切に想定すること」という「手引き」に忠実であるべきだとも指摘している。

 いずれの主張も、ブログ子は支持したい。

 ● 自公の改選議席44以下に押さえ込む

 自民党は7月にも行なわれる参院選挙を終えるまでは、これ以上目立った動きは、国民の反発を恐れて、すまい。仮に自公で過半数を握ることができれば、科学者攻撃は激しさを増すだろう。

 参院の第一会派で、参院勝利で死中に活を求めたい民主党はもちろん、野党の奮起を期待したい。自公の当選者数を、改選議席44以下に抑え込むのがポイントだろう。これだと、与党寄りの無所属を加えても、過半数の122に達することは、相当高いハードルになる。

  ● 注記 埋もれた警告 2013.02.24  

    日本の科学ジャーナリズムの無力に思う

  最近の事例ではないが、科学者たちの闘いを紹介した

 NHK「ETV特集 埋もれた警告」

が面白かった。初回放送は、東北大震災の年、2011年12月で、今回は再放送だった。科学者たちが闘ったのは必ずしも行政や政治家ばかりではなかっさことがわかる。科学者たちとも、科学者は闘った。

 貞観地震(869年)を津波堆積物からその全容を解き明かしたが、バブル景気のなか無視され続けた箕浦幸治東北大教授、

 地震の空白域こそ、次に来る地震の場所であり、今のような地震多発域に注目するようなのは「後追い」ではないかとし、地震予測の長期評価のあり方に地震学会や文部科学省に疑問を投げかけた島崎邦彦東大名誉教授(元東大地震研)、

 航空写真などを基にした新しい学問、変動地形学を駆使して活断層の見落とし、あるいは過小評価を指摘し続けた中田高広島大名誉教授、

 地震防災の体制づくりのあり方に疑問や警告を続けてきた石橋克彦神戸大名誉教授、

などが、登場していた。

 この番組をみていて、思ったのは、彼らの闘いに対して、学界依存体質の強い科学ジャーナリズムがいかに無力であったかという点だ。

 科学・技術と社会の観点に、たとえば、疑わしきは国民の利益にという原則など、みずからきちんとした方法論を持たない日本の科学ジャーナリズムのひ弱さを痛感し、忸怩たる思いがした。

 事後に騒ぎ立てる科学ジャーナリズムであってはなるまい。公平・中立、客観報道の欺瞞性が鋭く問われた番組だったと思う。

 疑わしきは、安全側に立つという原則こそ、科学ジャーナリズムの思想ではないか。

  ● 補遺

 たとえば、産経新聞の社説に当たる「主張」で、

 規制委「承認」 健全運営なお見極めたい

がある(2013年2月17日付)。

 この中で、これまでの「規制委の運営は、脱原発に向けての暴走を危惧させるような言動が目についた」と総括している。その上で「規制委の健全性の維持のためには、国会に新設された原子力問題調査特別委員会に、その監視役を強く期待したい」と結んでいる。言葉はやわらかいが、総じて〝恫喝〟に近い論説である。

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